第42話 探索者協会本部

 東京についた。この街も昔の活気さはないが、人は多い。駅から出ると、若者も、老人も、僕の街では見かけないような姿をして新宿駅からゾロゾロと出てくる。結構「探索者!」と主張するような服装の人や、武器を背負っている人が多く、街の風景として馴染んでいる。

 本部の人が僕を迎えにきているはずだがどこにいるのだろう。あたりを見渡すがどこにもそれらしき車はない。歩いて行けとのことだろうか、酷くない?


 人も多いし、街の構造も複雑、地下鉄道に乗ろうにも僕はどれが本部に繋がっているかをしらん。タクシーに乗って向かうか。本部から近い道路は何て名前だっけ。本部は関係者以外は立ち入り禁止、周囲に道路なんてなく、あるのは殺風景なコンクリートの要塞とビル群だけだ。

 前車で送ってもらった時は、地下を通って行ったが、一般人は地下から通じているなんてことは知らないだろう。

 タクシーで向かってもその先の道のりがわからないから迷子になるな。

 はぁ、完全に迷宮と化している。テロ対策なんだろうが、地方から訪れる探索者の身にもなってほしい。

 悪態をつきながら駅前でどうしようか考えていると、目の前に白ぬりのワンボックスカーが停まった。どうやら迎えが来たようだ。



 

「いや〜すいません。遅れてしまって」

 メガネをかけ、少し丸い体型をした協会の職員。このワンボックスカーを運転している張本人。僕が簡単な自己紹介をした後にこの会話は繋がる。

「まだ時間はありますので安心してください」

 駅から少し進んだ先、表参道を通り過ぎるとすぐにビルの地下駐車場の中に入って行った。あぁ、思い出した。確かこの先に本部に通じる地下道があったはず。

 地下駐車場をぐるっと一回りすると、コンクリートの壁に突っ込んだ。ぶつかるかに思えたワンボックスカーはその大きな車体に傷ひとつ無く、暗い道を通っている。車のライトでしか頼れる光源はなく、道とは言えない道を職員さんは臆することなく走らせる。

「よく走れますね」

「ここら一帯の地形は丸暗記しているんですよ」と、さらっとすごいことをやっているらしい。

 ここまで暗い場所での僕の能力はさぞ凶悪になるだろう。


 そのまま暗闇の中を走っていくと、前方から一筋の光が見えた。心なしか上り坂に入ったように思える。だんだんと光が大きくなり、闇の中から追い出されると、目に映ったのはコンクリートの迷宮だった。あたり一面がコンクリートのビルに囲まれ、等間隔に並ぶ窓がかえって無機質さを演出する。

 その中で一際目立つ大きな建物。僕達の目の前に威圧感を出す巨大な建物。東京で目にするビル群より一際大きく、このビル群の中で一つだけ色の違う要塞。僕達の街にあるものがちっぽけに霞んでしまう。

 あれが探索者協会本部だ。

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