チート級にハイスペックでイケメンの友人が、天使のように可愛い娘ちゃんを溺愛しすぎている件について。
百崎千鶴
その1.いい子だから泣かないよ
最愛の妻が死んだ。
俺と、たった一人の娘を残して。
今までの人生で唯一、恋愛感情が芽生えた女であり、昔お世話になった恩人の一人娘――それが、妻の
彼女とは小学校からの幼馴染だったが、昔から病弱で医者にも「30歳まで生きられたらラッキーだろう」と言われるレベル。ほとんど外には出られず、肌は雪のように真っ白だった。子供好きで花にも動物にも優しく、常に穏やかな性格で時々抜けているところもあり……心の底から愛していた。
(翠……)
不意に、ちょいちょいと服のはしを引っ張られる。そちらに目をやると、小さな手で服の袖を握りしめ、俺を見上げる
「どうした? トイレか?」
「ねえ、ぱぱ……? まま、ねんねするの?」
当たり前だが、まだ5歳の優には何が起こっているのか理解できていない様子で、俺を映す大きな瞳は不安そうに揺れている。そんな優をそっと抱き上げ、翠の眠る棺桶を見せた。
「優……ママとは、しばらくお別れだ。でも『さよなら』じゃない、また会える。だから……『また会おうね』って、ママに言ってくれるか? そうすれば、ママは安心して寝られる」
「うん……まま、またあおうね。おやすみなさい」
言い終えると同時に優を強く抱きしめると苦しそうな声を出し控えめに抵抗されたため、少し力を緩めてやる。すると、優は「ぱぱ、」と何か言いたげな顔で俺を見た。
「今度はどうした? 腹でも減ったか?」
「ううん。あのね、ぱぱ。ゆうね、いいこだからなかないよ。えらい?」
そう言って、目尻に涙を溜めたままぎこちなく笑う優。
「……ああ、偉い。きっと、ママもパパと同じことを思ってる」
「えへへ、よかった」
俺は……これから先何があろうとも、この子を必ず護ってみせると改めて誓った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます