第38話 学園の生徒との模擬戦
次の日。
「カイル~! マリア~! おはよう!」
朝からライは元気だ。細い腕をブンブンと振っている。フィーネ。ちょっと今の行動が可愛いなとか思ったりしてないか? 顔が真っ赤だぞ?
「ライ、フィーネ。おはよう」
「ライ君、フィーネさん、おはよう」
「お、おはよう……」
「フィーネ、どうしたの? 具合でも悪い?」
「わ、悪くない!」
「良かったぁ」
多分フィーネはライの可愛さに悶えてるだけだと思うぞ。それに、ライが心配するとさらに追い打ちをかけたみたいに、フィーネの顔が赤くなってるから!
「フィーネ、ちょいこっちへ」
「な、なんだ? カイル!」
「ライはマリアと話してて!」
「分かったよー!」
フィーネがこんな調子だとどうにもうまくいかない。
「フィーネ、ライの可愛さに悶えてるだけとかじゃないよな?」
「は、はぁ? そ、そんな訳ないし!」
「まあ、いいんだけど。フィーネがその調子だと、フィーネ自身が持たなくなるよ? できれば慣れてほしいっていうか」
「お、お前にそんなこと言われる筋合いはないぞ? まだ会って2日だ!」
「おいおい、そんな調子だと、ライに友達出来なくなるぞ? 一応は友達だ。フィーネがライから人を突っぱねてる理由も分かるが。ライに友達ができないのは悲しいだろ?」
「そ、そうだな。仕方がない。お前は悪い奴じゃなさそうだから、絡んでやる」
「ありがとう。それと悶えるのもほどほどにな」
「悶えてない!」
フィーネは前世で言う所のツンデレに部類されることが今判明した。こういうタイプってどうやって対処すればいいんだろう? まぁ、普通に接することにするか。
「ライ、話終わったよ」
「分かった。マリアさん、色々話してくれてありがとうね!」
「マリア~? 何話したんだ?」
「へ? ま、まぁ、色々と……ですっ!」
「色々ってなんだ、色々って」
「僕から聞いたんだから許してあげてよ。カイル」
「まぁ、そうだな。聞かれてやばいことはしてないしな」
「それなら良かった」
それなら良かったとか言って、ニヤニヤしてるのすごく気になるんだが。絶対何かマリアが話したな。でも、何も悪いことはしていないし、マリアのコミュニケーション手段だから仕方ないか。ここで怒れば気が短いと思われかねないしな。
「それはそうと、今日は実技の授業だぞ?」
「うへぇ。僕嫌いなんだよね」
「こら! ライ! 私だってずっと守れるわけじゃないんだから頑張らないと」
「そうだぞ、身を守る手段は持っておいた方がいい」
「そうだよね……そういえば、カイルってあのエルドルド家の出身だったね」
「王族のライでも知ってるのか?」
「知ってるも何も、エデルバルク王国の救世主って民衆には言われてるよ?」
「うそ? 家ではただの父上って感じなんだけどな」
「へぇ。でも、カイル絶対強いでしょ?」
「まぁそれなりにはやっているつもりだ」
本当はAランクの冒険者なんだけどね。それを言うとややこしいからやめておこう・
「じゃあ、カイルには僕の騎士になってもらおうかな~、なんてね」
「考えておくよ」
「ハハハッ。冗談だよ」
冗談だよと言ったライの表情はどうも暗かったように感じた。
◆
早速制服から着替えて実技の授業が始まった。
主に魔法と武術で分かれてそれぞれの先生に指導を受ける形だ。この授業は2クラス合同で行われる。魔法と武術で分かれるため、それぞれの人数が少なくなるからだそうだ。
「軽くウォーミングアップをした後、まずは、力量を見るために模擬戦を行う」
初めから模擬戦をするのか。随分と早いな。この学園に入ってきている以上ある程度のことはこなせるだろうが、それでも素人どうしの模擬戦は危険だ。力加減を間違えてしまえば一生モノの傷になったりするからな。まぁ、俺の場合は大丈夫だろうが。アレクとミゲルと父上というやばい三人衆が揃い踏みで模擬戦してくるからな。ほんとに容赦がないんだ。
「カイル、模擬戦だって。僕は嫌だなぁ」
「大丈夫だって。もしなんかやばくなったら止めてやるから」
◆
軽くウォーミングアップを終えた俺たちは早速模擬戦に移ることにした。せっかくだからとAクラスとBクラスの対抗戦のような形を取ることにした。
何人かの模擬戦を終えた後、俺の番が回ってきた。
「よろしく、俺はカイルだ」
「カイルだぁ? あぁ、あの貧乏貴族の所か」
何だこいつは。
「どうとでも言ってろ」
「はっ。俺はリドル伯爵家のコーネルだ」
リドル伯爵家? 確か、第一王子派閥に所属している貴族の所か。才能は大したことないが、実際の強さはどうなんだろうな。今の立ち姿でも隙がありすぎる。だが、それこそ誘っているだけかもしれないからな。
「とにかく始めよう」
「始め!」
先生からの声がかかった。
真っ正面から、正直に剣を振ろうと走りこんでくる。このくらいのレベルはただのゴロツキと変わらない。5歳の時の俺でも倒せた。一度は避けるだけにしてみよう。
シュンッ
剣速はそれなりだが、実戦経験が皆無なのだろうか。振り下ろした後の動きも緩慢としていて、隙が大きすぎる。
「お前の本気はそんなもんなのか?」
「こんなもんな訳ないだろう!」
こんな大口を叩いたコーネルだが、どれだけ待てど動きが変わらなかったので、すぐに首筋に剣を添え、終えることにした。
正直このレベルの奴がここに入れたのがよく分からない程だ。
「カイル、お疲れ!」
「ライか。ありがとう。正直つまらなかったよ」
「コーネル君はずっと同じ動きしかしなかったからね」
「もうすぐしたらライの番だぞ?」
「うぅ……頑張るよ。これでも、騎士団長に鍛えられてるからね」
騎士団長に鍛えられているのなら少しは楽しみだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます