寒月
天養2年(1145年)1月11日
こんにちは平重盛です。
平安時代っていうのは、いわゆる通い婚が当り前と思っていましたが、清盛パパと母さまは一緒に暮らしています。
不思議に思って母さまに尋ねてみると、
「そんなん、物語の中か、大貴族だけやでー。」
とのこと。
「え、じゃあ同居のほうが当り前ってこと?」
「あんな、通い婚の
頭をひねる。
「うーん。浮気しやすい?」
「それは
母さまのツッコミが入った。
「あのな。さっきも言うたけど、通い婚をしとるんは、大貴族のお姫様方や。そんなお姫様方にすり寄ってくる男どもいうたら、ほとんどはお姫様方より身分が低いか、金目当ての玉の輿狙いや。そんな男どもの家に同居してみい。確実に暮らしが悪うなるで。わざわざ実家を離れてまで男と同居する利点がまったく無いんや。そやから大貴族のお姫様方にしてみれば、通い婚のほうが圧倒的に都合がええんや。」
納得である。
「だから母さまは清盛パパと同居しているんだね。」
「んふふ。それだけが理由とちゃうでー。それはなー。」
母さまが、ぐっと顔を寄せてくる。
「愛の証やー。きゃっ。」
体をくねくねさせながら頬を染めている母さま。
見ているこっちが恥ずかしい。
ところが最近、清盛パパの様子がどうもおかしい。
はっきりとどこがという訳ではないが、いつもとは微妙に視線のやり方が違うとか、いつもより少し早足だとか、そう思ったら急に立ち止まったりだとか。
とにかく何かが違うのだ。
ピコンッ
選択Misson やり遂げられるのは1つだけだよ。
-Misson 清盛パパの身辺調査-
※先行取得:神隠しの書
-Misson 母さまを助けて基盛と遊ぼう-
いいタイミングでMissonが来ましたよ。
身辺調査させていただきます。
母さまごめんなさい。また今度、手伝うから。
先行取得した神隠しの書は、隠密スキルのようなものだ。
これで隠れながら清盛パパを追跡できるぞ。
清盛パパは日暮れに供1人を連れてそっと邸宅を出た。
今日は満月だ。
清盛パパの追跡は実に簡単だった。どうも周囲の人には僕の姿が見えていないらしい。
異空間を通りながら、もとの空間を覗いているという感覚だ。
着いた先は正五位下 平時信殿の邸宅。
中に入り、御簾の向こうの人物に
「時子どの」
と、清盛パパが言う声が聞こえた。
つまりは、この女性が二位尼、平時子か。
「なんだよ。通い婚で浮気じゃないかよ。」
脱力して近くの柱の陰でうずくまる。
母さまの優しい笑顔が思い浮かんだ。
「・・・帰ろう。」
満月に照らされながら帰る道は、冬らしく寒かった。
-Misson完了! 君の選択した人生は君だけのもの。だけど君の選択が人に影響することだってあるんだよっ-
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