第234話 鍛冶師アラタ・ソウエン
「難儀な依頼ってーのは分かった。ここで断るようなら職人じゃねぇ。精一杯やらせてもらう」
ソウエンさんは協力を快諾してくれた。
「……だが、正直俺だけじゃあ荷が重いな。親父に力を借りよう。最近は俺に店任せて、気に入った客の仕事しかしねぇが……大丈夫だろう。ステータスを見せても平気だよな?」
「ええ、大っぴらにもしていませんが、特別隠しているわけでもないです」
2次職をとり、
「なら、ちょいと待ってな」
「装備が必要なのは3人でいいのかい?店に二人いるよね」
「彼らはそれなりの武器を持っていますから」
「ん~……いや、それなら呼んできてくれ。どうせ親父は全部見せろっていうに決まってる。今使ってる武器や、使ってた武器があったらそれも準備してくれ取りに戻るか?」
「ああ、それなら大丈夫です。
打刀を取り出して見せると驚いていた。
やはり珍しいらしい。
タリアとコゴロウを呼んで、奥の工場に通される。ここは製図だったり、書類仕事をする為の部屋かな?
どうやら機械部品も作っているらしい。さらに奥からは金属を叩く音が絶え間なく続いている。
……隣の部屋に錬金窯が見える。錬金術師も居るのか。
「親父を呼んできてくれ。でっけえお客さんだ。今日はササキさんとこだろう」
お弟子さんであろうドワーフに声をかけて、こちらに向き直ると、テーブルを開けて武器を置くように言われる。
俺は打刀。それからフェイスレスに帯刀させた予備の剣。
タリアは水槽アパーム・ナパートとメイス。
アーニャは俺がエンチャント短剣。
バーバラさんは1次職の時から使っている手甲付きのガントレット。
コゴロウは愛刀と言っていた大鬼斬りと言う太刀。
俺の打刀もコゴロウの太刀も、実際に日本の物とはちょっと違うみたいだけど、面倒なのでもうそう呼ぶことにした。
「ふむ。旦那の武器は打刀か。持ち手が無い大陸刀は?」
「予備として使っていて、最近鉄人形の武器に改造したものです」
フェイスレスを取り出すと、びっくりして飛びのいた。
「馬鹿野郎っ、脅かすんじゃねぇ!……そいつはなんだ?」
「人形ですよ。人形遣いって職業があるでしょう?それで操作するように作った、鉄人です」
バックルを使ってフェイスレスを起動すると、ソウエンさんは眉をひそめた。
「あんた、いくつ職業取ってんだ?」
「ぼちぼちたくさん、ですかね」
運搬者、付与魔術師、戦士、錬金術師、人形遣い、死霊術師、侍……思いのほか少ないな。
せっかく全適正あるんだし、珍しい職をもう少し取っても良いかも知れない。
使っている武器をしばらく見分し、その後一人づつ話を聞いていく。
「そっちの姉ちゃんが槍とメイス……最近槍に変えたのか?」
「わかるの?」
「この槍は面白い武器だ。金属加工の仕方や魔力の流れが最近のもんじゃねぇな。メイスはそれなりに使われていて強い魔力を感じるが、市販品だ。なら、メイスから槍に乗り換えたしかねぇな」
「鍛冶師も面白い職業ね」
バーバラさんも取ってる
「んで、ちっこい嬢ちゃんは2次職に上がったばかりか」
「おう。あたしの武器は短剣だけど、使い始めたのは最近だな」
「……メイスと同じく、強い魔力を感じるが……確かに、使い込みがされてる感じじゃねぇ。どういうこった?」
「そこは長くなるのでまた後で」
成人してまだ一週間ちょっと、突貫のレベル上げで2次職に成りましたとか話し出すと面倒だ。
「……まあ、いいか。あんたの武器は普通だな。いや、これも魔力を感じるんだが」
「私はクロノスの騎士見習いのような立場でしたので」
バーバラさんのガントレットはそれなりに使い込まれている。
「格闘家ならブーツも武器だろ。そっちも作るよな?」
「はい。そうですね。可能であればお願いしたいです」
「ならうちだけの仕事じゃねぇな。足形の採寸は後で知り合いの工房に頼むから、そこと合わせて考える必要があるな」
「お願いします」
防具に続いて武器も刷新できれば、バーバラさんの戦力は一気に上がるだろう。
「……あんたの太刀は……業物だな」
「我が愛刀大鬼斬りは、我が家に代々受け継がれた名刀である。これに勝る業物はそうそうありはせぬ」
「調整もきっちりされている。……リターナーの旦那の見立ては正確だな。確かにこの装備なら、普通新調するなら3人だ」
「ですよね」
「だけどな、二人もステータスを考えると今後の事は考えておいたほうが良い。その年でそのレベルだろ?無茶が見えるってもんだ」
そんなに無茶はしていないのだが……いや、そうでもないか。
「んでだ。もう一つ気になるのが旦那の打刀だな。あんま使って無ぇだろう?飾りか?」
「いえ……2次職用のバスタードソードを自分用に調整して使っていたんですが、実は最近を折られまして。その刀は、ライリーで購入した代用品です」
「へぇ。……その剣はどうした?」
「持ってますよ。何かの材料に使えるかと思って」
折れた剣を見せると、ソウエンさんはニヤリと笑う。
「なるほどな。……こいつも面白い剣だが……今の旦那のステータスじゃ、これも全力で振るえなかったんじゃないか?」
「……どうでしょう。一応、参照STR200越えに調整してもらって、耐久力向上のエンチャントをかけていましたから。意識して手加減することはありませんでしたが」
「折れ方から言って武器破壊系のスキルだろうが、それより自身の力の影響が強そうだな」
「そんなことまでわかるんですか?」
「ああ。細かい魔力回路の損傷具合がな。そんな感じだ」
鍛冶師にそんなスキル在ったかな。集合知でもわからなかったのに。
……いや、もしかして魔力視の類か?俺にはそこまで細かな魔力の動きは見えていない。集合知として知識を使えても、見えていなければ検索に引っかからない。
「細かい所は親父に見てもらう必要があるが……無手の嬢ちゃんはともかく、二人はどんな武器が良いんだ?」
「俺は剣です。他の武器も使えますが、剣が一番扱いやすいので。盾も使うので、片手でも両手でも使える剣が良いですね。それでバスタードソードを使ってました」
「……盾も出しとけ」
テーブルの上にカイトシールドを出す。
エリュマントスの大剣とかも出した方がいいだろうか?俺が使うことはまずないけど。
「あたしは短刀が良いな。ステータスが上がって装備の重さは気にならなくなったけど、戦う時の位置は相手に近い方が動きやすい」
アーニャは職業的にインファイト向きだ。
AGIもDEXも高いし、リーチよりも手数で攻める形にすべきだろう。
……双剣を試させるのもありかもしれない。
「おう、戻ったぞ!わざわざ俺を呼び戻した面白れぇ客ってーのはどこのどいつだ?」
新たに出した盾を見ながら話をしていると、低く響く声のおっちゃんが工場に入って来るのが見えた。
工房の主人が帰ってきたらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます