第19話 この町の冒険者もチンピラしかいないね

 ◆ヘンズ町の豪華な屋敷◆


「何だと!? 飛竜の山からワイバーンが全然見えない!?」


「は、はい…………ワイバーン達が全く出てきません……」


「…………ワイバーンが全滅している!? わざわざワイバーンを育てて、ワイバーンを定期的に狩れるようにした飛竜の山がようやく完成したのに……一体どこの馬鹿が殲滅をしたというのだ! というか、あの数のワイバーンをどうやったら殲滅出来るんだ!」


「グサリ男爵様……お言葉ですが……ワイバーンが育ち過ぎて被害が増えてまして…………寧ろ、いなくなってくれた方が…………」


「くっ! た、たしかにそうだが! それにしてもあのワイバーンが消えたってことは、その素材・・が出回るはずだ! あのワイバーンを放ったのはわしだ! だからその素材の一定量を貰う権利があるのじゃ!」


「…………」


「きっとワイバーンの素材を大量に売ってるやつがいるはずだ! そやつを探してこい!」


「か、かしこまりました」


 男爵は悔しそうに拳を握りしめて、窓の外を睨んだ。




 ◇




「お兄ちゃん、これからどうするの?」


「ん~もうワイバーンもいないし、稼ぎの良いモンスターもいなさそうだからな~アイテムボックスも買ったし、エリーは何処か行きたい場所はある?」


 待ってましたと言わんばかりに、目を輝かせる妹。


「ここから東に行った所に観光名所があるの!」


「よし、行こう!」


「やった~!」


 別に目的もないし、行きたい所に行きたいように行けばいいよね。


 それにしても最近の妹は、活き活きしていて、とても良い。


 まだヘンス町に暫く滞在する予定だったりするので、ヘンス町を楽しむ予定だ。


「そう言えば、エリーが以前欲しがっていた物から見に行こうか」


「うん! お兄ちゃんのおかげで【アイテムボックス】があるから、これからの旅のために道具が欲しい!」


「おう~まだまだ金貨は残ってるから行こうか、その前に銀貨に両替しないと……」




 早速冒険者ギルドにやってきて、両替に向かう。


 ここの冒険者ギルドも雰囲気はあまりよくないね。


 うちの妹を見て舌なめずりをしている冒険者が見える。


 田舎でくすぶっている冒険者って、どうしてみんなこういう人種ばかりかね?


 僕が金貨三枚を取り出して両替をすると、それに視線が向かれるのを感じる。


 これは…………来そうだな。




 両替を終え、銀貨三百枚を貰って冒険者ギルドを後にする。


 案の定、僕達を追ってくる気配を感じる。


 妹に小さく路地裏に行くと伝えると、心配そうに僕を見つめるので、頭を撫でてあげる。


 うちの超強化した精霊なら、そこら辺の冒険者に負けないと思う。


 中級精霊が30倍強くなっているからね…………30倍…………。



 裏路地に入ると、予想通り僕達の前後に数人の男が道を防いだ。


「おいおい、兄ちゃん~少し待って貰おうか」


「はいはい。何でしょうか?」


「有り金全部出しな、それとその隣のおん――――ガハッ!」


 あれ?


 特に命令していないのに、僕達を囲んでいた冒険者達が道の中に埋もれる。


 グノーくんが僕の前に現る。


『貴様ら、我が主に無礼を働くとは、許さんぞ!』


「「「「ひいい!」」」」


 えっと……。


「我が主が編み出した最強の罰を与える」


 …………。


 土に埋もれた冒険者達がそれぞれ顔を正面に向く。


「な、何をする気だ!」


『貴様らはこれから一日中――――』


「グノーくん! ごめん! 僕達は先に行くね?」


『はっ! ここはお任せください!』


 妹を連れて急いでその場を後にする。


 さすがにあの地獄絵図を妹に見せるわけには……。


 妹はずっとジト目で僕を見つめていた。




 大通りを進み、鍛冶屋にやって来た。


「エリー、鍛冶屋に付いたよ」


「…………」


 ずっとジト目で僕を見ているけど、見てみぬふりをしよう。


「おお~、この鍋とかフライパンもよくない?」


「…………」


「ほら、エリーが好きそうなカップもあるよ、コドラちゃんみたいな絵柄で可愛くない?」


 きゅいー!


 いいぞ、コドラちゃん!


 このまま妹の機嫌を戻すのだ!


「はあ、お兄ちゃん、あの人達は無事なんだよね?」


「う、うん! そんなに簡単に命を奪ったりはしないよ」


「はぁ、まあいっか」


 やっと機嫌が直った妹は、鍛冶屋で色々家事用の調理器具を見回る。


「ん~どれもパッとしないのに高いね」


 長年家事をやってくれた妹だからこそ、目利きが利くみたい。


 そんなに大声で話した訳ではないけど、店主が不満の表情を浮かべて睨みつけてくる。


「エリー、目当てがないんなら次行こう~」


 ちょっと半強制的に店を後にする。


「え!? お兄ちゃん? まだ調理器具買ってないよ!?」


「は~い、次々~」


 最後まで睨んでいる店主に妹は全く気付かなかった。




 ◇




 次の日の冒険者ギルド。


「お、おい、これは一体どういう事だ……」


 ヘンス町の冒険者ギルドマスターは目の前に広がっている光景に目を疑う。


 冒険者ギルドの待合室でいつも目をギラギラしながら、獲物を狙っていた冒険者達だった。はずなのに。


 現在冒険者ギルド内では、男冒険者共がお互いに手を繋いで見つめ合ったりしていて、ギラギラがキラキラに変わっていたからである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る