超天才小説家は今日も問題ごとを解決する。〜ハーレムなんて私は認めないんだからね!〜

姉御なむなむ先生

第1話「初めまして、俺の作者」

 小説家とは一体何なのか?

 そう質問してくる者は意外と多い。

 自分たちの周りで小説を書いているものがいないからという好奇心から来ているのだろう。しかし私はいつだって同じ答えだ。


 ――小説とは、未知の世界の創造だ。

 キャラという、主人公という可愛い我が子のために物語という名の世界を創作しそして生かし人生という名の道を作る。

 小説家というのは、ある意味世界の創造者……つまり神だと思っている。


 私はそんな神という目線に立ち、私の可愛いキャラたちのために身を粉にして小説を書く。


 小説家というのは、そういうものなのだ。


 ****


 私の名前は島地しまじ里奈りな。超天才な小説家だ。


 これまでにもたくさんの小説を創作し、そして世に出してきた小説家で、そして今も執筆中だ。


 そんな私は今日も机に向かって新しい小説を執筆しようと思っているのだが、これが全くと言っていいほど筆が乗らない。

 ここまで筆、というか指なのだが、乗らないことがあっただろうか?


 勿論、結構ある!!


 と言うよりこんだけ小説出していたらネタ切れになるに決まっている。ネタよ、どうか降ってきてくれ。後生だから。


 そう願っても今日もネタは降らず、小説の神は私に微笑まない。

 目の前にあるパソコンを睨み最近のアニメを見ても全くといっていいほど創作が進まない。このままでは私は御飯を食べれなくなってしまう。困った。


 いやー、しかし最近のアニメとか小説とか凄いな。特に異世界物が多い。

 まあ、私もそれに乗って異世界ものやったけど。設定考えるのは疲れるし、長いものになると矛盾に気づきにくい。しかし楽しい。

 けれども他人のほうが面白いような気がして気分がヤサグレそうだ。チッ。


 まぁ? 今の私は異世界にそれほど興味がないから良いけどね! 別に設定をまた考えるのがだるいとかそういうわけじゃない。無いったら無い。


 私はそう。こうなんか、ドワっと来てぐわーっ! ってなるようなものが良いな。ネタ無いから無理だけど。


 ギコギコっと背もたれに体重をぶつけるよだらけているが、残念ながら創作の神は意地悪らしく私の方を見てはくれない。

 創作の神はツンデレなのだ。


 しょうがない、今日はそういう日ではないとうこと。諦めよう。

 切り返しが早いのが私のいいところ。最近編集者こと友人に早くしろってせっつかれているけど、ないものは無いのよおほほ。


 切り替え早くルンルンな気分でパソコンを閉じようとした私。


「ん? え、なにあれ?!」


 光る何かに目を目を向けて私は大口を開けて驚く。

 パソコンからありえないほど光が溢れて目が潰れそうになった。


 な、何!? まさかパソコンの故障か!? 最近買ったばかりなのに!

 はっ、それとも……。


「まさか異世界召喚……?」


 ならどんな状況でも冷静でかっこいい主人公にならなければな。

 あ、でも悪役令嬢に転生するのとかは面倒なんでいやです。どうせならチートでバーンってしたい!

 そしてかっこよく活躍したらその国の王様に呼ばれて金もらってウッハウハの生活。

 やっぱ異世界って胸が膨らむね!


 そう興奮している内にパソコンからの光が自分の部屋をいっぱいにし、遂に方向感覚がつかめなくなって地面に尻持ちする。

 床のフローリングが少し冷たく、しかしその感触をしっかりと確かめながら光が収まるのを待っていれば、光が収まったような気がした。


 ん……? もう終わったの、か?

 床の感触はさっきと同じで異世界に召喚されているわけでもないらしい。

 ならさっきの光はパソコンの故障だな。なんかがっかりー。保証どこにあるかな?


 フッと鼻で笑い目を開ければ、そこはやっぱり自分の部屋で場所は変わっていない。

 そう、場所は変わっていないのだ。場所は。


 人の気配が目の前にして、私はそっと顔を上げる。


「へぁ?」


 ゆらゆらと透明な何かが、そこにはいた。


 ****


 透明ながらも人の姿をかたどっているようで、私は変な声を上げる。


 え、誰この人……人?

 いや、でもなんか人っぽいけど……いやちょっとまって、まさかこれって逆召喚ってやつ?!

 その場合なんだ。こういうことか?

 パソコンが光ったと思ったら目の前に透明人間が召喚されていました!

 いや一体どこのラノベだよ! おかしいでしょうが! いいネタになるとは思うけど!!


 心が荒れ狂ったままジリジリと目の前に透明人間(仮)から離れ、私はこの部屋を出ようと戦略的撤退を実行する。

 あくまで戦略的撤退。別にビビっているわけではない。そうビビっているわけでは「おい、お前がだな?」――ヒャァアアアイ?!!?


「え、シャベッタ……」


 馬鹿、な。喋った、だと!?

 私は思わず止まって目の前の透明人間(仮)を凝視すれば、それもまた同じように私を凝視している。ような気がする……。

 そう見つめ合っている。見つめ合っているような気がするのだ。目など無いくせに!


 ……いや落ち着け私。冷静になれ。ここは取り敢えずこの子が一体何ものなのかを追求せねばなるまい。


 そうあくまで冷静に、侮られるな私!


「えっと、あなたは一体誰でしゅかっ」


 …………噛んだ。恥ずかしい。

 あまりにも恥ずかしい。さっき冷静になれと言ったばかりで! もう誰も見ないで!

 しかし私がそう問いても目の前の透明人間(仮)はなにも言わない。

 もしや、口はあるのに耳はないのかな?


「いや、聞こえているぞ作者。というより口もねーよ」


「ヒエッ、エスパー?」


 こ、こいつ……できる!

 ってあれ? 作者? 一体この子は何をいって……?


「はぁ、まじでこいつが俺の作者かよ」


「あ、あの作者っていうのは一体?」


「まだわからないとは、全くもって俺は恥ずかしい」


 なんか目の前で呆れられているんですけど。なんか可笑しくない? 理不尽だ理不尽。


 じゃあ世界中の皆さんにこの状況説明して、そしてなおかつさっきの質問してみましょうか?

 言われる答えは唯一つ、お前何いってんの? だ。ついでに奇異な目でも見られる。


「つまり! 私は馬鹿ではない! これがわかる方が馬鹿で恥ずかしいのだ!」


「それはつまり俺が馬鹿で恥ずかしくて変なやつって言いたいのか?」


「イエッ、ソンナツモリハアリマセン!」


 目の前の透明人間(仮)からの低い声に思わず萎縮する。変なやつっていってません。気の所為です!!


「……ハァ〜〜、なら始めから説明してやるからちゃんとよく聞いてろよ」


 呆れたような大きいため息。本当に理不尽だけど説明されるのならちゃんと聞こうではないか。敵意は無いみたいですし。


 視線を戻して聞く体制になった私に満足そうにうなずいた目の前のとう(割愛)は、一つ咳払いをして説明してくれた。


「俺は今お前が執筆しようとしてた新しい物語の主人公という概念だ。今は俺っていう一人称を使っているが、女にまた別の一人称になる。まあつまり俺はまだ出来ていない物語の「主人公」って存在だ」


「…………………………………………は?」


 え、何を言ったのかがわからない。

 これは私が馬鹿なせいなのか、それとも目の前の突拍子もない話しのせいで頭がパンクしそうになったせいか……。取り敢えず意味がわからない。

 しかし今目の前の透明人間くんの話を整理するに、この子はまだ白紙である小説……つまり物語の主人公ってことになる、のかな。


 そして今この姿の理由は、まだ私が物語上で主人公を作ってないせいだということ。


 ……いや意味がわからん!!


「意味がわからなくともそういうことなんだよ。理解しなくてもいいわ」


「いや、理解しないと不味くないですか?

 警察とか呼ばれちゃいますよ」


「呼ばれたところで俺という存在は作者であるお前以外は見えもしないし感じもしない。変人扱いされるだけだぞ」


「えっ」


 私以外に知覚できないってこと?

 もし目の前の透明人間くんの話が本当であるなら、警察の手は使えない。

 それにさっきのパソコンのことだってあるし、取り敢えずそういうことだということにしよう。


「そ、それで。何で主人公? くんが私の前にでてきたのです?」


「何で敬語なんだよとは突っ込んでやらないが、いい質問だ。俺が来たのは唯一つ」


 ゴ、ゴクリ……。

 ただらぬ雰囲気に気構えながら、私は透明人間の声に耳を傾ける。

 い、一体何が目的で……。


「俺はハーレムものの主人公になりたい!」


「却下する!!」


 ハーレム物など認められるかぁ!!

 反射とも言える私の心の声は、大気圏を乗り越え宇宙に響き渡ったという。



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 新しいものです。色々とごめんなさい。

 基本は単話にしています。多分

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