第378話 開拓村へ
ダンジョンで3次職のレベル上げを兼ねた情報収集、人造獣使いのスキル実験から数日、俺達は飛行船をつかって、ボホール領南部に位置する村を目指していた。
そこはタリアの出資を元手に、アース商会の管理する保養地として建設が進められている村落である。
『そろそろ着くはずなのに村の影も見えないぜ』
『森の切れ目、不自然に岩山に成り始めてる辺りに村があるはず』
この辺りはクロノスで最も人里に近い火山地帯の一つ。記録では最後の噴火は百年以上前、かつ河口からも離れているが、硫黄を含んだ温泉が湧いていて、その周辺だけ植生が違う。
『このまままっすぐでいいわ。左手に村が見えるはず。向かって右手の方が平らそうだから、そっちに着陸しましょう』
『了解』
タリアの指示にしたがって飛行船が進むと、背の高い木々の向こうに村の屋根が見えて来る。
森と荒地の境界がかなりはっきりしているな。森側の木々は人の手が入っていない原生林のためか、太く背が高い。
村の方に進むと下草も徐々に減っていく。空からだと地面が土かそれとも石なのかは分からない。
『村の人たちが飛行船に気づいたみたいね。騒ぎに成っているわ。どうする?』
『いきなり撃たれる事は無いと思うけど、先に人を降ろそうか。バーバラさん、バノッサさん、またお願いします』
二人を転送魔術で下ろして、挨拶をして貰ってる間に船を降ろす。
村の周りの堀は浅く、柵も簡素なものが殆どだ。着手してからふた月ほどたっているはずだが、やはり荒地に村を起こすのは並大抵のことでは無いのだろう。
それでも石造りの住居が10軒弱に、堀と塀が用意され道が整備され始めているのだから、早いというべきか。
半時ほどかけて飛行船を着陸させる。
「なんか変なにおいがするな」
地面に降りたアーニャが顔をしかめる。硫黄のにおいだ。
村の中ではないが、近くで温泉が湧いているはず。ボホールにその情報はあったが、街から遠いためまだ開拓されていないエリアらしい。
「やっぱり鼻が良いね。俺はココだとほとんど感じない。害は無いけど、慣れないなら消臭のマジックアイテムを作るよ」
「それほどじゃないと思うけど……ちょっと様子を見るよ」
臭いには慣れてくれないと温泉には入れないぞ。
さて、今着陸している部分も含めて村の一部に取り込む予定だから、今回は飛行船の送還はしないで……まずは挨拶だ。
「お初にお目にかかります。私、この開拓村の村長を任されておりますペール・スヴェンソンと申します」
「ボホール領兵・開拓団団長のアンデルス・ラーセンです」
「開拓団付きの冒険者をまとめている、ダニエル・コンスタンティンだ」
ペールさんは30台前半くらい、アンデルスさんとダニエルさんはそれぞれ20台半ばくらいの男性だ。
先行したバーバラさん達に連れ立って、代表の3人が門の前で迎えてくれた。
「ワタル・リターナーです。こちらがこの村開拓の出資者であるタリア嬢です」
「皆さん、初めまして。タリアと申します。まずはここまでの功労に感謝を」
珍しくかしこまったタリアが、スカートを持ち上げつつ礼をする。
「お二人のお名前は伺っております。……つい半月ほど前、神様からのお告げで名前を伺いましたのも……」
「あ~……私たちですね」
「おお、やはり!ぜひそのお話も合わせて……このような場所ではなんですから、村の中へどうぞ。まだ何もない村ですが、資金をいただけたおかげで住だけは整っておりますので」
辺境村の開拓費用としてはありえない金額をつぎ込んでるからな。
「ああ、いえ……まずは我々の方で村の領域を広げさせてください。乗ってきた飛行船を、村の領域内に置きたいので」
村のサイズは直径100メートルほどの円形。空から見た感じ、井戸は有るけど外部からの水は引き込んでない。
「……はい?」
首をかしげる代表者三人に後で説明すると告げて、いったん村の外で作業する村人たちに村の領域へ戻ってもらう。
彼らには日ごろの労働に対するボーナスとして、飛行船と
コゴロウはいつも通り飛行船の周囲を見張っている。
まだ村を遠く離れている作業者はいないので、村の関係者は全員塀の中、こちらに目を向けている者はいない。
「それで、踊るのね」
「ああ、それが一番早い」
……ペポナッ!
さあ!
まず半径1キロ範囲内を包み込むようにのぞき見防止の
各地に
再度
俺の人形は高さ10メートルくらいになるし、それを作った時に出来る穴もデカい。それが堀。
更に人形に組体操をさせると簡易な塀が出来上がる。
ここまで3分。
組体操が終わったら、それを
ぐるっと村を囲うようにできたので、森側に出入口のための門を作る。細かい作業をする余裕は無いから穴をあけるだけだ。
残り1分。
飛行船の着陸場所300メートルかける200メートルくらいのエリアをフラットの慣らし、さらに全体の段差を鳴らす。これで塀の中はほぼフラット。
後で農地にするエリアの地面にひたすら
「……ふぅ。疲れた」
「……でたらめも良い所ね」
半径1キロエリアの改造が5分で出来るのはやはり破格。……むっちゃ疲れるけど。
これをやると難しいことが考えられなくなるんだよね。
「さて、村長に相談に行こうか。村の領域を広げて、入り口の門に扉を移植してもらわないと」
それで塀の中には魔物が発生しなくなる。
更に村に魔物が近づいたら分かる範囲も広くなるはずだ。
「……は?……え……ええ!?」
予想通り村長はかなり混乱した様子でしばらく不思議な踊りを踊った後、団長と合わせて一体何をどうやって!?と詰め寄ってきた。
説明はめんどくさいので『それは機密です』と言ってすます。余計な事は知らなくて良い。
今日はもう働く気が起きないから、後はみんなに任せてお休みかな。
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現在5話まで公開中のスピンオフ、アーニャの冒険もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
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