恋する蛾

きらめく瞳にすいよせられ

みにくい羽をはばたかせる

わたしは蛾。

まっすぐあなたのもとへいく

かがやくあなたをおとずれる

わたしは蛾。

擬態ばかりする曲がり者。


もし舞えるとしたら、どこへゆこう

もし踊れるとしたら、どこへゆこう


ひかる髪にふれたくて

もろい足ですがりつく

わたしは蛾。

よろこびのようなあなたはほほえむ

さなしみがとわにさったかのように

わたしは蛾。

潜むことしかできない日陰者。


もし笑えるとしたら、だれにあおう

もし話せるとしたら、だれにあおう

 

 わたしは蛾。

  鱗粉はふきとばされ

    ひとりとりのこされた

            わたしは蛾。

    あなたの姿を見失った

  あわれな蛾。


もしまたあなたに、あえるなら

矢羽のような枯葉をひろげましょう

にあわない七色のはなばたけで

わたしは秋風をふかせましょう

春夏を愛するあなたは、こごえ

ちいさな甲虫たちは、あざわらい

気高い鳥たちは、おおきなくちをあけ

あなたはわたしを恥じるでしょう

けれどもわたしは

擬態をせず

潜まず

気にせず

わたしのすべてを差し出すでしょう

わたしは蛾。

まっすぐあなたにおとずれる

わたしは蛾。

あなたにあこがれる一匹の、蛾。

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