マンションを買う
「昨日の亮はどうでした」
「は、はい」
いきなり昨夜の話をしてくる絵里子に
智子は目いっぱい虚勢をはって笑った。
「私・・・もう松平さんとは・・・」
智子は絵里子の冷静な態度が怖かった。
「智子さん、亮の事が好き?」
「はい・・・」
智子はうつむいたままで返事をした。
「もし亮と別れろと言われたら別れられる?」
絵里子がいきなり智子に辛辣な質問をした。
「えっ!い、嫌です」
「そうよね。私も嫌よ。
たくさんの優秀な男性を見てきた私が
惚れる素敵な男性なんだもの」
「はい、私も」
「素直ね。仲良くしましょう」
絵里子は笑って智子に握手を求めた。
「あのう、絢香ちゃんて・・・」
絢香と楽しそうに遊んでいる亮を見て不思議になった。
「亮の子って思っている?」
「いいえ」
日本に帰って来たばかりの亮に
子供が居るとは思ってもいなかった。
「ううふ」
「私、絵里子さんにもっときつい
事言われると思っていました」
「亮は発展途上の男だから、
誰も亮を独占してはいけないと思うの
私も、あなたも」
「はい・・・」
「亮はきっと大物になるわよ」
「私もそう思います」
智子は亮の実績と昨日のプレゼンを見て
営業マンの資質があるのがわかっていた。
「それじゃあ、松平君はやめましょうね。
みんな彼を『りょう』と呼んでいるわ」
「はい、そうします。私も『さとこ』って呼んでください」
智子はそう言うと急に亮と親しくなったような気がした。
そこに箱に入ったケーキが置かれた。
「お母さんにお土産に持って
行ってください。おとといのお詫びに」
「ありがとう、妹も母も喜びます」
智子は普段でも食べたくても
食べられないル・フルールのケーキを家への
お土産にくれた亮の気遣いに感激した。
~~~~~~
智子が外泊したので先に帰ると
絵里子が小声で聞いた。
「おとといのお詫びって何?」
「智子さんが同僚にホテルに
連れ込まれそうになってそれを
妨害して代わりに僕が智子さんの
家に送り届けた訳です」
「じゃあ、亮のせいじゃないでしょう」
「ええ、彼女全く記憶がなくて・・・」
「亮が悪者に・・・」
「はい」
「全くお人よしなんだから・・・」
「あはは」
亮は笑ってごまかした。
亮と絵里子は智子と別れ夕食の
材料を買って勝どきの部屋に帰った。
「今日は僕が料理を作ります、
絢香の好きなオムライス」
「ありがとう」
「プレゼントがあるんです。僕が作ったものです」
絵里子がケースを開けると
ネックレスが入っていた。
「素敵!」
絵里子は立ち上がって喜んだ。
「亮、素敵なデザイン。大丈夫」
絵里子は亮のお金の心配をした。
「大丈夫です。ニューヨークでダイヤモンドを
買ってコツコツと作りました。
帰国をしたら渡そうと思って」
「ねえ、亮ってどうしてそう言う性格なの、
色々なお金持ちを見てきたけど
手作りの物は初めてだわ」
「そうですか?でも初めて会った
時からあなたに憧れていました」
「私があなたを縛り付けちゃったみたい、
ごめんなさい」
「いいえ、アメリカでは結構楽しみましたから、
それに絢香を見たから。
銀座のクラブのママが妊娠って
風当たりが強かったんじゃないですか?」
「大丈夫だったわ、着物のお陰で
臨月までばれなかったから」
「一人で出産寂しかったでしょう」
「うふふ、この子がお腹に宿った
時から私は一人じゃなかったのよ」
「母親は強いですね」
亮はバッグからプレスチックの
薬瓶を取り出した。
「実はこの漢方薬、
飲むフェロモン剤と精力剤しかも
自分の体臭と合わせたから
4年もかかって作りました。
そのおかげで僕はあちらで女性にもてました」
「亮、私本当に媚薬の効果で
私が好きになったと思う」
「はい」
「バカ」
絵里子は亮に抱き付いて亮にキスをした。
「ああ、私も」
二人を見ていた絢香が亮に抱き付いてキスをした。
「確かに、あなたクラッとする香りはするけど、
精神的な事は関係無いからね」
「ありがとう、女性用も作りました、絵里子さん用に」
亮は茶色の瓶を渡した。
「ありがとう、でも・・・」
絵里子は礼を言ったがあまり信用はしていなかった。
「はい、体臭を媚香に変える薬で一人一人匂いが
違うために
調香しなくちゃいけないんです」
「ありがとう、好きよ亮」
「ところで、話は大原さんの件に戻りますけど」
「はい」
「まず大原さんの同期で内村と
関係があった女性を探してもらいます。
そしてその女性と僕が接触して
内村の秘密を探ります」
「うんうん」
「絵里子さんが内村と接触して
もらいます。絵里子さんの方からも
内村の情報を取り出してください。
その秘密が暴けた時に次の作戦を考えましょう」
絵里子のマンションに泊まった翌朝の日曜日
ジョギングから帰った亮が明るく絵里子に言った。
「絵里子さん、帰ります」
「うん、何処へ行くの?」
「原宿です」
「お買い物?」
絵里子は若者の街、
原宿と聞いて微笑んで亮に聞いた。
「食事です」
「誰と?」
「看護師の直子さんです」
「いいなあ、絢香のベビーシッターを
頼めるか聞いてみる」
二人が行ったのは原宿の
パンケーキ店カフェ・ライラだった。
そこは若い女性で行列が出来ていて
一時間待ちだった。
「亮あなた甘党だったの?
二日連続でスイーツを食べるなんて」
「はい、たぶん」
たっぷりのフルーツが乗った
パンケーキを亮と絵里子が食べた。
「うふふ。かわいいそれで、
それで私への頼みは?」
絵里子は紅茶を呑みながら笑っていた。
「あはは、絵里子さん、今直子さんが来ます」
「いいわよ」
「はい、実は池田直子さんは医院長の
愛人をさせられて苦しんでいます
「そんなにひどいの?解ったわ、
会ってみて良い子だったら協力するわ」
「そして、この智子さんの作戦に
直子さんの力が必要なのです」
「そうなの?」
~~~~~
10分ほどで直子が来た。
「直子さん、こちらが絵里子さんです」
「はじめまして池田直子です」
「はじめまして黒崎絵里子です」
二人とも笑顔で挨拶をしている
姿を見て亮はホッとした。
「あなたも、亮の事が?」
絵里子が直子に聞くと直子も
恥ずかしがらずに即答した。
「はい、大好きです」
直子の顔がとても幸せそうな
顔をすると絵里子が微笑んだ。
「直子さんお住まいはこの近く?」
「いいえ、桜新町です。病院が池尻なので」
「直子さんその後は?」
亮は直子の状況を聞いた。
「今の院長だけど、ずっと関係を拒んでいるわ」
「大丈夫?何かされないかしら?」
絵里子はその男が直子に対して
強引に何かをするのではないかと
危惧していた。
「ええ、もうそろそろ危ないかも。
もう言い訳できないし」
直子は絵里子の方を向いて答えた。
「元々私がこんな身体になったのは
元の院長のせいなの」
「病院の院長ですか?」
亮は病院の院長のような人格者が
そんな事をする訳が無いと思っていて
驚いていた。
「新人看護師で勤めると無理やり」
「ええっ!そうなの」
絵里子は驚くと直子は
その経緯を話し始めた。
「それから、院長が大学へ戻る私を
今の院長や事務長に払い下げられて、
アルバイトの先生に宿直の晩や
VIPの入院患者の相手をさせられたわ」
「最悪ですね」
亮は直子が気の毒でしょうがなかった。
「ええ、病院を辞めたくても、行く先々の
病院に連絡するって言われているし
ああ、好きな人に抱かれたい」
そう言って直子は泣き出した。
~~~~~~
「大丈夫ですか?」
「院長と事務長が部屋の鍵を持って
いるから、真夜中でも突然来るの
そろそろ危ないわ」
「そう、それは怖いわね。
今日は帰らないでホテルに泊まった方が良いかも
明日の仕事は?」
絵里子が直子に聞くと震えた声で答えた。
「お昼からです。その時辞表を出します」
直子は亮に付いていくことに決めた。
「直子さんすぐ病院を辞めてください」
亮は直子の肩を優しく叩いて言った。
「でも・・・」
「大丈夫です行き先の病院を
探してあります。新橋の病院です」
「本当?」
「はい、院長の手の出せないところへ行きましょう」
亮が優しく言うと直子は絵里子の顔を見て聞いた。
「絵里子さん、本当に良いの?」
「良いわよ、仲良くしましょうね、うふふ」
絵里子は笑顔で直子に言った。
「ホテルは日比谷のPホテルに泊まってください」
「では、さっそく転職の祝いをしましょうか」
「そうね」
三人は銀座に戻って祝杯を挙げた。
~~~~~
亮は家に帰って秀樹に相談をした。
「お父さん、一人暮らしをしようと思っています」
「うん、ここじゃ彼女を連れ込めないな」
「そ、そういう訳じゃ・・・」
「まあいい、どこへ住みたいんだ?」
「渋谷、駐車場付き」
「あはは、贅沢だな、ちょっと待ってくれ」
秀樹はスマフォを見た。
「新築のタワーマンションの部屋が
空いているぞ、高いけどな」
「えっ!今の給料で払えますか?」
「いや、難しいだろう
タワーマンションの分譲だから」
「いくらですか?」
「25坪で家具付き2億1千万円だ、
フロントにはコンシェルジュいて
その代わりコンビニ、レストラン、バー
屋上では
バーベキューもできてもちろん
プール付きジムそれに
ペットも飼える管理費はお前の給料だな」
「そうか・・・買いますよしょうがない、
ただしドルですよ」
「ああ、構わない。それに値段が
上がるから心配するなよ。
しかしよくそんなにお金を持っているな」
「ええと子供の頃から株でコツコツと
お金を貯めて、アメリカに行って株で
一挙に儲けてましてナチュラルグリルの
役員報酬とナチュラルグリルの上場でも
もっと」
「それは俺も儲けさせてもらった」
「それよりどうしてそんな
高い物件を持っているんですか?」
「税金の関係だし儲かるからだよ」
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