文明の火

机カブトムシ

陳腐

ある日、原始人が道具を拾った。


それはボタンを押すだけで火が出る便利なものだった。




そこから彼らの生活は豊かになっていった。




便利な道具をもとに火は広まっていった。




食事で死ぬ者や寒さで死ぬものは減った。




夜に獣に襲われるものはいなくなった。




人口が増えすぎた人々は世界中に散らばっていった。




文明が発展していき、




やがて世界では火より便利な電気の光が用いられるようになった。




電気の力で世界から夜は消えた。




ある会社の大金持ちには一つの思い付きがあった。




文明の始まりであるとされる火を未来に届けることだ。




大金持ちはひたすらに頑丈で使いやすいライターを開発させた。




そのライターの強度を試すために高いビルの屋上から投げたが、


見つからなくなってしまった。




それから長い年月が流れ、


文明は滅んだ。




それから長い時が流れ地球の生物の中に原始人と言えるような知能のものが現れた。




ある日、原始人が道具を拾った。


それはボタンを押すだけで火が出る便利なものだった。




だが、原始人の生活は豊かにはならなかった。




他にもさまざまな頑丈な道具が拾われて使われていたからだ。




思ったより人は自分の発想が陳腐であることに気が付きにくいものだ。

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