原石の宝庫

尊ろ字

人◯ゲーム

ピチャン、ピチャ


水溜りを踏んだ音が、辺りに木霊する



仄暗い森の中、私は独り歩き回る

迷い込んでしまったのだ


『どうして、こんなことに…なったんだか』



“おにごっこ”なんてもう疲れた


斬りかかられた右腕から、血がボタボタと通って来た地面に流れている

これじゃあ居場所を教えているようなものじゃないか




「やっぱりこんなとこにおったかぁ」

少し色気を孕んだ声が、無音な周囲によく響く


居場所がバレた

もう逃げられない

私はここで死ぬのか


血の匂いに、もっと言えば人間の血に敏感な狼というものは、鼻がよく利くし足も速い

そして…随分とご執心なこった



数日前までは憧れの対象であった優しい教師の顔はもうない

目の前に居るのは、ただ欲望に忠実な、垂らした涎を啜っている標的だけだ



「逃げんかったら痛くはせんであげたのになぁ

ほんま、悪い子やな♡」


腰が抜け、すぐ後ろにあった木に凭れかかる

もう、無理だ



意識を飛ばす一瞬の前に、「いただきます」という甘い声と、首元の神経に牙が刺さるような感覚がしていた

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