第17話 街に行っていいの......?

 ミリィと遊んだ日の翌日の朝。


「カイル、そろそろ街へ行きたいとかは思わないのか?」


「うーん。出たくないことはないけど今は鍛錬もあるし」


「じゃあ、鍛錬はなしにするから、今日は、従者の2人と街に行って来たらどうだ?」


「ほんと!? どうしようかなぁ」


「カイルは将来この領地を治めることになるんだし、早めに見ておいて損はないぞ」


「確かにそうだね。単純に楽しみだし、見に行くことにするよ!」


「じゃあクラリスにもそのように伝えておくから、カイルはアレクとミゲルに言いに行ってこい」


 僕は次期領主だし、街の状況を知らないまま統治するなんてできやしない。今のうちに見ておいて、将来どのように運営していくべきかを考えておくいい機会になるだろう。鍛錬だけしてても領主としては立派とは言えないだろうからね! そうと決まれば、2人に相談しに行かなきゃ! 確か今は従者用の寮にいるはずだ!


「すみませーん。アレクとミゲルはいますか?」


「あら、カイル様じゃない! アレクとミゲルね。ちょっと待っててね」


 そう言うと、おばちゃんは階段で二階の方に上がっていった。いかにも食堂のおばちゃんって感じでなんだか懐かしくなってしまうね。お! 二人が降りてきた!


「どうしたんすか? こんな朝っぱらから」


「そうですよ、カイル様。鍛錬は午後からじゃなかったですか?」


「今日は相談があってね!」


「なんですか?」


「街に行こうと思うんだ! だから、2人は一緒についてきてくれないかな?」


「カイル様が街に行くってんならどうせ俺たちもついていかないといけないでしょ?」


「そうですよ。私たちはカイル様の従者なんですから、外に出る時は言ってください」


「ほんと!? じゃあ確定だね。今日は街へ行くとしよう!」


 断られることはないだろうなって思ってたけど、やっぱりすんなりいけたね! 断られたら、割とショックだったと思う。二人もついてきてくれることは確定したから、父上に言いに行って今日はいざ街へ!!


「父上! 2人から了承がとれました!」


「おう、そうか。クラリスも渋々だけど了承してくれたぞ!」


「カイル、お母さんとしてはあまり危ないところへは行って欲しくはないけど、次期領主として見に行った方がいいのも筋が通ってるから了承したのよ。だからしっかりと学んできなさい!」


「ありがとう! 母上。しっかりと自分の目で見て学んでくる!」


「よろしい!」


 母上は快諾って言う感じではなさそうだけど、了承してくれただけで良かった。街はこことは違って必ず安全って訳でもないだろうからね。


「おにーさま、まちにいくの?」


「今日だけだよ?」


「ミリィもいきたい!!」


「だめよ、ミリィ。あなたはまだ小さすぎる」


「そうだぞ、ミリィ。今回ばかりはダメだ」


「ごめんなミリィ。また遊んであげるから! それでもだめか?」


「(うるうるっ)」


 ミリィが今にも泣きそうな顔でこっちを見てきてる。本当は、ミリィの願いを叶えてやりたいけど、今回ばかりはだめだ。街は安全とは言い切れないし、ミリィが見たくないものがあるかもしれない。辛いこともあるかもしれない。僕もミリィを完全に守り切れるか分からない。そんな状況でミリィを連れては行けない。この思いをしっかりとミリィに伝えよう。


「ミリィ。まだ、ミリィは幼い。街が完全に安全だとは言い切れないし、何か事が起きた時に僕はミリィを守れる自信がない。頼りないお兄ちゃんだけど、言うことをちゃんと聞いてくれる?」


「ほんとにいっぱいミリィとあそんでくれるの…?」


「ああ、帰ってきたらいっぱい遊んであげるよ」


「わかった……」


「偉い子だね。ミリィは」


 撫でてあげると落ち着いたのかミリィはうるうるした瞳をひっこめた。父上と母上も内心ホッとしたのか安堵の表情を浮かべていた。これで、一応だけど、街に行くための準備はできたかな。あとは、2人との合流を待つだけだ!


 楽しみだなぁ。

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