第24話 僕と契約して最強冒険者になってよ
僕達とアインさん達は一緒にヘンス町に帰還した。
僕も知らなかった事なんだけど、各精霊達は中級精霊になるとそれぞれの特性が現れるそうだ。
例えば、水精霊のウンディちゃんは【支援魔法】が使えるようになるとかね。
土精霊のグノーくんは【身体変形】が使えるので、馬車の形に変わって貰い、ウルフくんに引いて貰う。
これで召喚獣馬車の完成だ。
グノーくんには申し訳ないと思ってたけど、僕達を乗せる事が嬉しいとの事で、うちの召喚獣達は優しいなと思う。
僕達を襲った連中の亡骸は現在、僕のアイテムボックスの中に入れてある。
あのまま放置する訳にもいかないし、さらにこのまま衛兵に渡す事になっているからだ。
その理由としては――――。
ヘンス町に着いてすぐに入口に立っていた衛兵にアインさんが事情を説明する。
衛兵さんに案内された部屋の中で、冒険者達の亡骸を取り出す。
一体だけ焼死体だったので、衛兵さんが顔をしかめる。
衛兵長という方が水色の水晶を持ってやってきた。
「正当防衛だった事を証明させて貰う。こちらの【審判の水晶】に手をかざしてもらうぞ?」
「はい」
そう答えたアインさんは、水晶に手をかざす。
すると綺麗な水色の光が水晶から溢れる。
それから一人ずつ手をかざして、水色の光を確認する。
今度は僕と妹の番になって、僕と妹も水色の光だった。
「よし、全員正当防衛を認める。彼らの家に罪を与えるのか?」
「いえ、それには及びません」
「そうか。分かった」
その場所を後にして、僕達はそのままシリウスさんの魔道具屋に向かった。
「ホロ兄ちゃん! エリー姉ちゃん! おかえりなさい!」
シュナちゃんが嬉しそうに出迎えてくれる。
「「ただいま~」」
僕達と一緒に入って来たアインさん達も、慣れたように案内されてテーブルに座る。
慣れた手付きで、シュナちゃんと妹がお茶を運ぶ。
テーブルには僕とアインさん達五人。
カウンターにシリウスさんとシュナちゃんと妹がこちら見守ってる構図だ。
「アインさん。先程の水晶はなんですか?」
「あれは世界に定まっている【世界法】に違法しているかどうかを調べる【審判の水晶】というモノで、例えば、犯罪を起こした場合、自然に【罪】が認めらてしまうんだよ。あの水晶が赤く光ったモノは少なくとも【犯罪者】として見られてしまうんだ」
へぇ……そんな水晶があるんだね?
「ただ、あれを所構わず置いているわけではない。今回のように【正当防衛】なのかを判断するときによく用いられるんだ」
「正当防衛……」
それが何を意味するか分かるように、シリウスさんが妹に小さい声で何かを聞くと、頷いて返していた。
「もし正当防衛が認められた場合、慰謝料が発生する。ただし、それは彼らの家族に取りたてる事になるんだ」
「あ……だから家に罪を与えるとかって聞かれたんですね?」
「そうだ。正直な話、彼らの家族も手を焼いていた……なのに、彼らの尻ぬぐいを家族にさせるのは忍びないと思ってね。勝手に決めてすまなかったね」
「いいえ、僕に聞かれたとしても、それは拒否したはずですから」
アインさん達は安堵したように笑みを浮かべた。
だって……悪いのは本人なのに、家族に罪があるとは思えないからな。
まぁ、日本の感覚だとちゃんと育てろよと思うとこもあるけど、僕自身がそもそもちゃんと育てられていないので、あまり大声で言えないのよね。
まあ、今思えばあの歳まで生かしてくれてありがとうくらいは思えるようになった。もう遅いけどな。
「シリウスさん。例の物はあとどれくらい掛かりますか?」
「量が量なので、あと二週間くらい掛かりそうだよ」
「分かりました。アインさん。僕と一つ契約を交わしませんか?」
「ん? 僕達とかい? ホロくんにはとてもお世話になっているから、出来る事なら言って欲しい」
今回の悪い冒険者達の件で、僕と妹がヘンス町を離れた後、シリウスさんやシュナちゃんにもその悪の手が及ぶのが懸念点だった。
アインさん達の誠実さを見て、彼らになら任せられると思ったので、あの懸念点を解消したいと思う。
「僕と契約して最強冒険者になってください!」
「「「「「ええええ!?」」」」」
「「「ええええ!?」」」
アインさん達もシリウスさん達も大きく驚く。
店内にみんなの声が響き渡った。
その日はゆっくり休む日にして、次の日。
「これからみなさんには
「「「「「はいっ!」」」」」
「では、まずシリウスさん!」
「か、かしこまりました!」
呼ばれたシリウスさんが五人にそれぞれ【アイテムボックス・大】を施術してあげる。
在庫が丁度五個あって良かった。
「次は、シュナちゃん!」
「かしこまりました~」
可愛く返事したシュナちゃんが、バケットにパンや果実水をたくさん入ったモノを持ってくる。
続いて妹も運んでくる。
「十日分の食料になりますので、無駄使いはしないようにしてください!」
「「「「「はいっ!」」」」」
食料をそれぞれのアイテムボックスにしまう。
「ではこれからウンディちゃんと一緒に十日間オークの森に潜って来なさい!」
「「「「「は、はいっ!」」」」」
うむ! みんな良い顔になった!
ちょっと顔が白いけど、きっとレベルアップが楽しみで仕方ないと思う!
これからアインさん達は十日間、ウンディちゃんのバフスキルの下で、寝る時間以外はずっと狩りを続けて貰う事にしたのだ。
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