遊び人とギロチン処刑台
早乙女ペルル
『首』
2012年 5月31日(木)
僕は今、処刑台に立っている。この話を読み始めた人には本当に申し訳ないのだけれど、僕はもう五分もしない内に死ぬ運命にある。「僕」という物語の「僕」という主人公兼語り手が死んでしまうので、この話は一話から最終回を迎えてしまうわけだ。しかし、折角この話を読んでくれているのなら、短い僕の余生物語を是非見ていただきたい。
「
僕は今更抵抗したり暴れたりしても意味が無いと分かっていたので執行人に言われた通りに首を置いた。今の時代ギロチンだなんて信じられない話だ。アニメやゲームではよく見たり聞いたりするのだけれど、実際に見てみるとその大きな刃は圧巻である。
◇
思えば短い人生だったなと思う。26歳という若い年齢で死ぬだなんて学生の時は考えてもいなかった。あの頃は長生きすることは無意味だとか、30歳くらいで死にたいとか思っていたのだけれど、いざ死ぬとなると不思議と死にたくない。もっと長生きしたい。そう思えてくるのであった。
「死刑囚、最後に言うことはあるか?」
最後に言うことと言われても、沢山ありすぎて迷ってしまう。なぜならこの世に未練しか残っていないのだから。結婚どころか童貞すら卒業していないし、親孝行もろくにしていない。子供の頃の夢であった世界一周旅行に関してはいつかしようと後回しにして結局日本から一歩も出ていない。こんなことになるくらいなら早い段階で親孝行も世界一周旅行も済ませておけばよかった―――――。(童貞はどうしようもないのだけれど。)
「おい、何も言わなくていいのか?何も言わないなら、死刑を執行するが。」
「ちょ、ちょっと待ってください。あのーえっと、あぁそうだ。考えていたんですよ。何にしようかなって。言いたいことがいっぱいあって選べな――――――――――」
最後の言葉が決まらないので時間稼ぎにダラダラと喋っていると、首を斬るための刃がものすごい速度で落ちてきた。そしてその刃は僕の首に当たる。
「ドスン」
鈍い音が響き渡った。視野がぐるぐると動き、酔って吐いてしまいそうだが、何とか吐くのを我慢した。と言っても、今となっては首だけだから吐くにも吐けないのだが、何となく現実逃避の為に、今体があるかのように考えてみたのだけれど、実際はやはり首だけである。今目の前に僕の体がある。まるで首がないマネキンを見ているようだ。
―――――――そう言っている間に、目の前は暗くなった。意識もどんどん遠くなっていくのが分かる。
こうして僕、根賀 凛は死んだ。
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