第159話「え? 停学!?」
文化祭が終わり、体育祭も何事も無く終わった休み明け。
そろそろHRが始まる時間だというのに、浅井、池安、樽井は席にいなかった。
三人揃って欠席は珍しいなと思い、近くにいる優愛に声をかけたオタク君。
「あれ、浅井たちは?」
「三日間の停学だってさ」
「え? 停学!?」
仲良くサボリかと思いきや、まさかの返事にオタク君は驚きの声を上げる。
「なんで!?」
当然の疑問をオタク君が口にすると、クラスメイトたちが集まり話題に参加し始める。
オタク君たちが高校に入学し一年半。その間に停学や退学になった生徒の話というのは一度も耳にした事がない。
これは同じ学年に限らず、他の学年でも、その手の話題は聞かない。
それくらい珍しい事なのだ。
それだけ珍しい事が起こったので、話はオタク君たちのクラスだけにはとどまらない。
廊下側を見て見ると、チラチラと教室を見に来る生徒がいるくらいである。
とはいえ、いくら停学が珍しい事とはいえ、全校生徒の話題になるほどかと言われればそうではない。
停学理由は、彼らが伝説の花火に関わった結果という話にまで発展したために、どんな奴がやったのか一目見て見ようとオタク君のクラスに他のクラスの生徒が足を運んでいるのだ。
当然、停学になっているのだから一目見ることは出来ないのだが。
クラスメイトが口々に浅井たちが停学になった理由を語る。
教室の外から「停学になった奴ってどんな奴なの?」と他のクラスの生徒が会話に参加しようとすると、廊下にいた他のクラスの生徒たちも次々と話題に参加しようとし、状況はカオスになっている。
中には空席となった浅井たちの席を、スマホで写真を撮ったりする者もいるほどだ。
そんなカオスな状況も、始業を告げるチャイムと、オタク君のクラスの担任教師の一喝により、蜘蛛の子を散らすかのように去っていく。
「あー、もう知ってると思うけど、浅井、池安、樽井は諸事情により停学になった。くれぐれも馬鹿な真似は慎むように」
詳しい理由は説明せず、淡々と三人が停学になった事だけを告げると、何事もなかったかのようにHRを始める担任教師。
HRが終わり、一時限目の授業が終わると、クラスの話題はまたもや浅井たちの停学で持ち切りになる。
下手に説明をして模倣犯が出ないようにという配慮だったが、隠されれば逆に気になってしまうのは仕方がない事である。
噂に尾ひれがついたりして、話がやや大きくなったものの、その程度で済んだのは幸いだろう。
もし浅井たちが尺玉などの、本格的な花火を打ち上げようものなら、警察が出動し、消防が出動し、三日間の停学などと生ぬるい処置で済まなかったのだろうから。
そんな話題も、昼休みになる頃には落ち着き、放課後にはもう話している生徒がいないくらいに落ち着いていた。
放課後の第2文芸部。
オタク君、優愛、リコ、委員長が揃って第2文芸部のドアを開けると、オタク君の姿を見てチョバムが声をかける。
「小田倉殿、冬コミフェの当落発表の日が決まったでござるよ!」
浅井たちの話題を少しでも聞かれるとか思っていたオタク君たちだが、チョバムもエンジンもそっちのけでコミフェの話題一色である。
今回のコミフェ会場は、普段使われる有明の会場よりもかなり小さいために、普段よりもサークル参加の当選率が低くなっている。
しかも、開催地がいつもと違うという物珍しさ故に、記念参加が増えている。
オタク特有の早口でそう説明するチョバムとエンジン。
何も質問をしていないのに、その後もチョバムとエンジンの説明は続いていく。語りたくて仕方がないのだろう。
同じく語りたくて仕方のないめちゃ美が、早口でチョバムとエンジンの話に加わる。
完全にオタク君たちは蚊帳の外である。
「どうでも良いけど、赤点とか取ったら年末も補習があるからコミフェどころじゃなくなるけど、大丈夫?」
オタク君の一言で、チョバム、エンジン、めちゃ美の時が止まる。
ついでに優愛の時も止まったのは言うまでもない。
そして迎えた冬コミフェ当落発表日。
「第2文芸部、冬コミフェ当選したでござる!!」
サークル『第2文芸部』は、冬コミフェのサークル参加に当選した。
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