Nothing:episode2 4. おやすみ

 それから、暫く俺の仕事は忙しくて、忙しいのを理由に須見すみと会わないようにしていた。

 次、どんな顔して会えばいいのか。考えれば考えるほどに、会おうとするハードルが高くなった…。

「おやすみ…」

 だから、いつも寝顔に言ってた…。

「ん…?」

「起きてたの…?」

 ベッドから起き上がる須見は、俯きながら。

「うん。待ってた…」

「何か、あった…?」

 連絡取ってくれても、よかったのに…。

「うん…」

「どうしたの…?」

 突然、右腕を揚げて、

「おやすみっ…」

「おやすみ…?」

 そして、須見はベッドに倒れ込んだ。

 寝言か…。

 寝言だな…。

「もう…」

 可愛過ぎる。見た目はそうじゃないのに…。

「煽るの、やめていただきたい…」

 ちょっと前まで、会うのはどうしようかなって躊躇した気持ちは何処へやら…。

みお、好きだよ…」

 シーツの上から抱きしめた。

「うん。知ってるよ…」

 須見が向きを変えて、向き合う形になった。自らいつも急接近しているのに、今日はやけにドキドキする…。

斗亜とあ、す…スーツにシワが出来る…」

 確かに、今スーツ着てるけれども…。今、その言葉じゃないでしょ。

「うん。そうだね…」

「だから、脱いで…?」

 大胆なお誘いだこと…。

「じゃあ、澪が脱がせて…?」

「眠いから、無理…」

 おやすみと言って、須見はまた背を向けた。

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