イレーヌちゃんは、わたし(あやめ)をあいちゃんのところに連れて行く。

ヤッキムン

ロンドン

わたしはロンドンで生まれた。

ママとパパは、ロンドンで仕事をしていた。その時に、わたしは生まれた。


テムズ川沿いのアパートの、外階段をトントントンっと登ったら玄関がある。入って右側の窓際に置かれてる低いタンスの上に、ベビーベッドがあって、そこに寝ている。

ベビーカーで、テムズ川のほとりを散歩してたりすると、可愛いロンドンのお姉さんと、すれ違いざまに目が合って、おたがいに笑ってる。


大英博物館にママと行くために、大通りを渡ろうとしていたら、となりにフランス人の若い女の人が赤ちゃんを抱っこしてて、

「ロンドンの車は走るの激しいから、おたがいに渡るの大変ですねっ」て話しかけてきて、ママも

「大阪も走るの早いけど、みんなうまいこと渡ってますから、大丈夫ですよ!大阪もロンドンも、ピーターラビットのいるような土地ではないですからねぇ~」って答えてた。


ママは日本人。パパはアメリカ人。

なのでボクはハーフ。

ママは大阪の人で、大阪の高校を卒業して、大阪の百貨店に勤めていた。

パパはサンフランシスコから京都の大学に留学で来ていた。

たまたま、パパは大阪の百貨店で買い物をしていて、そこでママと出会った。

ママを一目見て、恋に落ちたらしい。

パパの一目惚れ。


それから、ふたりは付き合いはじめて、パパも就職して、結婚した。

そしてロンドン勤務になった。


ロンドンでも春になると、桜、咲いている。

日本からやってきた桜。

ロンドンの人たちも、みんな、桜、大好き。


それから、パリに行った。

パリで幼稚園に入って、イレーヌちゃんていう可愛い女の子とお友達になった。

イレーヌちゃんは、いつも「あやめちゃんのお嫁さんになるーっ!」て言ってくれている。

あっ、そうそう。ボクは、あやめ。文女と書いて、あやめ。

イレーヌちゃんとボクは、オルセー美術館に行って、カバネルさんと、ブーグローさんの、2つの「ヴィーナス誕生」の絵を見るのが好きで、いつも2人で走って観に行っている。

イレーヌちゃんは、ママは日本人で、パパはフランス人。だから、日本語も話せて、ボクとは、いつも日本語でしゃべってる。

セーヌ川の遊覧船に乗って、街並みをいっしょに眺めるのが好きだ。

セーヌ川沿いの公園には、白や黄色やピンクや紫などの色とりどりの花も咲いてて、イレーヌちゃんといっしょに、よくお散歩している。

小学校も、イレーヌちゃんといっしょに仲良く通った。3年生までパリの小学校に通ってたんだけど、4年生になる時に、ボクは愛媛県松山市の小学校に転校することになった。

パリの空港に、イレーヌちゃんはお見送りに来てくれて、ほっぺにチュッてしてくれた。

「わたしも日本大好きだから、そのうち日本に行くから待っててねーっ」

「うん!わかった!イレーヌちゃんの来る日を楽しみに待ってるね!」

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