SPOON配信者にインタビュー
暴れゴリラ
1人目 紅丸
第1回となる、今回紅丸さんに話を聞いた。
■ 紅丸誕生
紅 に丸と書いて「紅丸」と申します。
好きな物イケボ、タバコ、お酒、コーヒーが好きな一般人です。
名前だけでも覚えて帰って下さい。
こんな感じでどっすか?
という自己紹介や、
どうする? チャミスル
と言ったハートコメントは、
上記の通り、特に変わったことを言っている訳では無い。しかし言葉のイントネーションや感情表現で筆者を含め多くの人に好きと言わせる言葉に変える。彼女は配信者であり表現者だ。
2020年5月、彼女は「紅丸」になった。名前の由来は手元にあった、炎炎ノ消防隊という漫画の新門紅丸というキャラに由来する。
手元にマルボロがあったら私の名前はマルボロになっていたかもと彼女は言う。
彼女がなぜ卓越したトーク力とバランス感覚を得たか、それは今から約7年前の事だった。
当時はライブチャットも流行っており、その中で、とあるサイトに出会う。そのサイトの詳細は割愛させて頂くが、簡単に言うと、数百人が同時に喋ることが出来るシステムをものだったと言う。
紅丸を語る上で必要不可欠な言葉が1つある。
【承認欲求】である。
彼女は数百人のトークの猛者の中で上に居続けた。
タイミングよく面白いことを言う。それだけだと、難易度があやふやになるが、そこに数百人が同時に喋る権利を持つという条件が入ると、読者の皆様にも高い難易度が容易に想像できるだろう。
ましてや多くの人達が自分の承認欲求を満たしに喋りに来ている。そこで培ったタイミングとワードのセンスと言うものが今日のspoonライフにも生かされているのだろう。
大抵の場合どんなものにも飽きや、中弛みは訪れる。常勝を誇っていてもそれは同じ事だ。
ある日そのコミュニティの中で、何の気無しに発した言葉、それが新たなる世界への入り口だった。
「ねえ、なんか最近面白い遊びない?」
「あ、それならspoonってアプリ知ってます?」
そんな何気ない1行の会話から『紅丸』は誕生した。同時にそのチャットのなかから2人がspoonを始めたと言う。1人は紅丸、そしてもう1人は、今も紅丸が、お父さんと慕う『HIRO𝕾⃝𝖑𝖚𝖒』さんだ。
配信を始めてからは、特に何も無く進んでいった。ガチ恋三銃士などと呼称される人達も生まれたが、さらりとあしらって楽しいspoonライフを過ごしていた。
今までのグループチャットとは違うのは、自分が枠主、つまり自分の話を聞きに来ていると言う事、そこで彼女の承認欲求は満たされた。更に嬉しい誤算もあり、またspoonという沼にハマったという。
【女に嫌われる女】紅丸本人は現実の自分をこう表現した。しかしspoonでは違った。むしろ男性より女性に好かれる事が多くなった。人生で初の快感であった。
■ 相方
配信を始めてから数ヶ月ほど経ち、自らの喋りへの自信は核心へと変わっていっていた。
女性配信者の中で私はかなり喋れている。まだ負けたと思うともない。それが当時の紅丸だった。
そんなある日、新しい“面白い”を探し枠周りをしていると、以前から少し気になっていた枠にたどり着く。まだ空も明るい時間なのに枠のタイトルには「風俗嬢(SM嬢)が喋る枠」なのだ。
正直少し疑ったところもある。そう言う枠タイでも、職種でもつまらねー奴は一杯いたからだ。
軽く聞いてみるかと、入った枠で紅丸は、ハードな一撃を喰らった。(へー・・あれ?面白い! この枠、この女めちゃくちゃおもしろい! ちょっと待って・・・あっ!負けた)
初めて配信者(女性)に明確な敗北を感じた瞬間だった。それがのちの紅丸唯一の相方と呼ばれる、『トカゲの鱗』だった
この女のようにはなれない、でも彼女も私にはなれない。トカゲはトカゲ、私は私と言う目線で見ることが出来た。
幸いな事にその後はトカゲも紅丸を面白いと思ったのか、トカゲも紅丸の枠に来ていてお互いの枠に通いあって、お互いに好きな枠主という関係性になっていた。そんなある日の事である。
昔からの付き合いの中でspoonに残っていたHIROが、「お前らコラボで話してみろよ」と言ったのだ。
紅丸は困った。実世界でコミュニケーション能力が乏しく、しかも自分が当時唯一負けたと思う配信者なのだ。そんな心配を胸にしていると、コラボにトカゲが上がってきた。話した瞬間、枠は終わっていた。面白すぎたのだ。掛け合いは噛み合い過ぎるくらいに噛み合い。楽しい時間はあっという間。気付けば枠は終わっていた。
相方を見つけ、spoonで初めてのアイドルユニット(笑)を組む。言わずと知れた【VAGINA】だ。小陰唇担当トカゲ、大陰唇担当紅丸からなるユニットである。
余談だが、この2人の絡みがまた見れるなら、いやトカゲが復活するなら、自分のファンがいなくなってもいい。アカウントをささげてもいいと言うリスナーも未だにいるそうだ。コラボ配信とソロ配信もわけて配信スタイルを固めていき、更に紅丸は調子を上げていった。
2021 1月
そんな順風満帆な配信生活を過ごしていた、紅丸や【VAGINA 】に異変が起こった。
それは突然のトカゲの引退ツイートだった。コラボ枠をしようとLINEでもやりとりしていた数日後
なんの相談も前触れもなくツイートされた内容は「実は、彼氏がいました。彼氏を大切にしたいからspoonをやめます」
付き合いの浅い人達はそのツイートを見て祝福した。それはそうだ。おめでたい事だから。引退は悲しいけど、祝いたいのがファンやネットの気やすさと言うものだ。しかし紅丸を始め、深くトカゲと関わってきた、人は皆思った。「んな訳あるか! あいつごりっごりのレズだぞ」
去年から、店を辞めたい。ノルマがきつい。仕事としては事務方や裏方に回りたいと言う話をしているけど、店に利益をもたらしたら裏方に回ってプレイヤーを上がらせてくれると言う話、その為のノルマが、年内で終わりそうで来年からはもっと配信の時間を作れそうだと言う話を聞いていた。
何よりあいつと付き合いが長いわけでは無いけど、こんな不義理に居なくならないし、こんなつまらない引退の仕方はしない。それは自分と同じ、エンタメジャンキーである相方への確信だった。
ツイートの文章もトカゲの文体ではないし、何よりなぜ過去のツイートが消されてこの引退ツイートだけになっているのかもわからない。spoonのアカウントも残ったままである(2022年3月現在)
できる範囲で調べることはしたが、紅丸やその近しい人達がトカゲにたどり着くことは無かった。2022年3月現在もトカゲの推しマをつけている人は多数いて、その人達は今もトカゲを待っている。
トカゲが居なくなっても配信を長く休止することはしなかった。それはそもそもの考え方である私は私と言う根幹があったこともそうだが。
周りのざわつきや、よく知らない人が、寿引退をおめでたい気持ちで思っているなか、真実は、わからないが自分の感じた違和感を周りのざわついている人達にも伝えたい気持ちもあったからだ。それが“相方"の役目だと言わんばかりの意思でもあった。
筆者も紅丸と出会って相方探し枠と言うものを見ているが、どう言う気持ちでやっていたかと聞くと、もちろん期待はしている。でもそれは50%で、後の半分はあんなおもしれえ女にはもう会えないと言う、諦めの気持ちだと言う。
■ それから
現在の紅丸の枠の在り方について聞いてみた。
コラボとソロ枠で考えていることはもちろん違うと彼女は言う。
コラボ枠は凸待ちを除き、上がってくる人はある程度選んでいる。その基準は、枠主とコラボ主の個人通話にならない事。コラボ者と枠主がリスナーの方を向いて喋っているかと言う事だと言う。同じ方向を向いて喋れることを大切にしているという。
紅丸は自枠のことを紅丸はスプーンで1番下品(クスリ、現実的な下ネタ。障がい者も平等)な枠と表している。
来るもの拒まず、去るもの追わず。刺すやつは刺される覚悟を持つ枠でいたいと言う。心がけていることは男女比や年齢層で常に話す内容を変える。(客層でその都度変えている)そしてリスナーと配信者は対等であり、どちらが偉いと言うことはないと言うこと。
筆者が生きたfanの作り方(アクティブ)を紅丸に聞いたところ人間に興味を持つことという解答が帰ってきた。
本当は興味無くても、前に話した内容を覚えてたりして、そのリスナーの得意な話題が流れで出た時にはその話を振る。そうしてリスナー側の承認欲求も満たしたいからだと。枠に30人いたとしたら、30分の1としてお構いするのでは無くその中で1分の1として扱う。
何故か?それは自分がそうされたら嬉しいから。自分がされて嫌な事をしない。自分がされて嬉しい事をすると言う、対人関係に置いてシンプルだが難しい事を彼女は心がけているようだった。
そんな紅丸がリスナーに求める事があると言う。
我々はふざけた大人である。節度を保ちつつギリギリを攻めてほしい。毎回気持ちはチキンレースでいてほしい。滑ることもあればコメントでもコラボでも、事故ることもある。
その結果ギリギリのラインを超えて超えて落ちても、またチャレンジしてほしい。
なんとも厳しく優しいコメントである。
そして仲良くなった後の距離感を保ってほしい。ベースはあくまでspoonだからリスナー同士で配信者じゃ無い人が、リスナーを掻っ攫うハイエナ行為。枠主の定期枠の時間にたまたまとは言えど併せてゲームをやろうと誘う行為を悲しく思っていると言う。裏で喧嘩したり、紅丸枠で出会った男女が痴情のもつれので元々のリスナーが枠に来れなくなるなど。憂は多々あると言う。
そして、筆者の心に残ったもう一つは、紅丸になろうとしないでほしい。あなたは、あなただからあなたらしくいてほしいと言う言葉だった。このコラムで何度か書いてきた、私は私と言う紅丸の考え方の根幹がここにあり、そしてそう言った行動をリスナーがしているのが、悲しいのだろうと言うのが伝わってきた。
最後にこれからどうありたいかと、聞いた所、
言いたい事を言える枠であり続けたい。
うちのリスナーは配信者が多く来るから、
そういう配信者の愚痴を聞く口の固い、スナックのママでありたい。
そしてその枠にいる聞き専のリスナーにもその話題を共有してほしい。
確かに紅丸の枠では、普段上品な配信をする人が、どぎつい下ネタを言ったりするのも見かける。それはまるで紅丸と言う会員制の毒吐きクラブを楽しむ姿に見える。もちろんそこであった事をよそやSNSで漏らす様なつまらない馬鹿は今のところ私は見たことはない。
蛇足かもしれないが、紅丸からリスナーへのメッセージを預かっているので、こちらを皆様と共有して、このインタビューコラムを終わりたいと思う。
「僕の好きな言葉に、推しは推せるうちに推せという言葉があります。これは僕の枠だけでなく配信全体で言えることで、みんなが今のままで居られるかと言ったらそれは不可能で、いつか配信との関わり方は変わっていきます。だからSPOONで生きるみんなとは一期一会を大切にしていきたいし、して欲しいなと思っています。
これを聞いたあなたはどうする?」
チャミスルと答えてしまったあなた達は既に彼女に惹かれているのだろう。
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