第107話 錬金術を使ってみた
「さあ、今日から錬金術ですよ」
とりあえず王都での予定の一つ目を終えて、次まで2週間以上予定が空いたので、その間に色々と実験を勧めよう。
誰かくるかもしれないので、ロバートさんとリネックさんは家に残してタリアと二人、朝一番に転職神殿へ。
二人はアインス男爵の使いと交代で帰郷の予定だが、それまでは頑張ってもらおう。
「俺は錬金術師に戻るけど、タリアはどうする?」
「昨日話していた通り、一度
俺がレシピを起こして、タリアが作る。この流れでちょっと作業を効率化できないかと話していた。
「精霊魔術は定着してないだろうから、おためしね。少しレベルを上げたいのだけど……」
「ランニングかなぁ。王都内ではとばりの杖は使えないから、外に出て人目のない所まで移動しないと」
「……仕方ないわね」
一度上げてしまえば持ち越せる。
転職して、王都を出たのは8時半過ぎ、近くの森まで走り、とりあえず3000G分の魔物を潰す。
一般職は必要経験値が少ないらしい。下手に稼ぎすぎて限界突破はまずい。40超えたのでとりあえず、基本的なスキルはすべて使えるからいいだろう。
2時間ほどで王都に戻り、食材と錬金素材の買い物を終えてから家に戻る。昼食は屋台だ。
「それじゃあ、私は夕飯の食事の準備をするわね」
「二人はこちらの手伝いをお願いします」
ロバートさん達を連れて庭に出る。
マスク代わりの布を口に巻いて、
細かくなりすぎると肺に入った時に健康被害が怖い。
「じゃあ、この間と同じようにふるいにかけて砕けなかったものを取り出してください」
「やり方は分かって居るが、これは何の意味が?」
「
火山岩の一種っぽいから、見つかるとも思えないけど、まぁ、やる気は重要だ。
自分はと言えば、とりあえず工房に。この間運んでもらったので、ドラム缶ほどの大きさの錬金窯の中には、砂の一部が突っ込まれている。
「まずは
中々操作が難しいが、水のチューブがとぐろを巻きながら伸びて、水瓶から錬金窯へと水が映る。
「なみなみと水が溜まったら、次に
砂の傘の倍の水が入っている状態。重さがあるから、中身が吹き飛ぶようなことは無い。
これを拡販で混ぜると、軽い不純物が浮いて、重い物が沈殿する。
しばらく待ってから上澄みを丁寧に抄って、水分量を減らす。
「さて、次だけどMPもINTもあるしスキルの力業で良いか」
まず
次に
スキルや物体の影響を錬金窯の中に抑える
魔力操作のレベルが足りないせいかな。
しばらく書きませたら、次に
「こっからさらに
組成分解は混合物を分離するスキル。これでざっくり遠心分離した金属塊を、それぞれの分子毎の素材に分ける。
一番多いのは二酸化ケイ素、およそ100キロ。
次が酸化アルミニウム、30キロ。酸化鉄20キロ。酸化カルシウム20キロ……。そうして、200グラムに届かないくらいの酸化マンガンを抽出したところでひと段落。
「……これを100回くらい繰り返すと1グラムの銀が抽出出来て、その内
MPの消費量を考えたら、岩石中から力業で希少金属を取り出すのはいくら何でも無理がある。
庭の砂が1トンちょっとは在るはずだけど、全部処理しても耳かき一匙にもなりゃしない。
「とりあえず、酸化アルミニウムを
「やっぱ酸化状態は質量比が悪いな。先に還元すべきなんだろうか」
30キロのアルミの内、10キロとかが酸素のはず。ってか、岩石の構成物質の半分は酸素だから、還元してしまったほうが重さ基準でかかるコストは減るか。
扱いが難しい元素とかは酸化させておいた方がいいから悩ましい。ナトリウムとか怖い。
庭に戻ると二人は黙々と粉古いを掛けていた。
「何か出ました?」
「小指の先位のよくわからない石の塊のようなものが多いです。水晶でしょうか、透明な小石が出ていますね」
「意識したことは無かったが、魔物たちはこういうものも核としているのだな」
「そうですね。もう一回だけ材料確保しますから、振るった砂をまた錬金窯に投入してください。どうなるのか説明します」
錬金窯を使って、再度素材の分解を行う。
今度は一気に溶解させない。徐々に溶かして、溶け切ったものを
時間はかかるが、こっちのほうがまだMPの消費が少ないか。一気に大きな効果を出そうとするとMPが馬鹿にならないな。
「振るってもらった砂から、これだけの原料が取れます。重さ的に酸素……錆の原因となる物質が半分くらいですけどね」
「すごいな。錬金術は初めて見たが、こうやって素材を取り出すのか」
「俺はINTとMPが高いので力業でやってますが、普通の錬金術師だと、一日に十分の一も処理できませんよ」
MPがあり、INTが高いからできる力業だ。
「錬金術は一般職ではないですが、基本的に加工に特化した職業です。攻撃魔術あまり覚えません。代わりに
酸化アルミを還元して、さらにマグネシウムを混ぜる。2.5%くらいかな?
加温で溶かし、撹拌混ぜ、さらに
円形の留め金、持ち手を個別で作成した後、
「はい、泡だて器~」
「……突然どうした?」
「その反応は辛い。泡だて器を作ってみました」
似たような道具はあるけれど、日本で使われている形状の泡だて器はこの世界にはまだなかった。
「泡だて器?」
「平たく言うと、マヨネーズを混ぜる際に楽になる調理器具ですね」
「それは素晴らしいものだ」
「武器などは作れないのですか?」
「残念ながら。食事用のナイフくらいならともかく、武器として使うものを
錬金術師としてINTとMPが潤沢にあれば、錬金術師用の武器は作れる。
実際2次職の中には浸かってる人もいるだろう。でも、万人に仕える武器や防具を作るのは鍛冶師の仕事だ。
「とりあえず2つ作りますから、タリアに渡してください。MPをもう少し減らしたら、休憩がてらトレーニングをしましょう」
「それは休憩とは言わない……」
ぼやく二人を送り出して、素材に向かい合う。
アルミを使ってアルミボウル、二酸化ケイ素を構造変化のスキルで石英ガラスに変換させてガラスボウル、酸化鉄とケイ素に燃料として仕入れてある木炭を混ぜて鉄合金を作成し、それで揚げ物鍋を作成。
どれも似たような形だが、素材によって
そして丸みを帯びた形を作るはなかなか難しい。まっすぐは比較的容易なんだけど、同じ比率で曲げるのがキツイ。
この辺の技術はDEXとINT参照だと思うのだが、魔力操作も影響していそう。
どうも、総INT量より魔力操作のレベルが高いのが普通っぽい。俺は逆転現象が起きているせいで、うまくコントロールできていないのかも。
試行錯誤しながら、MPが減るまで施策を繰り返した。
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