原石の宝庫
尊ろ字
人◯ゲーム
ピチャン、ピチャ
水溜りを踏んだ音が、辺りに木霊する
仄暗い森の中、私は独り歩き回る
迷い込んでしまったのだ
『どうして、こんなことに…なったんだか』
“おにごっこ”なんてもう疲れた
斬りかかられた右腕から、血がボタボタと通って来た地面に流れている
これじゃあ居場所を教えているようなものじゃないか
「やっぱりこんなとこにおったかぁ」
少し色気を孕んだ声が、無音な周囲によく響く
居場所がバレた
もう逃げられない
私はここで死ぬのか
血の匂いに、もっと言えば人間の血に敏感な狼というものは、鼻がよく利くし足も速い
そして…随分とご執心なこった
数日前までは憧れの対象であった優しい教師の顔はもうない
目の前に居るのは、ただ欲望に忠実な、垂らした涎を啜っている標的だけだ
「逃げんかったら痛くはせんであげたのになぁ
ほんま、悪い子やな♡」
腰が抜け、すぐ後ろにあった木に凭れかかる
もう、無理だ
意識を飛ばす一瞬の前に、「いただきます」という甘い声と、首元の神経に牙が刺さるような感覚がしていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます