もったいないおばけ

平行宇宙

第1話

 「だめじゃないか、すすむ。ご飯を投げちゃ。」

 「だってぇ・・・」

 だって、臭いんだもん。

 すすむくんは、ご飯に出されたなっとうを見て思います。

 それに・・・・


 「鬼は外!福は内!」

 この前やった豆まきが楽しかったんだ。

 口を尖らせて、すすむくんは思いました。

 あのとき巻いたお豆より、このお豆はもっとすてき。

 ねばねば糸を引いて、投げてもくっついたり、びろーんと伸びたり。

 くさいのをお口に入れるより、ずっと楽しくっていい使い方だって、思うんだ。



 「あのね、すすむ。あのお豆は、キレイなシートの上に投げて、後で洗ってたべただろ。このお豆は投げちゃうともう食べられない。捨てちゃうしかないんだよ。お豆を加工して、たくさんの人が一生懸命作ったんだ。大事に食べないと『もったいないおばけ』がやって来て、連れていかれちゃうぞ。」

 パパは怖い顔と声でもったいないおばけになって言ったんだ。


 そんなの嘘だよ。

 もったいないおばけなんて、いないよね。

 そう思ったけど、僕はびくびく。

 本当にきちゃったらどうしよう。

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