私のことが大好きな妹

でずな

第1話 ぐうたら姉と天才妹





 私はシーラ・エル。辺境の村貴族。

 突然だけど私には前世の記憶がある。それは、男だったというおぼろげな記憶。どんなことをしていて、どうやって死んだのかわからないけどただ男だったということは覚えている。

 

「むふふ……やっぱり、リーたんの生足最高!」


 目の前にあるのは、私が丹精を込めて氷魔法で作ったとあるアニメキャラクターのフィギュア。多分、前世の私はこういったアニメキャラクターが大好きな人だったと思う。


「はぁ〜……疲れた」


 そう言って体重を、ふかふかなベッドの上に預ける。

 疲れたとか言っても今日したのは、ただ氷魔法でフィギュアを作っただけ。

 こんなことをしているけど一応、辺境の貴族様。本当は、書類の確認だったり外交問題とか色々やらないといけないことがあるけど全部ほったらかしている。


 「まぁ、いつかやればいいでしょ」と思いながら早16年。精神状態が体に引っ張られているのか、前世の私としての欠片など微塵もなくただただ時間だけだ過ぎていく。 


 いや、前世の私もこんな感じのぐうたら生活を送ってたかもしれない。


 またもや突然だけど、私には妹がいる。2歳年下の14歳の超カワイイ妹。

 だけどちょっとおかしいところもある。


「お姉様ぁ〜!!」


 妹のことを考えていると、急にドアが開けられた。


 そこにいた人物は、「はぁはぁ……」と息を荒くしていて少し怖い。そして髪型は三編みを後ろで束ねている。この子は、私の超かわいくて自慢の妹アル。

 アルは、ぐうたらな私と違って何でもこなす天才。


「そんなに慌てた様子で……。なにかあったの?」


「いや、なにもないんですけど……。私は、お姉様に会うためだけに今日一日頑張ってきたんです!」


「……そうなのね。なら、いつものようにいっぱい抱きしめてあげようか?」


 抱きしめるというのは、私たちの間で行われている儀式みたいなもの。私が貴族としての仕事を、何もしない代わりに抱きしめてほしいらしい。


 なんで抱きしめるのがいいのかは疑問だけど、それで私の仕事をしてくれて喜んでくれるならいいんんだけど。


 私はベットの上から起き上がり、両腕を広げいつでも来ていいよという姿勢にしていると……。


「はい! お姉様大好き!」


 そう言って、ドアから飛びつくように抱きついてきた。


「わっ……」


 その勢いを受け止めることができず、私の体は押し倒される形になってしまった。


「うへへ……」


 無我夢中で抱きついているのか、自分が何をしているのかよくわかっていないらしい。


「っ……」


 私はそんなアルのことを見て、アルの頭は胸の間に入ってきた。ちなみに私のカップはEとかいうやつらしい。大きいことをいいことに、アルはたまに胸の間に入ってくる。なんでそんなことをするのか知らないし、やめてとは言いづらいので恥ずかしくなっちゃう。


 

 私は恥ずかしくなっているけど、アルが抱きついていてくるといつもしていることがある。

 それは……。


「いい子。いい子。今日もいっぱいお仕事頑張って偉いねぇ〜……。たくさん甘えていいんだよ?」


 頭を撫でながら甘い言葉を囁く。


 これは、抱きついていているときにアルからしてほしいと頼まれている。決して自発的にしているんじゃない。


「お姉様。お姉様。私だけのお姉様……」


 抱きつきながら大好きって言われると、アルが本当に私のことが大好きだと勘違いしちゃう。


 アルは、私とは違って普通の女の子。なんで、私に抱きついて甘えてきているのかは知らないけど普通の女の子なら、男が好きになるもの。


 ちなみにそれとは逆に私の好意の対象は、男ではなく女。あまり他のことを覚えていないけど前世は男だったからなのか、そういうところだけはちゃんと本能として残っている。





――10分後


「お姉様。お忙しい中、今日も私のわがままにありがとうございました」


 アルは、我に返ったのか少し顔を赤らめながら申し訳無さそうに頭を下げてきた。


「大丈夫大丈夫。私は別にアルが望めばいつでもしてあげるからね?」


「ほ、本当ですかッ!?」

 

 アルはよほど私の言った言葉が嬉しかったのかあと数センチで、顔が当たる距離まで近づいてきた。キラキラと金色に輝いているきれいない瞳が、目の前にくると照れちゃう。

 身を乗り出してきたので、私も同じくらいベットの上で後ろに下がって少し距離を取る。


 さっきの、「いつでもしてあげる」っていうことは勘違いさせてしまったかもしれない。


「でも、お父様とかお母様とか知ってる人とかがいる場所は恥ずかしいからさすがにダメだからね」


 抱きついたりすることがこの世界で当たり前なんだとしても、さすがに人の前でこういうことをするのは恥ずかしい。


「わかしました! では、あの……最後の……いつものをしたいんですけど……」


 アルは目を泳がせ、もじもじと小さな声で言ってきた。


「未だによくわからないんだけどあれって、本当にみんなが姉妹ですることなの……?」


 抱きついたりするのはまだ理解できないこともないけどあれは、とてもじゃないけど姉妹ですることだと理解できない。


 もっと特別で、大好きな人とする大切なものだと思う。


「は、はいっ! みんなしているので、私もお姉様としてもいいですよね?」


 私はずっと引きこもってきたので、この世界でのことがてんで理解できていない。なので一番信用している大好きな妹、アルから「みんなしてる」って言われたら納得してしまう自分がいる。


「そう。別に嫌じゃないから、してもいいわよ」


 私の言葉を聞いたアルは、「ぱぁっ」と朝日のように徐々に顔が明るくなっていく。


「やったっ……」


 アルは四つん這いになって、私のもとに近づいてきた。その姿は、今からご褒美をもらえる子犬のように尻尾を降っているのが幻覚で見えそうなほど嬉しそう。


「では……」


 私が微笑ましく見ていると、アルはいつの間にか目の前に来ていたのか頬に手を当てきた。


 これはあれをする直前の合図のようなもの。

 そしてこれをされると自然と腰が抜けて、アルに見下みおろされる形になる。そして、金色のかわいくて鋭い目に体を貫かれて動けなくなってしまう。


 このときだけ、アルは私より身長が小さいのに私より大きく見えてそれでいて、心が奪われてしまう。


「んっ……」


 アルの潤っていて、甘い唇が私の唇に被さってきた。

 これは、キス。

 顔が固定されているから、アルがやめようとするまでやめることができない。

 

「ふぅ……」


 体感数分。だけど、実際は数秒だったかもしれない。そんなの数えていなかったからわからない。

 キスをするときいつも時間が遅く感じて、それでいて唇が離されると少しさみしくなる。


 これじゃあ、私がキスが大好きみたいになっちゃう。私はキスなんて、アル以外の人としたことない。


「お姉様……」


 私がそんなことを思っていると、ドアから出ていきそうなアルがそう言って振り返ってきた。


「ん? 何?」


 なんだろう?

 さっきハグをして、キスをしたからもうすることはないと思うんだけど……。


「大好きです」


「……私もよ」


 私も、アルが大好き。

 だけどこの感情が妹に対してのものなのか、一人の女性としてのものなか。


 それがよくわからない。

 






――――――――――――――――――――――――

【あとがき】

ですな、初めての百合作品です。正直、まだどういうのが正解なのかわかっていないので「こうしたほうがいいんじゃない?」と言う意見を貰えると嬉しいな。(小声)


と、まぁこれから色んな百合短編を出して試行錯誤していこうと思ってるので作者フォローして見守ってもらえると励みになります!


では失礼。

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私のことが大好きな妹 でずな @Dezuna

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