4 【ちゅうりん】~【ちょうけつ】

 困った。

 朝から早速辞書を開いたのだが、はっきりとした食べ物が見当たらない。とりあえず当てはまりそうなものを言ってみる。

「釣果」

 かなり怪しかったが、目の前に魚が現れた。サバだ。

「腸」

 これはほぼ無理だと思っていたが、何と目の前にホルモン焼きが現れた。

 結構融通が利くようである。



本日の辞書めし

・焼きサバのラーユかけ

・ホルモンの金庫鍋煮込み



 食事をとりながら、ある可能性について考えていた。底魚がアンコウになったり腸がホルモンになったりというのは、俺の側の問題なのではないか? 俺は今まで食べたことがあるので、底魚と言えばアンコウだし腸ならホルモンを思い浮かべる。納豆も紙の箱よりも藁に入ったものの方が好みだ。

 つまり、俺が食えると思うものなら辞書は出してくれるのでは? もちろん思うだけなら「クルーザーが食える」などと無茶なことも言えてしまうけど、そこまでできるとは思えない。ただ、ある程度は何とか出来るのではないか?

 どうせこのまま何もしなければ、俺はこの島で命尽きてしまうだろう。すでに二週間ほどになるが、船も飛行機も全く通らない。この魔法の辞書が手に入ったのだから、試せることは何でも試すべきではないか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る