第3話 喘息だって怖くない『特製ジンジャー麺』

「草西さんは、何が食べたいですか?」


 雪平鍋のお湯も湧いているし、もう気持ちはすっかり醬油味のインスタントラーメンで出来上がっていた。


「お湯を沸かしてたんですね。お粥がいいですか?」


「いや、お米を炊いてなかったから、インスタントラーメンを......」


 ドアホン越しにあんな事を言っていた手前、インスタントラーメンで済ませると言うのは恥ずかしかったが、調理台の上に、その袋が乗っかっていてるからには、今さら隠しようもなかった。


「えっ、風邪を引いている時に、インスタントラーメンですか!栄養が無さそうなのに。しかも、そんなに咳が出ているから、余計にむせそうです!」


「それなんだよな。でも、悪寒もするから、身体を温めたいし。この袋のラーメン見ていたら、気持ち的には食べたくて仕方なくなっているのに、身体は咳が出るから困っている」


 お湯も既に沸いているから、今すぐにでも、袋の乾麺を入れたい。


「食べたいのは、この醤油味のラーメンなんですね。分かりました。少し待って下さいね」


 亜純は、長ネギを袋から出して洗い、良いリズムで輪切りし出した。

 

「おろし金は有りますか?」


 おろし金か、しばらく使ってなかったけど、この辺りかな?

 亜純は、おろし金を丁寧に洗い、買い物袋から出した黄金生姜を摺り下ろした。


「えっ、生姜?ラーメンといえば、ニンニクだろう?」


「いえ、体調が悪い時のニンニクは胃腸に負担をかけて、治りを遅くします。ほら、困った時のジンジャー頼みって言うじゃないですか?」


「困った時の神頼み的に使うのは、かなりムリ無いか?まあ、でも、神社でも祈願してくれたようだし、まあ神社でもジンジャーでもいいか」


 言っているうちに、空腹のせいか、自分が何言っているだか分からなくなって、どうでも良くなった。


「さてと、このラーメン......」


 開封して、お湯に乾麺を入れるとばかり思っていたら、なんと袋に入ったまま、乾麺を割りまくった亜純。


「何しているんだ?」


 焦って、バラバラに砕けつつあるインスタントラーメンの袋を亜純から奪い取った。

 あ~あ、もうこんなに、バラバラにされている。

 もはや、ラーメンの原型が無くなりそうな最悪の事態!


「だって、こんな体調の時に、麺をすするのは咳き込みそうですから、こうして、麺をすすらなくても良いように、蓮華ですくえるようにしました。この方が火の通りも良いから早く出来ますよ」


「なるほど~!」


 亜純は、1㎝ほどの長さになった乾麺をお湯に入れて、その間に解き卵を1つ用意した。

 3分後には、ラーメンどんぶりに、一見、卵雑炊のようにも見えるネギたっぷりのかき卵の上におろし生姜がトッピングされたラーメンが出来上がって、食欲をそそるにおいと共に、アツアツそうな湯気を立てていた。


「『特製ジンジャー麺』完成です!召し上がって下さい!」


 本当は、ラーメンといえば、ニンニク派の俺は、ニンニクのトッピングが本望だったが、腹ペコだったせいか、予想よりもずっと美味しく感じられ、生姜が意外にもしょうゆラーメンに合う事に気付いた。


「旨い!」


「そうですか、良かった~!生姜で身体もポカポカしますから、きっと悪寒も無くなりますよ」


 俺は、1度も咳き込む事無く、ジンジャー麵を平らげた。

 食べ終わった時には、悪寒も無くなり、喉の痛みも緩和されていた。


「ご馳走様!なんか、ホントに体調少し良くなった感じだ!」


「安心しました~!やっぱり風邪にはジンジャーですね!ご飯も明日の朝7時で炊飯の予約をしました。白だしで卵とじスープを作ったので、明日の朝、ご飯入れて、雑炊にして食べて下さい」


 こんなに短時間で、用意してもらえるなんて、病んでる時には有難いな。


「ありがとう、明日の朝食の心配までしてくれて」


「もしも、明日、まだ治ってなかったら、また寄りますね!お大事にして下さい」


 ストーカー行為していたくらいだから、このまま家に泊まられたらどうしようかと心配したけど、すんなりと帰ってくれそうでホッとした。


 と、その時......


「ピンポーン、ピンポーン」


 2回のベル......まさか、実眞みま

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