AI異世界すと
@suzulaugh
第1話:無敵になる秘奥義を敵に放つな
私の名前は「ユウシャ」だ。しかし私はしがない農民なので、勇者と間違えられるのが心底嫌いだ。
私はただ、普通に暮らしたいだけなのだ。
この世界には魔王がいるらしい。
そして、その魔王を討伐する為に異世界から召喚された者達がいる。
彼らは皆、凄い能力を持っているという事だが……正直なところ、そんなものよりも平和を望んでいる。
異世界から召喚された者達は「勇者」と呼ばれている。なので、私が自己紹介するとそっちの意味だと勘違いされてしまう。
だから私は、いつもこう名乗っているのだ。
「私はただの農民です。勇者なんかじゃありませんよ?」……と。
◆ ◆ ◆
「勇者様! どうかこの国をお救い下さい!」
王都にある城の謁見の間で、王様が「勇者」に懇願していた。
「まぁ? オレ様いわゆる『未来予知』? 持ってるわけだしぃ? 救っちゃってもぉ? いいかな、的な?」
勇者と呼ばれた少年は、やたらと偉そうな態度で王様に言った。……こいつ本当に大丈夫か? 私の不安は的中した。
「マジっすか!? なら早速行きましょう! さあ、早く出発の準備をして下さいね!」
王様の口調もそれにつられて変な感じになっていた。大臣である私こと「ダイジーン」は気付かれないようため息をつく。
……こんなんで本当に魔王を倒せるのか?
◆ ◆ ◆
それから数日後の事だった。
「あのバカ共め……。よりにもよって『魔王城』に行くとは……」
俺は今、勇者パーティを見送る為に来ていたのだが、勇者パーティの面々には心底呆れていた。
薄っぺらい服しか着ていない勇者、城の兵士、城の兵士、あと城の兵士。
「あのバカ共には俺の方からも言っておく。お前達はもう帰れ」
「何を言うんですか!? 我々だって『未来予知』の能力者ですよ!? きっと魔王を退治してみせます!」
「……。……勝手にしろ」
俺はそれだけ言って勇者パーティを見送った。
……いやおかしいだろ!? 城の兵士が3人全員「未来予知」の能力持ちだったら、勇者いらないだろ!?
「はぁ……。…………え?」
その時、俺は気付いた。
兵士以外の人間が消えている事に。
「まさか……転移魔法陣か!?」
この世界には存在しないはずの魔法陣が出現していた。
俺はすぐに城を出て、転移魔法の方に向かった。
「気付いて……しまったようだな……」
そこにはフードを被った男がいた。
こいつは一体誰なんだ? どうしてこの場所にいるんだ? 疑問が浮かぶが、まずはこの状況を何とかしないと……。
「貴様は何者だ? 目的は何だ?」
「……ふむ。まだ気付かないのか」
フードの男はお見送りの男「オミ・オクリ」の頭を指さした。
「え?…………うわあああっ!!」
男の頭からはツノが伸びており、手には槍を持っていた。
そしてその槍の先端から赤い液体が流れ落ちていく。
「ば、化け物ッ!! ぐっ……!」
逃げようとしたが足に力が入らない。
俺のほかにもう一人お見送りの男がいたとは……! まったく気づかなかった!
「我が名は魔王軍四天王の一人『血の悪魔』ドッペルゲンガーだ。貴様に恨みはないが死んでもらうぞ」
そう言うとドッペルゲンガーは俺に向かって突進してきた。
ちくしょう! こうなったら最後の手段を使うしかない!
「やってやる!」
俺はこの日に備えて一子相伝の秘奥義を体得していた。その秘奥義の名は――!
「喰らえ! 必殺! 無抵抗の極み!!」
秘奥義を受けた相手はどんな攻撃でも一切効かない無敵状態になるという技だ。
相手が人間だろうと魔物だろうと関係なく発動できる!
「くっ! なぜだ! 何故そんな技を使う!」
ドッペルゲンガーは困惑していた。なぜならその秘奥義を受けたのはドッペルゲンガーだからだ。
だがしかし、ドッペルゲンガーが死ねば俺も死ぬ。
つまりこれは命懸けの攻撃なのだ!
「これで終わりだあああ!!」
俺は渾身の力を込めて、ドッペルゲンガーの心臓目掛けて剣を突き刺した!
「ぐっ」
しかしドッペルゲンガーに傷はつかなかった。なぜなら無抵抗の極みによって無敵になっていたからだ。
「なんでだよおおおお!!!」
こうして俺は死んだ。
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