今日はね、僕が泣いた

@kanzakiyato

今日はね、僕が泣いた。

『今年の花火一緒に見れなかったね』

「せやなぁ俺部活の試合やったし。今年は一緒に見たかったんやけどなぁ」

『今年は見れなかったけどまた来年一緒に見よ』


と君が言った。僕はその言葉に小さくうなずいた。


『約束ね。忘れないでよ』


と君は笑った。でもその顔はどこか儚かった。

僕が君の病室に行くと、君はいつも挨拶もなしに今日はね、と話し出す。

たまには感謝の一言ぐらい言ってほしい、なんて心の中で言いながら、

でもやっぱ、そういうところも僕はたまらなく好きなんよなぁ、

なんて思ってた。

今日も君に会いに行った。でもその日はいつもと違って、

君はベッドの上で膝を抱え丸くなって泣いとった。

今はそっとしておこう。僕はそっと病室のドアを閉めた

翌日君はあの花火となった。

空にぱっと浮かんではあっけなく散ってゆくあの花火のように。

僕は1つ後悔をした。

君がいなくなった病室でただ1人呟いた。


「僕は君が好きだったのになぁ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

今日はね、僕が泣いた @kanzakiyato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る