チエコ先生とキクちゃんの水平思考クイズ【３３】呪いのブラジャー【なずみのホラー便 第１２１弾】

呪いのブラジャー

【問題】

　魔女の末裔である彩加（あやか）さんは、微々たるものではありますが魔法を使うことができました。

　彼女は自身の叔母さんが経営するランジェリーショップに勤めていましたが、接客スキルはなかなかのもので評判の良い店員さんでした。

　ですが、彩加さんがブラジャーに”とある魔法”をかけていたことが、叔母さんに露見してしまったのです。

　彩加さんがブラジャーにかけた魔法が原因のクレームは一件もありませんでしたが、同じく魔女の末裔である叔母さんには感じ取ることができたのでしょう。

　解雇になったのは当然のこと、涙目の叔母さんは彩加さんに詰め寄ってきました。

「私は、女性たちが少しでも幸せな気持ちになればと思って素敵なランジェリーを販売していたのよ！　それなのに、あなたは自分の僻みや劣等感からブラジャーにあんな魔法を……いいえ、”呪い”をかけるなんて！！　あなたは魔女でいる資格なんてないわ！！！」

　さて、彩加さんはブラジャーにどんな呪いをかけたんでしょうか？

【質問と解答】

キクちゃん　：　魔女って怖くて悪者ってイメージがあったんですが、彩加さんの叔母さんは真っ当な人なんですね。ちょっとイメージ変わりました。でも、彩加さんはブラジャーにどんな呪いをかけたんだろう？　……彩加さんは、女性たちがブラジャーをつけたら、肌が痒くなったり、かぶれたりといった皮膚疾患を引き起こす呪いをかけたんでしょうか？

チエコ先生　：　NO。仮にそうなら、女性客から「この店で購入したブラジャーをつけたら、肌が痒くなったんですけど……」って、クレームが来ていたはずよ。

キクちゃん　：　……そうですね。問題文中にも「彩加さんがブラジャーにかけた魔法が原因のクレームは一件もありませんでした」とありましたね。……うーん、ブラジャーって、乳房だけじゃなくて心臓も守っているものですよね。まさか、ブラジャーをつけた女性たちが、心臓の病気にかかったり、心臓発作を起こしたりといった呪いだったのでしょうか？　亡くなってしまったなら、クレームをつけたくてもつけられないですし。

チエコ先生　：　NO。でも、彩加さんより力が強く、遥かに性質の悪い魔女ならそんな呪いをかけていたでしょうね。でも、彩加さんは病気にしたり、命を奪うまではやってはならないと、一応のブレーキはかかっていたみたいよ。でも、それとは別に洒落にならない呪いをかけていたの。彩加さんが何が原因で呪いをかけていたのか、問題文をよく読み直してみて。

キクちゃん　：　問題文中には「自分の僻みや劣等感から」とありますね。彩加さんは、素敵なランジェリーを買いに来る女性たちに対して、そういった感情を抱いていたんですよね。……彩加さんは素敵なランジェリーを身につけてみたくても、「どうせ、私なんかがこんな……」って思ってしまうような……つまり、あまり綺麗ではない人だったんでしょうか？

チエコ先生　：　人の審美観は様々で正解はないものだけど、その質問に関しては先生はNOだと思うわ。

キクちゃん　：　となりますと……ランジェリーって女性自身のためのものでもありますけど、オトナな話、パートナーの男性と盛り上がりたい時の演出にもなると思います。彩加さんにはパートナーがいなくて……だから、勝負下着を買いに来る女性たちに僻みや劣等感を抱いてしまったんでしょうか？

チエコ先生　：　NO。彩加さんにもパートナー……つまり、彼氏さんはいたわ。

キクちゃん　：　彼氏さんもいたんですか？　それなら、なおさら、僻みや劣等感を抱く理由が分かりませんね。

チエコ先生　：　悩んでいるキクちゃんに、大ヒントをあげるわね。彼氏さんに言われた、たった一言が彩加さんがブラジャーに呪いをかける引き金となったのよ。初めてのベッドインの時、彼氏さんは悪気なく彩加さんに言ったの。「お前の”それ”、ブラジャーつけてる意味あンの(笑)」ってね。

キクちゃん　：　……！！！　信じられない！　なんてことを言うんですか？！　デリカシーがないにも程があります。何より彩加さん自身が一番気にしていることに違いないのに、女性の体のことをあれこれ言うなんて最低です。……となると、彩加さんは胸が小さいことに悩んでいて、彼氏さんに言われたその一言がついに引き金となり、ブラジャーをつけた人の胸が小さくなる呪いをかけていたんですか？

チエコ先生　：YES。正解よ。ブラジャーをつけた女性客も、肌が痒くなったり、かぶれたりといった症状ならランジェリーショップに訴え出ていたはずよ。でも、胸のサイズが目に見えて小さくなってしまっても、睡眠や食生活、運動の影響、または加齢やストレスで体のサイズが変わってしまったんだと……まさかブラジャーそのものに魔女の呪いがかけられていたとは夢にも思わなかったんでしょうね。

キクちゃん　：　彼氏さんの無神経にも程がある一言が、彩加さんを”人々に害をなす魔女”に変えてしまったんですね。でも、よくよく考えてみますと、まずは彩加さん自身の胸を大きくする魔法は使えなかったんでしょうか？　謎に包まれた領域にいる人たちの掟や裁量は、分からないことだらけですね。

（完）