第268話 守護兵との闘い1
「
向かってくる守護兵の一体、槍兵に対して、コゴロウは中級の斬撃スキルを発動する。
槍兵はそれを意に介した様子も無く、突っ込んでぶち当たり、一瞬だけ動きを止める。
「むぅ、これも効果が薄いのであるか」
飛翔する斬撃も、基本的には魔術と同じ性質のものである。
ワタルの
「
再び動き出した
こちらも魔術であるため大きな効果は発揮しないが、質量の有る一撃は動きを止めるくらいの効果はありそうだった。
しかしそれでは倒せない。
「接近するのである!」
コゴロウはそう叫ぶと、縮地で一気に距離を詰める。
槍の間合いのさらに内側。横凪に放った斬撃は、
「刃が通るならやり様はある!」
鎧部と関節などの可動部は明確に防御力が違い、鎧を切り割けるなら関節部から切断することは可能。
そして一度本体から離れたパーツを再結合できるほどの再生能力は無い。
コゴロウは槍をかわしながら、肉迫して篭手を狙って刀を振るう。
足を止めるか、腕を止めるか。どちらでも良いがそれなら細い方と、腕に狙いを定めたのだ。
『右には動かないでね!』
「
タリアが詠唱魔術で放った一撃が、ガーディアンの頭を捕らえる。
高速で射出された礫の一撃は、敵の身体に大きなヒビを刻むのに十分な威力があった。
『物理は効果あり。念動力はダメだったから、動きの阻害は無理ね』
『了解である……っと、お主の相手は某であろう?」
魔術でダメージを受けて、狙いをタリアに変えようとする
ガーディアンの武器は、その身体と同じく対魔力効果を備えている。盾などによる防御効果は薄い。ステータスはそこまで高くないが、投擲などで狙われた場合、防具がどこまで役に立つかは未知数。
ワタルが自分に前衛を任せたのは、後ろを守れという事。コゴロウはそう判断して、タリアと
『その位置だとあたしが攻撃出来ないんだけど』
『腕を落とすまでしばし待たれよ』
『……それなら、援護だけにしとくわ』
そう言うとタリアは次の詠唱を始める。
迷宮の中で、
だから精霊使いの能力を活かし、詠唱魔術で対抗する。幸いにして精霊魔術師を極めた彼女には、高速詠唱と言うスキルがあった。平たく言えば早口言葉であるが、その効果は絶大であり、普通は数秒かかる詠唱を、一呼吸にまで圧縮する。
「
かつてワタルがバノッサから教えてもらった土の捕縛魔術。高いINTと、契約した大地の精霊の補助を受けて発動したそれは、1メートルほどある巨大な手となって
「これはありがたい。二段切り!疾風斬り!」
二連続の斬撃、さらにその2発目に別のスキルを乗せて加速。
しかし
「動きはそこまで早くないのに小器用であるな」
突き出された槍を避けて斬撃打ち込む。
侍の
しかし動きは洗練されていて、攻撃と防御が一体となって行われる。
自らを拘束する
「なるほど良き腕ぞ。耐久力も相まって、並の侍が力勝負をしても勝てぬであろう。しかし汝の動きには遊びが足りぬのである」
そう言って霞構えを取ると、
「天明流五の太刀、突き流し!」
突き出した槍が上にそれたと思った瞬間、手首の最も細い所にコゴロウの太刀が食い込んでいた。
それが下から上に切り上げる縦の一撃。
「
その瞬間には、コゴロウは身体を寝かせて飛んでいる。
振り下ろされる横の一撃が、
人間や魔物であればそれで意表を突かれ驚愕で動きを止めたことだろう。
しかし感情を持たない人形である
だがその場所にコゴロウは既にいない。
「縮地、である」
蹴るものの無い空中でのスキル発動は難しい。けれど彼はそれを息をするようにやって見せた。
「天明流一の太刀、唐竹割……
大上段から振り下ろされる一撃が、残っていたもう一方の腕を容易く粉砕する。
これで攻撃を防ぐ手段は無くなった。
「大地の精霊さん、増やして!
契約した精霊の力を借りて増大した石礫の雨が、あらがう事の出来ない
十数発の石弾を叩き込まれた
………………。
…………。
……。
コゴロウが
彼女たち二人のスキルでは、遠距離攻撃で
『やっぱり投石くらいじゃダメージは入らないか』
アーニャが全力で投げた石礫は、
彼女が最も自信のある
『私がひきつけるから、背後に回って!』
バーバラはそうアーニャに指示すると、剣士の間合いに踏み込む。
一刀両断、振り下ろされる剣を新調した篭手で弾く。はじけなくても緊急回避で避けられるタイミング。
けれど十分に余裕をもって受け流すことが出来たことから、それほどステータスは高くないと判断した。
「はっ!」
小手調べにジャブを打ち込む。予想よりも硬い。
全力で無いとはいえ、
「取った!……ええ!?」
その間に後ろに回り込んだアーニャが頸椎辺りを狙うが、剣士は後ろに目があるかのようにしゃがんで避けると、そのまますくい上げるように回転切りでバーバラとアーニャを同時に狙う。
「っ!」
「おおっと!?」
二人とも大振りの一撃をもらうほど弱くはない。
バーバラはついでに一撃拳を入れるが、やはりダメージとしての効果は薄い。回避を前提にした拳では、動きを止めるほどのダメージは与えられそうになかった。
その上連打を入れようとするとしっかり防御してくる。
「……なるほど。これは厄介ですね」
威力を高めるスキルが殆ど効果が無い状態で、どうしたモノか。
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□雑記
守護兵は迷宮の壁や床と近い素材で出来ていて、魔力を起点とするスキルや魔術は効果が薄いです。
ただし強度は迷宮壁ほど高くはありません。
タリアの職である精霊使いは、契約した精霊の特性によって、精霊魔術やそれ以外の魔術も威力を強化することが可能です。また、精霊には自我があるため、ちゃんとコミュニケーションを取っていれば、結構あいまいな支持でも意図をくみ取って支援してくれます。
精霊はタリアにしか見えない為、これまであまり出番がありませんでした。
現在3話公開中のスピンオフ側もよろしくお願いいたします!
アーニャの冒険~鍛冶の国の盗賊娘~
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