第28話 猫は空気を読んだ

 僕達のやり直しの結婚式当日。



「ふんっ。私の見立てで間違いなかっただろう」


 祖父のことは好きだし、尊敬もしているが、勝ち誇って言われるのが腹立たしい。


「さっさと幸せを享受してきなさい」


 僕達の幸せを願ってくれているのはわかるけど、腹立たしい。


 祖父が強引なところも、それでだいたいいつも上手くいくところも、わかっていても腹立たしい。


「はい。僕は幸せになりますし、アシーナのことも今度こそ幸せにしますので、お祖父様はご安心を!」


 両親の代わりに僕を送り出してくれた事には、たくさんの感謝をしていた。



 二度目の結婚式ということにはなるのだけど、療養のため式を挙げられなかった僕とアシーナが改めて、執り行うといった体で今日を迎えた。


 大聖堂の最前列の左手に、リゼの膝の上に座ったキティがいる。


 反対側の最前列にはアンディ王子が参列してくれている。


 祖父もそこにいる。


 王家からはとてつもない迷惑をかけたからと、たくさんのお祝いの品をいただいた。


 余談だが、アシーナのお店にアンディ王太子殿下を始めとした主要6ヶ国の王子が集まって溜まり場にしているのはどうにかしてほしい。


 僕だって毎日通えるわけではないのに、代わる代わるアシーナの店に王子達が集まっているんだ。


 気が気でない。


 隣に腕を組んで並ぶアシーナを見る。


 こんなに綺麗な女性が僕のお嫁さんだなんて、本当に信じられない。


 式が進行し、初めての指輪交換が終わると、彼女の薬指を見ていつまでもニヤニヤしてしまっていた。


 その日の夜は、アシーナの希望もあって、披露宴は行わなかったから、いつも通りの時間に僕達は寝室を訪れていた。


 僕とアシーナの間には、いつも通りにキティがいてくれる。


 キティはベッドの真ん中で一度僕達を見上げて、交互に視線を向けてくると、音もなく床に降りて扉の方へと向かう。


 木製の扉の横に設置されたキティ用の出入り口から出て行くと、トコトコと廊下を歩いて行く。


 こんな時間にどこに行くのかとアシーナと追いかけると、


「あら、キティ。どうしたの?」


 リゼの足元にすりすりとしていた。


 リゼがこっちを見た。


「ああ。わかりました。貴女って、本当にとってもお利口さんなのね。キティ、今日は私と寝ましょう。こんな日のために特製クッションを用意していたの」


 ひょいとリゼに抱き上げられたキティは、僕達を残して去っていく。


 猫に気を使われたのかな?


 まさかとは思うけど、アシーナに視線を向ける。


 彼女はこれからの事を察したのか、俯いて耳まで赤くしていた。


 こんな彼女を見るのは何度目だろうか。


 今夜彼女を独占できる事を、キティに感謝しなければならない。


「……戻ろうか」


「……はい」


 僕が左手を差し出すと、アシーナはその手を握ってきた。


 僕達二人は、手を繋いで部屋へと戻っていた。











 完。













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 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


 


 







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お久しぶりです旦那様。そろそろ離婚ですか? 奏千歌 @omoteneko999

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