第22話(閑話)亜里亜の過去について

私の名前は亜里亜。

帝国貴族の葭ヶ谷家の長女として生まれた女の子である。

貴族の女は、結婚することになる当人たちの意向は無視をされ、一族のために婚姻しなければならない。

私も15歳の時、格下の貴族であるが商才に優れた家の長男と婚約をした。

そう、格下の貴族である三男とだ。

その理由は、私の容姿がもう一つ、いやそれ以下だからなのだろう。

ある日、酒に酔った婚約者に容姿を罵られてしまった。

やはり不細工な女は幸せになる事など出来るはずが無いんだな。

加えて人づきあいが苦手だし、私には未来など無いのだろう。

人に自分の姿を見られるのが怖くて仕方がない。

被害妄想であると分かっているが、見られると悪口を言われている気がする。

綺麗な女、可愛い女が憎い。

ただ可愛いだけで何の努力もする事なく全てを与えてもらえるなんて、許される事ではない。


私は帝国4大貴族筆頭の三条家のはからいで、辺境の森の中にある屋敷でしばらく暮らす事になった。

父からは1年以内に帝都へ帰るように言われていたけど、私にそのつもりはない。

この先も出来るだけ人と関わり合いになりたくないからだ。

辺境の森に移住して3年が経過した頃、屋敷内に怪我をした小さな鋼色の機械兵が迷い込んできた。

人類の敵である危険な存在である事は知っているが、まだ子供の機械兵だ。

警護役兼執事をしてくれている武野里が抜刀の構えをとりながら間に入ってきた。



「亜里亜様、その機械兵から離れて下さい。」

「武野里、この子はまだ子供ではないですか。怪我をした子供を攻撃するつもりですか。」



何の才能も無く平凡以下な私であるが、鋼色の子供機械兵を治療してあげたいと願う事は傲慢なのだろうか。

体中に満ちている怒りの炎が出口を求めて爆発しようとする感覚に陥った時、内に眠るスキルが目覚めた。

それが失われたスキル『錬金』であることをすぐに理解した。

傷ついた子供の機械兵の怪我を治したいと願う私へ、先祖が力を与えてくれたのだろう。


家族以外からは見下されていた私に対して、子供機械兵がなついてくれたのであるが、私の行動は人類にとって反逆行為だと分かっている。

人に受け入れられない私と、人類の敵である機械兵は、何となく同じ立場じゃないかと思えてしまう。

私は子供機械兵の頼みを全て聞くことにして、アダマンタイトを錬金する事とした。


そんなある日、私の前に三華月様が現れた。

私の世代で三華月様の事を知らない者はいない。

帝都で最も美しい最高位の聖女である。

15歳になった日、三華月様が聖女として帝都に帰還した際に見かけた事があるが、あまりの可愛いさに感動し、その時の記憶と映像は、今でも覚えている。

何もかも私とは正反対な女子だ。

私はこの女が憎い。

生まれてきて苦労をした事が無いのだろう。

その容姿だけで全てを手に入れてきた事が分かる。

私はこの女が嫌いだ。

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