幽霊お姉さんと始める同居生活〜世話の焼けるお姉さんは嫌ですか?〜
ふぃるめる
第1話 高校生×お姉さん
引越しが無事に終わって、アパート近くにあるコンビニで昼食を買ってきた。
さすがに、疲れて何か作ろうという気にはならなかったので多少の出費にはなってしまったのは仕方ないことだろう。
鍵を鍵穴に差し込んで扉を開ける。
「ただいまー」
家に誰もいるはずもないのに、いつもの癖で言ってしまう。
一人暮らしには、憧れもあったし不安もあった。
いざ、始めてみると静かで寂しいかもしれないな。
そんなことを考えていると、誰もいないはずなのに声が返ってきた。
「おかえり〜」
そして、部屋の奥からワンピースを来た女性がスリッパを履いてトタトタと歩いてくる。
年上のお姉さんって感じの人で、ロングの黒髪とスタイルの良い体が目を釘付けにさせた。
「あれ……俺、入る家を間違えた……?」
でも確かに、鍵を開けてから入った気がするんだよなぁ……。
とにかく一旦、部屋から出て状況を整理しよう。
「し、失礼しましたぁっ!」
慌てて、玄関から飛び出て部屋の番号を確認する。
303号室……だよな……俺の部屋で間違いないはずだ。
あらためてもう一度、玄関の扉を開け部屋に入る。
今度は、ただいまーなんて言わない。
なぜなら一人暮らしで、おかえり〜なんて帰ってくるはずないからだ。
しかし、そんな考えはすぐに覆された。
さっきのお姉さんがさっきと同じように出てきた。
「おかえり〜」
え、……確かに303号室だったよね?
「し、失礼しました」
再び玄関の外へ。
落ち着け高森和哉15歳―――――自分に言い聞かせて落ち着かせる。
表札には、303号室となっている。
えっと、これは3て読むんだよな……?
「あら、新しく引っ越してきた方?」
同じ階のアパートの住人らしき人に声をかけられる。
「あ、はい。高森と言います。よろしくお願い致します」
声をかけてくれたのは、見るからに大学生活エンジョイしてますって見た目の女性だ。
「えっと、君は高校生?」
「はい、この春から高校一年生になります」
俺は、田舎から出てきて地方の少しは大きい街の学校に進学することになったのだ。
「そっかぁ……懐かしいわぁ高校生の日々……」
何やらその女性は、感慨深いような声をあげて明後日の方向を見つめた。
「で、あの……申し訳ないんですけど、ここって303号室であってますよね?」
自分の目が段々信じれなくなってきたから、この人に聞いて確認しよう。
「あ、うん。303号室で合ってるよ」
この大学生?の人もそう言うんだから間違いなくここは303号室なのだろう。
「ありがとうございます」
「困った時は、頼ってくれていいからね?」
そう言い残してその人は、隣の部屋へと入っていってしまった。
俺も自分の部屋に入ろうか……。
部屋の中にいたお姉さんは、疲れているから幻覚、幻聴に違いない。
玄関扉を開けて靴を脱ぐ。
すると……トタトタと足音が聞こえてきた。
「おかえり〜」
ほらまたさっきのお姉さんだ。
何度も同じ光景を見てしまうあたり、よっぽど重篤な幻覚らしい。
さっさと飯食って寝よう。
俺がそう決めて無視を決め込むと、お姉さんは視界の端で頬を膨らませてむくれ顔になった。
「もう、どうしてお姉さんを無視するのっ!?」
え……なんかめっちゃコミュニケーション取ろうとしてくるんだけど……これも幻聴……?
無視したまま、コンビニで買ってきた食料の入ったレジ袋を手に提げ部屋の奥へと進む。
すると、今度は足に抱きついて離さない。
そのせいで動きが取れなくなってしまった。
「ちゃんと、お姉さんの顔を見るっ!」
はぁ……これは病院行った方が良さそうだ。
「ねぇぇぇぇ、なんか反応してよぉぉぉぉ」
今度は、泣きついてきた。
そんな時、着信音が鳴った。
なんかバイブレーションまでしてるし、すごいリアルな幻覚と幻聴だな。
「電話、鳴ってるよ?」
泣きついてきたお姉さんが、俺のズボンのポケットからスマホを取り出し手渡ししてくる。
相手は、親からだ。
「もしもし〜和哉?アパートの部屋はどう?」
確かに、母の声だ。
「今から昼食にしようかなってところだよ」
幻覚や幻聴に襲われてますなんて言った日には、心配させてしまうだろうから、そんなことは言わない。
「そう、今ねパパと調べたんだけど、そこの部屋ね、心理的瑕疵有りって大島〇るのサイトに書いてあったの」
しれっと、母親がとんでもないことを言う。
いや、部屋借りる前に調べとけよ……。
「ちゃんと下見に行って問題なさそうだから借りたんだけどね、ごめんね」
多分、見た目と家賃だけで判断したんだろうなぁ……。
ってちょっと待て……心理的瑕疵有り……?
ということは、事故物件じゃねぇか……。
自分の胸板に泣きついてきているお姉さんの方を向く。
つまり……このお姉さんは、幻覚じゃなくて幽霊……?
頭の理解が追いつかないほどに情報過多だ。
「もしもし〜和哉?黙っちゃってどうしたの?」
スピーカーの向こうから心配そうな母親の声がする。
「あ、いや問題無い。考え事をしていただけ」
「ならいいけど、何かヤバくなったら無理せず帰ってくるのよ?」
ヤバくなったらって何がどうヤバくなるんだよ……。
そこで母親は、電話切ったのか会話が終了する。
「えっと……お姉さん……?」
悪い雰囲気はしないし、幽霊だとしてもヤバい類ではないのかもしれない。
そう思って声をかけてみた。
「……やっと反応してくれた」
上目遣いにお姉さんが、俺を見上げる。
この幽霊、綺麗な顔してるよな……。
「えっと、とりあえず俺から離れてもらっていいですか?身動き取れないんで……」
もう母親からいきなりあんなことを言われて理解が追いつかないので考えるのはやめにした。
「え、あ……ごめん。その重かった?」
「いや、全くと言っていいほど質量を感じなかったです」
幽霊に質量は無いから、乗りかかられても重さなんて感じるはずも無かった。
「とりあえず、聞きたいこともあるのでご飯にしながら、お話しましょう」
腹が減っては戦は出来ぬってわけじゃないけど、とりあえず考えをまとめるために、お腹を満たしてからこの
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