第39話 行き止まりの洞窟で爆炎を放ったらとんでもないことになるよね
道はなだらかな下り道になっていて、くねくねしてはいるが、真っすぐ降りれるようになっていた。
よほどの自信があるのか、中には全く人がいない。
その時。
『お待ちください!』
サラマくんが僕達の前を塞ぐ。
「サラマくん? どうしたの?」
『はい。この先から【瘴気】が感じられます。主様』
「瘴気?」
初めて聞く言葉だけど、その言葉に思い当たる節は大いにある。
多くのネットゲームで採用していた【瘴気】は、魔族達の空気みたいなもので、人間――――というか地上に住んでいる全ての生き物に害悪をもたらす。
一番多いのは、魔人化などがあげられる。
『はっ。【瘴気】を沢山吸うと異常状態に陥ります』
「異常状態か……やっぱり、魔人化とか?」
『いえ』
え? 違うの?
「人が瘴気を吸ったらどうなるの?」
『はっ、それは――――――
裸になります」
…………。
…………。
ベシッ!
「は? 裸?」
『はい。何故か人間が吸うと裸になり、変な踊りを踊ります』
ベシッ!
「ど、どういうことだってばよ!」
ちょっとエ〇そうなので、変な言葉が出る。
ちょっとだけ妹に吸わせてみたい衝動が…………。
ベシッ!
ベシッ!
「サラマくん。ここに入るにはどうしたらいい?」
『はっ。わたくしのスキル【炎神加護】があれば、無事に通れます』
スキル【炎神加護】って名前がかっこいいな。
「ではよろしく」
『はっ! スキル【炎神加護】!』
僕と妹の身体に淡い赤色の光が灯る。
『こちらのスキルは、外部からの状態異常を無効にする効果があります』
「凄い! ありがとう、サラマくん!」
妹の貞操を守ってくれてありがとう。
…………。
あれ? ハリセンが飛んでこない。
ふと後ろを見たら妹が恥ずかしそうにハリセンを下げている。
「さあ、奥に進もう!」
「う、うん!」
シルフィくんの【風陣連係】で更に下に潜っていく。
随分と地下に降りると、そこには広い洞窟が広がっていて、禍々しい雰囲気が漂っており、所々に大きなタンクが見える。
タンクの真下には針のような、小さな出口があり、そこから白い粉が降りてくる。
ゆっくりではあるが、砂時計のようにゆっくり、でも確実に増えていく。
「間違いなく、あれが工場だね」
「うん! お兄ちゃん、速く壊そう?」
「そうだな。一気に壊してしまうか」
「どうやって壊すの?」
これだけ広範囲の工場を壊すとなると、広範囲の攻撃で壊す方が楽なはずだ。
僕は妹の背中にくっ付いて、妹の肩かた顔を出しているコドラちゃんを撫でる。
「ここは広範囲攻撃が得意なコドラちゃんに任せよう」
「そうね! コドラちゃん? 悪~い人達の倉庫を燃やしてくれる?」
きゅきゅきゅいー!
元気よく返事するコドラちゃん。
ヘンス町で召喚してからずっと妹にべったりなコドラちゃんは、意外と妹の言う事は素直に聞く。
飲み物を持って来てくれたりと、時折妹が女王様化しないか心配になるほどだ。
「やっちゃって! コドラファイア~!」
きゅい~!
妹の指差し指示と共に、思いっきり息を吸うコドラちゃん。
そして――――――
ぎゅいー!
地下の広い洞窟に爆炎が放たれ、爆音を鳴り響かせながら、工場を次々飲み込んでいく。
飲み込んでいくのはいいんだけど、炎がどんどん広がり、瞬く間に洞窟全体に広がる。
…………。
…………。
どんどん広がる炎が止む事なく、更に勢いを増して最奥に辿り着く。
そこから勢いが減る事はなく、天井まで覆ってい舞った爆炎は――――――
「ま、まずい! グノーくん! お願い!」
「えっ!? お兄ちゃん!?」
『かしこまりました』
僕のイメージをグノーくんに念じると、伝わったかのようでグノーくんが姿を変え、僕と妹を包み込んだ。
土の壁でまん丸になった僕達。
「エリー! 歯を食いしばって!」
「えっ!? う、うん!」
3、2、1…………来る!
洞窟に広がり続けた爆炎は広がる場所を失い、洞窟の入口に強烈な速度で噴射する。
僕達はその爆炎に乗っかり、降りてきた道をグノーくんが作ってくれた土ボールの中でやり過ごすという事だ。
そ、それにしても早すぎる!
重力が凄すぎて、まともに喋る事も、顔を動かす事も出来ない!
ジェットコースターに乗った気分だよ! 乗った事ないけど!
ちらっと見た妹も苦しそうに堪えていた。
コドラちゃんは優しく妹の背中に回り、土部分でクッションになってあげている。
…………。
…………。
慎ましい妹の大丈夫かな?
ベシッ!
よくこんな重力でハリセンが振れたな。
◇
爆炎は勢いをそのままに僕達の乗せたグノーくんの土ボールを地上に吐き出した。
土ボールの中でもその凄まじい速度に耳鳴りがするほど轟音で周りが全く聞こえない。
初めて乗るジェットコースターがこんな形になるとは。
既に転がっていないので、地上に出たのは間違いないが、この感覚…………もしかして、空に打ちあがっている?
数十秒後、僕達を襲っていた重力が緩み始める。
段々と速度が落ちていく。
…………。
「って事は! このまま落下するってことでしょう!?」
「お兄ちゃん!」
気付けば妹の手を引いて、グノーくんにボールを開放するように伝えた上部を開いて貰う。
周りにはまだ爆炎の
「シルフィくん!」
『お任せあれ~!』
急いでシルフィに僕達に風魔法を掛けて貰う。
ふわりと身体が軽くなり、ゆっくり地上に降りて行く中、妹と周りの幻想的な光景に見入ってしまう。
晴天の青空に花火が散ったような小さな炎が舞っている中を僕達はゆっくりと地上に降りたのだった。
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