夢を叶える男【第1話 序章】

カンダミライ

第1話 序章

 「ねぇ知ってる??夢を叶えてくれるってサイトの話。」


 「知ってる知ってる!なんか~サイトに自分の叶えたい夢を登録すると叶えてくれるんでしょ?でもあれってなんか怪しいやつなんじゃないの?」


 「それがね、実際私の友達の友達が、それでモデルになれたんだって。すごくない?」


 「え~すごいじゃん!なら私も登録しとこっかな。」

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あなたの夢を叶えます

夢実現応援サービス 夢物語


「あなたの夢は何ですか??」


 子どもの頃は思い付くまま、いくらでも答えられたこの質問、大人になった今、あなたならどう答えますか?

 わたしたちは大人になって現実を知り、自分の可能性に蓋をしてしまうことで、こどもの頃思い描いていた大きな夢からどんどん遠ざかっています。

 大金持ちになって、ハワイに別荘を建てたい。

 白馬の王子様に迎えにきて欲しい。

 映画監督になって、自分で映画を作りたい。


 あなたが一度は捨ててしまった夢を弊社が拾い、全力で実現に向けたお手伝いをさせて頂きます。もう一度、弊社と一緒に夢を見ませんか?


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 ある日曜日、僕はいつものように、布団の上でゴロゴロしながら携帯をいじっていると、ふとこんな記事を見つけた。なんだか宗教っぽいし、胡散臭いなとは思ったが、どうせ暇だし、面白半分で登録してみようと思った。お試し無料というのだから、厚意に甘えたって罰はあたらないだろう。


 僕は現在34歳、小さな広告会社に勤めている。彼女いない歴=年齢という公式にもすっかり慣れてしまい、もはやなんの危機感も感じなくなってしまった。


 自分で言うのもなんだが、僕は別に容姿が特別醜いということはない。平均的な日本人の顔だし、おしゃれにもそこそこ気を遣っている。まあ確かに前歯は人より出ているし、体型はぽっちゃりしているという自覚はある。


 それでも自分に彼女ができないのは、小さい頃に味わった、女という性に対するトラウマのせいだと思っている。僕はこれまで、心の底から女性を愛せたことがない。もちろん気になった女性はこれまで何人かいたが、過去のトラウマのこともあり、どうしても積極的になることができない。


 「この人のためなら全てを捧げてもいい」なんてのは、ゲツクの中だけの台詞であって、僕の辞書には載っていない。もちろん、そういう恋愛を望まないわけではない。


 サイトの案内に従い、氏名、年齢、学歴、現在の仕事など、ひと通り当たり障りのない内容を入力していく。最後に叶えたい夢を入力して、新規の登録を終えた。後は2~3日以内に事務局から電話がかかってくる仕組みだ。本当はメールか電話か選べたのだが、メールだと迷惑メールとして見逃してしまいそうなので、電話してもらうことにした。 広告会社に勤めてはいるが、未だアナログ人間の僕には電話の方が有り難かった。


 半信半疑だったが、登録から2日後に事務局から電話があり、詳しい内容を打ち合わせるために実際に会って話をすることになった。

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