1. 通常営業

 この世界では、たまに何かに憑りつかれてバケモノになってしまうヒトがいる。

 でも、それは専門外なのでお断り。

 浄化できる術士ヒトに頼まなきゃ。

 助けようがない。

「た、助けてください…」

「出来ません」

 門前払いする須貝に、ちょっと待てと言う代わりに服の裾を掴もうとして目測を誤り、掴み損ねた。

「あ…」

 したがって、須貝のケツを撫でてしまった。

 感じてしまった声が聞こえたのは、気のせいにする。

「なっ…何するんですかっ!」

「すまん…」

 振り返って俺を見る須貝の顔は、スゴく真っ赤だった…。

 気まずいが、いつもの声色で話を切り替える。

「バイトくん。営業妨害だから」

須貝すかいです」

 須貝は、武器屋ココのバイトくんでもある。

 可愛い外見とは似つかわしくない可愛げのない発言、毎度ありがとうございます。

志井しいさんこそ、お仕事する気あるんですか?」

 須貝の挑発的な眼差しに、お仕事モードのスイッチが入った。

「俺の専門ところは黒魔術だから、その案件は…」

 浄化を得意とする術士の居場所を教えたら、お客は少し安心した顔になった。

「ありがとうございましたっ」

「いえいえ、どういたしまして」

 バケモノからヒトに戻れる確率は低いのだが。

 俺が紹介した術士は、腕がいいからきっと助けるよ…。

「またのお越しを」

 営業スマイルでイライラしながら、お客を見送った後に、

「須貝、武器以外のお話も…」

 話しながら振り返ると、須貝は瞬時に俺を抱きかかえてチューをする。頬に。

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