魔物の砦
レリジオ教国がある大陸にある砦を奪取した。
それはつまり、補給線が長くなるということだ。
そこで僕はヘーゲル号のスピードをアップするため、マストを5本に増やした。これは現在のヘーゲル号の全長である100メートルもの船体であることが条件で、2400ポイント支払った。
もちろん帆装はジャッカスバーグを選んだが――実は前世でも、ジャッカスバーグの船のマストは最大4本までであった。
ではマスト5本のジャッカスバーグは全く帆の張り方がわからないのかというと、そうではない。ジャッカスバーグは縦帆と横帆が半々であるという条件さえ分かっていれば予想がつく。
マスト5本の場合、前2本に横帆、後ろ2本に縦帆、真中のマストはトップスルスクーナーと同じく縦帆のコースセイルと横帆のトップスルを張る。
そしてマスト5本以上の場合、マストの呼び名が変わる。今まではフォアマスト、メインマスト、ミズンマストなどと呼ばれていたが、これからは番号で呼ばれることになる。
そして船体の層を4層に増やした。これはマストを3本以上設置していることが条件で、2000ポイントだった。
さらに4セット目のプロペラを3000ポイントで敷設した。
この強化で積載容量と速度双方の向上を図った。
なお、これらの強化にかかったポイントは、沼地の要塞の攻略で得たポイントで賄えた。
さて沼地の要塞を攻略した後、しばらく輸送任務に戻っていた僕たちだったが、夏に入る直前くらいにまた戦闘要請が入った。
「次の要塞は『魔物の要塞』と呼ばれているらしい」
王宮でクリーバリー軍務大臣から説明された。
なんでも、以前アングリア王国―レリジオ教国間の航路上にある3番目の要塞近辺に設置された魔物寄せの魔道具。あれを要塞の城壁の海底部分に何か所か埋め込んでおり、有事の際には魔物をわざと呼び寄せて防衛戦力にしているのだとか。
これはある意味、沼地の要塞の時よりも厄介かもしれない。
沼地の要塞はヘーゲル号の強化で対応できたため、それさえ済めばあっさりと攻略できた。
しかし今回は魔物との戦闘、しかも高確率で連戦となるため、継戦力が問われる。
しかも、いつ魔物と戦闘が終わるかわからない。下手したら永遠に戦い続けなければならないかもしれない。
そのことを指摘すると、クリーバリー軍務大臣はある図を僕に見せた。
「これは、要塞の海側の城壁の図だ」
「線が書いてありますね。それと丸印も」
「丸印は魔物寄せの魔道具、線は魔力を供給するためのミスリルの配線だ。城壁に埋め込まれているらしい」
魔物寄せの魔道具は、1回使うと魔力が切れてしまうため、もう1度使うには魔力を補充しなければならない。
そのため、魔力を効率よく伝導するミスリルという金属で配線を行っているようだ。
無線で魔力を送り込むのではこの魔道具には非効率らしく、せいぜい遠隔で発動命令を行うときぐらいしか使えないらしい。
そしてそのミスリルの配線だが、中央付近で全ての配線が交差している。
「つまり、ここを破壊すれば魔物寄せは使えなくなると。しかし、それは敵も承知しているはずですし、そこを攻撃しようとすれば集中砲火をしてくるのでは?」
「いや、その点は大丈夫だ。実は――」
クリーバリー軍務大臣が話した内容は、とてもではないが信じられない話だった。
「貴殿が信じられないのも無理はない。だが、これは諜報部がつかんだ信頼できる情報だ。何度も裏を取ったから間違いない」
「そこまでおっしゃるのであれば、この配線を切断する方針で行くしかないですね」
こうして、僕たちは魔物の要塞攻略に参加することになったのだ。
作戦日当日。
僕達は海中を進み、魔物の砦近くまで来た。
「よし、急速浮上。エリオット、ジェーン姉様、手はず通りよろしく!」
へーゲル号が海上に飛び出したのと同時に、甲板に待機していたエリオットとジェーン姉様が動いた。
「それじゃあ、俺に会わせて」
「うん~。わかった~」
エリオットは土魔法でガラスを操作し、空中にレンズを作った。
そこにジェーン姉様が光魔法を打ち込む。
すると砦の城壁に収束した光魔法が照射され、その部分が赤く光る。
「今だ! 左舷砲門、赤熱した壁に向かって撃て!」
城壁に面している左舷側の大砲から砲弾がはき出されると、赤熱した城壁に飛び込んだ。しかも砲弾はメアリー特性の石材を溶解する毒が詰まった砲弾なので、より城壁を破壊しやすくしている。
そしてこちらの作戦通り、壁に穴が空いた。
これで作戦の第1段階はクリアだ。
『キャプテン、多数の魔物の反応を確認しました』
「わかった。ここからが本番だな」
問題はここからだ。
魔物寄せの魔道具の特性上、ミスリルの配線を破壊しても1度は魔物と戦わなくてはならない。
しかもどんな魔物が来るかわからない。使用者もわからないので完全に運任せだ。
魔物寄せの魔道具は3つ設置されているらしいので、3回は戦う必要がある。
――ん? 3カ所しか設置されていないということは、3体の魔物と戦うということ。
なのに、マリーからの報告は、たしか――。
「多数ってどういうことだ!?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます