砕氷衝角
フグレイク連合行きが決まったので、翌日から出港準備がスタートした。
他のみんなは食料の買い込みをしていたりフグレイク連合で売る商品を探したりしている。
僕はフグレイク連合への航海へ向け、ヘーゲル号の艦橋でタブレットを眺めていた。
ヘーゲル号を強化するためだ。
まず、船体の拡張。
現在40メートルあるが、これを60メートルに増設する。
40メートルから50メートルに拡張する際、5メートルごとに200ポイントかかる。さらに50メートルから60メートルまで5メートルごとに400ポイント必要となる。
合計、1200ポイント。
船体が拡張できたら、マストを増設する。
今回は元々の予定にはなかった航海を行うので、なるべく早く到着したい。そのため、帆船の動力源となるマストを4本に増やすのだ。
しかし、マストを4本設置するには船体が60メートル以上無ければならないので、船体を大きくしたのだ。
4本目のマストを設置するのに1200ポイント。
そして、工房を設置する。
この工房は様々な研究・開発が出来る設備だ。ヘーゲル号を手に入れた初期の頃にマリーから説明があったが、新型の砲弾や魚雷を開発できたりもする。
この設備があれば、海の上にいても研究に打ち込めるので暇で死にそうになる事は無くなるだろう。
特にエリオットにとって重宝する施設のはずだ。
設置条件は2層以上なのですでにクリアしている。6000ポイント。
最後に、衝角を装備する。
衝角は船底の前方から突き出るようにして設置される角のような装備だ。猛スピードで突進し、敵船の船底に穴を開ける。
この戦法はガレーでよく見られる戦法で、思いっきり櫂を漕いでスピードを出し突進。その後、舳先を伝って敵船に乗り込むのだ。
しかし、今回僕の目的は武器として衝角を取り付けるのではない。
ヘーゲル号の衝角は設置を含めて4段階まで強化できるのだが、3段階目で『砕氷衝角』という氷を砕ける衝角になるのだ。
なぜ砕氷衝角が必要なのかというと、フグレイク連合は極寒の地で、夏以外のほぼ全て雪と氷で覆われる。
現在は6月で初夏なのだが、この時期も注意が必要だ。
気温がどんどん上がり、氷が溶ける。すると、大きな氷塊が海に落ちる。
海に落ちた氷はそのまま流れるのだが、これが船の邪魔になるのだ。特に大きい氷にぶつかるとタダでは済まない。
フグレイク連合の船乗りやハンザ連邦の中でフグレイク連合によく行く船乗りであれば簡単に避けられるらしいのだが、あいにく僕は流氷がひしめく海を航海した経験は無いし、マリーでも安全に航海出来るか怪しい。
そもそも、現在のヘーゲル号では大きすぎて避けること自体が不可能だ。
だから、僕は避けるのではなく砕きながら進む方法を選んだ。そのための衝角の設置だ。
衝角はマスト2本以上必要だがすでにクリア。
設置に800ポイント、2段階目の強化状態にするのに1600ポイント、3段階目で砕氷衝角に強化するのに3200ポイント。合計5600ポイントとなる。
そして強化設定が終わり、ポイントを支払う。
合計14000ポイント。ここまで大きくなると強化にかかるポイントも大きくなってきた。
まぁ、魔物を何体も倒した割にはポイントをあまり使うこともなかったので、まだ余裕はある。
『船から一時退避してください』
マリーの案内に従い、下船。
そしてもう見慣れた強化開始する。
強化が終わると、前方に立派な衝角を備えた、今までよりも大きくなりマストが4本になったヘーゲル号がそこにはあった。
『帆装を設定してください』
そしてマストを増やした時のお決まり、帆装の設定。
帆装はマスト1本、2本、3本以上で区切られる。
つまり、選べる帆装にもう変化はないのだ。
もちろん、選ぶのは横帆と縦帆が半々のジャッカスバーグ。
今回はマストの数が偶数なので、前2本は完全に横帆、後2本はスクーナータイプの縦帆である。
「帰ってきたら驚くだろうな」
そうつぶやき、僕はみんなの帰りを待った。
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