デートで。

ハマーヨーコ

第1話 出会い

 私と総一朗さんの出会いは、不思議なものだった。

 私は小さな文芸社で物書きをしていた。というと格好いいが、実際のところ、お茶汲みとコピー9割で冊子に作品が載るのは1割であった。

 そんな載ることが殆ど無い文章が、総一朗さんの目に止まったのだ。

 文芸社の上司から、

「田原総一朗さんから、濱邊に電話だ」

と一報が来たときは本当に驚いた。

「はい、お電話替わりました。濱邊です。こんにちは」

 緊張が受話器から伝わらない様にするのに必死だった。

「こんにちは。田原です。先日の冊子の文章読みました。どうしても君の言葉遣いが引っかかってね。ちょっとお茶で、お話できないかな?」

 相手も相手なので、断ることもできない。

「は、はい。もちろんでございます。」

「じゃあ、今日の午後7時に新宿西口で待っててね。じゃ」

 …あれ?地方から私が大都会にでるの?と若干戸惑いも感じながらも、私は早めに退社して新宿に出掛けた。

 集合時間に1時間程、取材のために遅れた彼は、汗だくだった。

(そんな私なんかに走る労力使わなくていいのに)

 少し複雑な気持ちのまま、2人でファミレスに入った。そこで、私は日頃どんなことを考えているのかと、かなり深く質問をされ、流石に皆の前で言うのは恥ずかしいぞと思い 彼をカラオケルームに誘った。

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