第168話 決着の大剣
「自らの罪に埋もれて死ねっ!」
地に倒れ伏した亡骸たちが起き上がり、一斉にカマソッツに襲い掛かる。
その数49。ほとんどが1次の近接戦闘職であるが、その動きは生前と変わる物ではない。
「ザコ共の死体などにっ!」
当然カマソッツも迎撃に打って出る。
魔術を籠めたであろう手刀が、近くの戦士の胸板を貫いた。
「は、でくにんぎょぉ」
胸を貫かれたままの戦士が振るった剣に首を切り落とされて、1体がまた塵へと消える。
「ばかな!」
馬鹿はお前だ。今お前を虜囲んでいるのは死体だぞ?生前と違って、ちょっとやそっとの攻撃では止まりはしない。防御も考えない。キサマを殺す為だけに猛進する亡骸たちだ。
「粉微塵に吹き飛ばせばいいんですよぉ」
「残念だが俺もいる!」
ボンッ!爆発系魔術を放とうとした個体の前に盾を生み出され、自らに襲い掛かった爆風で半身を焼かれた1体が倒れ伏す。
伸びた3本の
「ひぃ!」
思わず飛び上がった個体に、飛翔系の斬撃が降り注いでひき肉に変えた。
「たかが死体にこんな!なぜ傷が回復しているのですぅ!?」
「治してるからな!」
レベル20で覚える義体構築。様々な素材を使って死体を修復するためのスキルで、戦場の死体たちは出来る限り修復した。
材料になったのは
更に周囲に転がっている食材系ドロップアイテムをビットで回収し、それを素材に亡骸たちを増やしていく。離れた所にある遺体も回収し、
目の前で二体に分かれたカマソッツを、一刀のもとに切り捨てる。
グランドさんのスキルでHPを削られたカマソッツは、おそらくHP一桁といった状態なのだろう。そう高いステータスではない1次職の攻撃でも倒せるし、俺の斬撃なら数体まとめて始末することが出来る。
防御スキルを使っている間は増えることが出来ず、増えてから防御へ移行するまでにはディレイがある。
なので殲滅速度の方が速い。
「くそっ、くそっ、こんなばかなことがっ!」
既にカマソッツの数は半分を切った。
複数個体で分かれる1体を守り始めたが、それでも倒す速度の方が速い。50人越えのスキル、それに亡骸たちに封魔弾を使わせることも可能。既に
「いよいよ年貢の納め時だぜっ!米は無いだろ、首置いてけっ!」
カマソッツが張ったであろう障壁魔術ごと、目の前の一体を両断した。
「私を愚弄するのもいい加減にするのですよ!」
「おっと、
目の前に張られた障壁を無効化。
そのまま増えるカマソッツを切り捨てて、残り人数が一桁。少し離れた所にいた個体は殲滅し終えていて、後は目の前の数体を残すのみ。
屍たちの攻撃は中々通らなくなってはいるが、それをおとりにして俺が剣を振るえば確実に数を減らせる。このまま押し切れるか……。
「こんなことで……私がやられるわけないでしょう!!」
その瞬間、数体居たカマソッツが消えた。
魔力反応が……上がる!?
「数でダメなら、力で押すのですよぅ!」
振り下ろした剣から響く甲高い音。魔物武器!?受け止められた!
カマソッツが生み出したのは2メートルを超える銀色に輝く棍。それを横凪に振るって、屍たちを弾き飛ばす。
「操り人形共に用は無いのですよ!
その瞬間、周囲の魔力が大きく乱れた。
「っ!」
ここに来て対抗魔術!?魔力の乱流が、俺と屍たちのつながりを断ち切ったのだ。同時に
「群体も呼べないだろうにっ!」
この手のスキルは敵味方関係なく影響を受ける。この乱流の中に居る間、俺もカマソッツも大した魔術は使えない。効果を発揮しているのは
カマソッツの突きを盾で受け流し、首筋を狙って剣を振るうが。
「必要ないのですよ!超硬質化!」
それは硬質化した腕に受け止められた。くそっ!ちょっと切れるがその程度か。
発動した
「はじめからこうすれば良かったですねぇ!武器を失った戦士など、遅るるに足りません!魔術が使えなければ、貴方も劣化戦士でしかない!」
「大した腕も無くっ!」
この力、明らかにステータスが上がっている!
武器を振るう能力は決して高くないが、ステータスは魔術師タイプの魔物の物ではない。
リソースの振り直し?……いや、ちがう。
「てめぇ余らせてたな!」
「そこに気づかなかったのが貴方の敗因ですよ!」
ディアボロスを取り込んで群体を獲得した際、こいつの魔力上昇量はわずかな物だった。
スキルにコストを割り振ったせいかと思っていたが、使わずにため込むなんて手の込んだことをしてたとは。
「殴り合いを選ぶとはいい度胸だな!」
「それも見えてるんですよねぇ!」
ガンッ!飛び込んできたグランドさんの一撃を止める。こいつ、腕が!
「四本だと!?」
「一部だけなら出せるんですよぅ!」
群体を使って体内に自分の分身を生み出したか!ここに来て器用な!
グランドさんはいつもの武器を吹き飛ばしてしまって、全力でスキルが使えない。
一瞬だけでも気をそらせれば……なら!
「
盾を収納し、直接触れた
遠隔操作でなければ、この魔力乱流の中でも操れる!
「そうそう何度もやられませんよ!」
くそっ!相手のほうがわずかにスキルの発動が早い!
なら、破壊されても問題ない方法で!
「叩きつける!」
グランドさんが連撃を仕掛けたタイミングで、残り二本の足を上空から振り下ろす。
この方法なら例え破壊されてもそのまま押しつぶせる!
「この程度で潰れませんよ!」
手刀を構えた二本の腕が、落ちてくる
……そして準備は完了した。
「
「へ!?」
触れている物に対するスキルであれば、この魔力が乱れた空間でも影響を受けない。そしてここまで周囲にばらまかれた状態なら、効果の遅い
周囲に展開された
「こんなものっ!」
素材の強度しか持たない拘束など、大した影響は無いだろう。
脱出までのほんの数秒、多少の身動きが制限されるだけだ。
でも、それで十分。
「
グランドさんの目の前に伸ばした壊れた蛸足の先から、それが差し出される。
長さ4メートルに至る片刃の大剣。
王都に入って以来、ずっとタリアに預けっぱなしになっていた、もう一つの戦利品。
エリュマントスの大剣。
現在俺が持っている装備の中で、唯一伝説級のスキルにも耐えうる武器。
『全力で!』
「まかせなっ!狭間に消えろ!」
今度はすくい上げるように、確殺の一撃を放つ。
「ひっ!身代わりに……」
「いや、無理だから。
「
この日二度目となる、空間が裂けた。
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