機械仕掛けのコウノトリ 26
私は夫の表情を見ながら率直に思いを伝える。その際も夫は何も変わらなかった。
「うん。それはあるよね。明美は母親になるわけだし。子供をゲームのように加工していくような感覚は僕でも抵抗感を感じるくらいだからね」
夫は苦笑いをして喉をさすった。そして、水を一口飲んでからまた話し始めた。
「でも、想像していたものよりも悪くはないと僕は感じたかな」
夫は視線を上げ、何もないはずの個室の壁を見ながら話を続ける。私も夫の感じた先のことを聞いてみたかった。
「僕としてはもっと…何か面影すら残らないほどに子供のことをカスタマイズして、何かロボットのようにしてしまうものと思っていたけれど、できることはあくまでも才能の種を与えることで、その開花には僕たち親が大事だと知れた。それなら何というか私たちが子供と共にいる意味があるように思えた」
夫は私と同じことを考えていた。それを知ることができただけでも、私は大きな安心を得ることができた。
「うん。私も本当にそれを思った。私たちの子供がちゃんと私たちの子供だと思えるということには何だかとても安心感を持てた」
私が答えると夫はうんうんと確かめるように首を縦に振っていた。流れていた穏やかな緊張感は消えて、私たちは親としての暖かさをこの個室に広げているように感じた。
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