　婚約パーティーが中止となり、カミラたち家族は自宅に戻ってきた。家に着くと、帰りの馬車の中で無言だったカミラが口を開いた。

「お父様、お母様、この度は本当に申し訳ございませんでした！　家名に泥を塗り、家族に迷惑をかけたわたくしはどんな処罰でも受ける覚悟でおります」

　カミラは顔を真っ赤にして精一杯の謝罪をした。

「謝らなくて良い！　カミラ……私こそすまなかった。お前は席を立ちたいと何度も私に言っていた。それなのに私が無理に引き留めてしまったからあんなことになってしまった。婚約する娘の父親として、招待客に対してきちんと挨拶させることが一番大事なことだと思っていたのだ。本当にすまない」

　カミラの父親が目にうっすら涙を浮かべながらそう謝罪した。

　その姿を見てカミラも我慢していた涙が溢れてきた。

「わたくしが悪いのです。もっと真剣にお父様に伝えていたら。もっと我慢が出来ていたら。人前であんな恥ずべきことなどしなかったら。わたくし二度と婚約などいたしません」

　カミラとその家族は夜遅くまでお互いに謝罪を繰り返し、そしてお互いを慰めあった。

　後日、婚約は両家合意のもと正式に破棄された。

＊＊＊＊＊

　事件から数週間が経っていた。

「お父様、わたくし目標が出来ました！」

「なんだい？」

「わたくしが起こした悲劇を繰り返さないための研究をしたいと思っております」

「悲劇？」

「そうです。パーティー中に失禁しても大丈夫な方法を考えたいのです。既にいくつかの案があります」

「カミラ、もうそのことは忘れた方が良いのではないか？」

「いいえ、先ほども言った通り、あの悲劇を繰り返して欲しくないのです。みんなに幸せになって欲しいのです」

　カミラは父親に笑顔を見せた。父親は久しぶりに見る娘の笑顔に応援するべきなのだと素直に感じた。

「わかった。私に出来ることなら何でも言ってくれ」

「ありがとうございますお父様」

　カミラは父親の了承を受けて、悲劇を繰り返さないための開発を始めた。

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