どこかの神様の祈り

キノハタ

どこかの少女の嘆き

 雨がずっと降っている。


 自分が住んでいるマンションの屋上で私は曇る空をぼんやりと眺めていた。


 立ち入り禁止の看板を越えて、非常用の梯子を登って。


 貯水タンク以外何もない、その屋上で私は独りぼーっとしながら空を見ていた。


 雨に服を濡らされながら、なんとなく想い出す。


 子どもの頃見ていた夢を。


 マンガ家になりたいって想ってた。


 小説家もいいなって想ってた。


 写真も好きだったし、運動もそんなに嫌いじゃなかった。


 たくさんの成りたい何かが、私の目の前にはあったと想う。


 子どもの頃の夢と想像は艶やかで、いつか、十年も二十年もすれば、本当に自分は華やかな何かに。望んだ何かになっているものだと、無邪気に信じ込んでいた。


 でも、今、私の手の中に一体、何が残っているんだろう。


 今、私の描くものに価値をつける人は誰もいない。


 人と、まともに喋ることすらうまくできない。


 あげく、辛くて学校にも通えなくなって。


 一体、どこの誰が私のことを求めているんだろう。


 親の呆れた視線は何度も見てきた。


 先生の困ったような視線ももう慣れた。


 同級生の軽蔑したような視線ももう知らない。




 ―――年の離れた妹の悲しそうな視線だけは、未だに慣れない。




 もう、ダメだ。


 誰も私を必要としていない。


 いないほうがきっと、マシ。


 誰にとっても、私にとっても。


 ああ、ああ。





 ――――私の人生っていったい何だったんだろう。

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