534.ナス料理っていろいろある。シカ肉バーグ最高
サラダチキンをスライスして乗せたサラダ、小松菜と油揚げの煮浸し、切り干し大根、きんぴらごぼう、ナスの揚げ浸し、食べやすい大きさに切られたシカカツなど好物が並んでいる。シカ肉バーグはこれから焼いてくれるらしい。
もちろんだけど煮物以外は全て大皿なので食べ応えがある。
おっちゃんが、
「今回も昇平んとこのニワトリたちがシカを獲ってきてくれたぞ! かんぱーい!」
と音頭を取ってビールを飲んだ。
「っぷはーーーっ!」
この一口がめちゃくちゃうまいのだ。その後はすぐにごちそうを食べ始める。
桂木姉妹、山唐さんの奥さんも腰掛けて一口は飲んでいた。
「こーゆー宴会でも絶対飲ませてもらえないよねー」
桂木妹がぼやいていた。
「こういう時に飲んだらなあなあになっちゃうでしょ? 望まない時も飲まされることになるからだめなのよ」
桂木さんがちゃんとお姉さんしていた。やっぱ姉ちゃんなんだろうなと思った。(俺が何を言っているのかわからない)
「シカは脂身がなくてさっぱりしてるからね~」
おばさんがそう言いながらナスとジャガイモ、ピーマンを炒めた地三鮮を作ってきてくれた。これがまたうまいんだよな。俺も夏になると作るけど、うちでは素揚げしないからそれなりにしかならない。やっぱ野菜を素揚げするとコクが違う。
「野菜が本当においしいですねぇ」
相川さんが嬉しそうに言い、結城さんもうんうん頷いている。
「なんだなんだ若いモンが。肉食え肉! つーか肉が少ねえぞ!」
「これから大量にハンバーグを焼くのよ!」
おばさんがおっちゃんに反論していた。
「ハンバーグかよ」
「この時期のシカはミンチの方がいいわよ~」
「あー、そうかもなー」
秋本さんが頭を掻いた。
「なんでこの時期のシカはひき肉の方がいいのー?」
桂木妹が首を傾げた。秋本さんが苦笑した。
「んーとな、野生の動物は飼育されてるわけじゃないから、季節とか、何食ってるとかで味が変わるんだよ。冬が一番脂肪を蓄えててうまいんだ」
「へー、そうなんですねー」
桂木妹が目を丸くした。ハンバーグを頼んで正解だったみたいだ。
果たして、粗みじんのトマトを加えたトマトソースをかけたハンバーグが大量に出てきた。
「うわー! おいしそうです!」
俺は歓喜の声を上げた。
「おいしそう、じゃなくておいしいのよ! ちゃんと食べてね!」
「はいっ!」
少しごはんをもらってもりもり食べた。シカ肉バーグ最高! やっぱハンバーグにはごはんだよな~(俺は)
トマト味ってのがよかったのか、みんなももりもり食べていた。ちら、と見ると山唐さんの皿はすでに空で、縁側でうちのニワトリとトラネコをのんびりと眺めていた。そういえば山唐さんて生肉というかそれに近い肉しか食べないはずだ。でも料理は好きらしく、いろいろ作るとは聞いている。
山唐さんの奥さんは桂木姉妹、おばさんと共ににこにこしながらごはんを食べている。
「もー、こんなにごはんがおいしいと太っちゃいます~」
「山唐さん、料理上手でしょうに」
「真知子さんもすっごく料理上手ですよね!」
「あら、嬉しいこと言ってくれるじゃない?」
そんなことを女性陣が話している。
ビールを飲みながらあらかた食べ終えたところでクァーッ! とポチの鳴き声がした。どうやら足りないらしい。
「準備するから取りにきて~」
おばさんに言われて山唐さんも共に付いていく。
「あれ? トラ君もおかわりですか?」
「いえ、やることがないので付き合わせてください」
そう言って山唐さんは頭を掻いた。食べられる物の幅が狭まっているとたいへんだなと思った。おばさんから肉と野菜を入れたボウルを受け取り、ニワトリたちの餌を並べたビニールシートに置いていく。
肉はしっかり食べ切っていた。すんごい量を持ってきたと思ったのだがまだ食べるのか。メイもピイピイいいながら野菜をつついている。野菜はざく切りで出されているから大丈夫かなと思ったけど、けっこう平気で食べているみたいだ。
トラネコは半ば夢の中だった。
「あーあ、こんなに汚して……」
山唐さんは苦笑するとトラネコの口の周りを布で拭った。
「よく食べたなー。これで多分足りるか?」
ココッとユマが鳴いた。大丈夫と言っているみたいだったので任せることにして居間に戻った。また何かあれば呼んでくれればいい。
居間に戻るとみそ汁とごはんと漬物が出ていた。もちろん残りの料理もある。漬物も糠漬けがいっぱいだ。きゅうりの浅漬けもあった。
しかもいつのまにかナスとピーマンのみそ炒めもあった。こちらは和の炒め物というかんじである。またごはんが進んでしまう。
「うーん、入るかな」
「お米いっぱい炊いちゃったんだから食べてちょうだいよ~」
おばさんがにこにこしながら言う。
「全くこんなに料理作るからそうなるんだろーが!」
「今年はナスがいっぱい生るんだからしょうがないじゃないの~」
「ナス好きですよ」
「じゃあ明日持って帰ってちょうだい。今年は豊作でね~」
「ありがたくいただきます」
野菜もいただけてほくほくだ。さすがにおなかぽんぽこりんになってしまったが、女性陣は更に水羊羹も食べていた。さすがは女子の別腹。とてもかなわないなと苦笑したのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます