推しは多ければ多いほど楽しいに決まってるじゃないか!?

シヅカ

『ある人物の推し活』

 推し活というものがある。


 不思議な響きの言葉だが言い得て妙だと思った。


 人の数だけ推しはいるし、それは明日への活力に繋がる活動だ。


 推し、つまりは好きなものを指す。


 好きなものに関わる方法は多種多様。

 

 アイドルやバンドにミュージシャンのライブに行くのも推し活。


 役者のドラマや映画に演劇を見るのも推し活。

 

 漫画や小説を読んだりアニメを見たりゲームをするのも推し活。

 

 スポーツを観戦したり、その競技に携わる選手を応援しに行くのも推し活である。


 推しの数だけ推し活は存在する。数えたらきりがない。


 その中には多趣味な人も居る。

 

 何を隠そう、そういう私が多趣味で推し活をしている。

 

 漫画や小説にアニメやゲームもそうだがやはり個人的に肌に合っているのは、


(凄いな、当時でこんな技術があったなんて。)


 美術館や博物館を巡ることだ。


 学生時代の授業の影響もあって展覧会があれば可能性な範囲で鑑賞しに行ってしまうし、調べものをするために都内の巨大図書館に行って大量の資料を読み漁ることもある。


 展示された作品を通じて時代背景に触れたり、出土した日用品などを眺めては当時の生活を思い描く。これがなかなか楽しい。


 仕事などの嫌な思いを忘れさせてくれるし、現実に立ち向かう活力を与えてくれる。推し活をした記憶は貴重な経験だし、代え難い存在だ。


 別の推し活で出会った仲間達と「楽しかった」という気持ちを共有出来るのも最大の利点だ。


 しかし多趣味だとどうしても切り離せないのは「お金」である。


(うーん、買ってしまった。)


 今回鑑賞しに来た展覧会の物販コーナーで予想外の散財をしてしまった。


 決まって購入するのは図録一冊とクリアファイル数枚である。


 だが、開催前の告知で知った魅力的で印象的過ぎるグッズが自身の琴線をジャンジャカ掻き鳴らしたのだ。

 

 SNSで話題になっていたのでつい手に取ってしまい、気付けばバッグチャームやコインポーチなどをカゴに入れてレジに向かっていた。


 しかも普段利用しない音声ガイドにまで手を出してしまった。好きな声優さんが担当しているのだから、今回ばかりはさすがに仕方無い。


 いつも思うが推しの力は侮れない。


 推し活には体力が要るので、いつの間にか筋トレが欠かせなくなっていた。


 きっかけは些細なものであっても今まで知らなかった世界を知るのはワクワクするし、作り手の熱意がこもった作品に触れるのは楽しい。知らない人と感動を共有出来るのも推し活ならではである。


 日々の潤いは大事だ。負の感情で自身の心身が渇いてしまったら元もこもない。


(楽しかったなぁ。)


 そして毎度のことだが展覧会が催されていた建物から出ると後ろ髪を引かれてしまう。


 この楽しい気持ちをずっと維持したいが立ち止まるわけにはいかない。現実に戻らなくてはならないからだ。


(帰りたくないけど帰らなきゃなぁ。)


 次の推し活のためにも労働は欠かせない。だから、この憂いをグッズのマスコットをもふもふしながら図録を読んで晴らすことにする。


 私は帰ることを決意すると、ずっしりした推し活で得た喜びの重みを噛み締めて帰路についた。

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