この世界に魔法と言う物は必要なのか?

神結みみみ

第Ⅰ章 この世界に現れた魔法と言う物

                序章プロローグ 


 20XX年。発展した世界に異常な出来事が起きた。それはネット漫画などで頭の上に数字が発生する事と同様、唐突に起きた。人の手から炎が出たり水が出たり、怪我したところが一瞬で治癒されたりと摩訶不思議なことばかりが発生した。共通点はしたことが現実で起きたこと。


 そこである一人の青年が、こう定義付けた。


「自分たちは、何らかの理由で【】というものを授かったのだろう」と。

 

 なんともオタクらしい考え方だが、【魔力】なしでは手から火や水を出すのは不可能。瞬間治療なんてもっと不可能に近い。次第に人類は、この出来事は【魔力】のせいとなり、落ち着いた。

 そして気付く。【魔力】というものがどれほどにも愚かな代物だと…。


 研究が進み魔術というものの大体が解ってきた。どうやったら魔術は発動するのか、魔術にはどんなことでもできるのか、不可解な現象を生み出した魔術の謎が解けていく。解けていくにつれて、魔術に仕掛けられた色々なものが解明されていく。

 そもそも【魔力】というのは、攻撃魔法などを発射させる言わば【引き金トリガー】のようなものであり、【魔力】のみでは攻撃などできない。魔法展開術式+魔力色素+魔力で対物理魔法攻撃フィジカルアタックマジック対精神攻撃魔術メンタルアタックマジックができる。

 そして、魔法攻撃は自分の脳の中でイメージしたものを自分の【魔力色素】に移行し、三段階で【魔術攻撃】に変換し、自分の【魔力】と引き換えに対物理魔法攻撃フィジカルアタックマジックなどを行うこと。

 

 魔法攻撃に必要不可欠な【魔力色素】というのは、赤、青、緑、黄、黒の5色に加えて、緋色、藍色、翡翠ヒスイ色、山吹色、濡羽ぬれば色の上位魔術色素や、紫色、水色などの複合魔術色素など、色で使える魔術の系統を表している。赤色ならば火系統で青色なら水系統。緑は風系統で黄色は光系統、そして黒は闇系統。各色素初級~神級と5段階に分かれている。その中でも、火、水、風、光系統は対物理攻撃用フィジカルアタックマジックの魔術色素で、闇系統の魔術は対物理攻撃魔術フィジカルアタックマジック対精神攻撃魔術メンタルアタックマジックの二つの魔法攻撃方法マジックアタックメソッドがある。

 火系統は風系統に強く、風系統は水系統に強いなど、各系統魔術に得意な系統魔術や不得意な系統魔術がある。それを巧く利用して魔術戦などで勝つのがポイント。

 

 そして次は魔法攻撃をする際のイメージを対物理魔法攻撃フィジカルアタックアマジック等の攻撃に変換する作業工程。

 第一段階では脳で魔力を使い何をしたいかをイメージする。このイメージによって消費する魔力の量、通称【魔力量】が決定され本格的な魔法攻撃術式の詠唱へと移る。

 第二段階は攻撃や治癒などの魔法の術式詠唱。魔力量の消費が少ない魔法術式なら詠唱を行わないで魔法に変換できるのもあるが、無詠唱で放つ魔法など少量の炎か水などの攻撃面では弱いもので、治癒系の魔法で無詠唱となると切り傷を直すので手いっぱいだ。

 しかし強すぎる魔法だと詠唱時間と魔力量が途轍もなく長くなる。こんなデメリットがあっても結果強いので、好んで使うやつはいる。

 第三段階は、魔法術式を魔法攻撃へと変換する儀式。魔法を放つのに一番重要な工程。ためていた魔力と魔法色素と攻撃魔法術式がリンクして対物理魔法攻撃フィジカルアタックマジック対精神攻撃魔法メンタルアタックマジック治癒魔法ヒーリングマジックになる。  

 そしてこの三段階が終わるまでが感覚6~7秒ぐらい。これを如何に早くやるかで勝敗が決まるといっても過言じゃない。



「よし。これで綾垣に魔力が来て、魔力の謎が解明されるまで話せたかな」


 はっ! 自分は何を?


「お~い? 柊木? おきてるか~?」


 そういえば自分は授業中に寝落ちしてしまったのだろうか?


「授業中じゃねーよ。補習だよ」


「毎度思うんですけど、人の心の中勝手に読まないでくれますか? 神村先生」


「悪い悪い。」


 そうだった。今、俺――柊木奏多ひいらぎかなたは夏休み明け抜き打ちテストの補習を受けていたんだった。それにしても対面で補習古いと思うんだよな~。今は全部リモート補習とかなのに。なんで俺だけ対面なんだよぉぉ…。


「だから補習中だっつーの。俺がしゃべってんだから話を聞け」


「近代歴史なんて学ぶ余地ありますか先生‼ 新型ウイルスとか国際大会オリンピックの延期とか、覚えて得することありますか⁉」


「ない。それに近代歴史で一番重要なのは今やってるだろう」


「これ歴史なんですか? ガッツリ物理のほうに行きそうな気がしますけど……」


「俺がこの授業を受けているということは、近代歴史に入ってるな」


 そして、目の前でバカな俺に補習してくれているのは神村燎先生。綾垣新制帝國にいる攻撃魔術師の中では断トツトップの威力と魔力量があり、自分で魔法を作ったりもする。神村先生の役職は魔術師兼、魔法技術者マジック・エンジニア兼、魔術学校アカデミーの講師兼、魔術研究所の所長と、バリエーションが本当に豊かである。


「はぁぁぁ…。っそういえば先生、さっき想像力がうんたらかんたらってあったじゃないですか」


「あったな。それがどうした?」


「俺の耳がよかったら、【そうぞうりょく】って単語が二つ聞こえた気がするんですけど…」


「耳がよくて何より。二つ言ったぞ」


「何で二つなんですか?」


「いい機会だ。とりあえず解説しよう」


「ありがとうございます!」


「まず一つは【想像力】。英語ではimaginationイマジネーション。目には見えないものを脳の中で思い浮かべたりすることだ。 人は目で見、耳で聞き、手で触れる現実のほかに想像力で作り出した世界を自分の現実にすることができる。 それに過去の出来事も記憶をよび起こすことによって知ることができる。思い出せるのはイマジネーションがあるからだな。

 で、二つ目の【創造力】。英語ではcreativityクリエイティビティ。ゲームでクリエイティブって選べるだろ? あのクリエイティブの意味は創造的、独創的であることみたいな感じなんだけど、創造力の英語のクリエイティビティって、日本語の意味としてはクリエイティブの同じなんだ。あえて違いをつけるなら、クリエイティブはさっき言ったことでクリエイティビティは、『独創的な能力インジーニアスアビリティ』ってニュアンスが強いかもな。もっと簡単に言うと、自分で考えてゼロから何かを作り出すことかな。子どもが工作の時間に好きなものを作るような場面で発揮されるんだ」


「せ、先生…、長いよぉ……。長すぎてよく解らなかったよぉ……」


「流石にこれで解ってもらわなきゃこっちもなぁ…」


「まあいいや…。先生、後でこの授業で話したことを紙に書いてください」


「それで覚えられるならいいけど、本当に大丈夫か?」


「大丈夫です!」


「じゃあ続きの授業行くぞ?」


「はい‼」




 この魔法っていうのは脳でイメージすれば基本何でもできるが、自分の魔力量に適していない程の魔術攻撃は不可能。世界を壊すなどの野望は果たせない確率のほうが大きい。

 そして、魔力量が多い人と少ない人の違いとしては、想像力イマジネーション創造力クリエイティビティが多い人間ほど魔力量が多いらしい。やっぱざっくりしたイメージじゃなくてちゃんとしたイメージみたいなのじゃないと魔法の回路マジック・ヴェインは作動しない。例えるなら一部始終アニメーションが頭の中で作れたら、魔力量が多いらしい。

 魔力は人を救える効果を持つ。頭でイメージすればいいんだから、自分の魔力量に匹敵した治癒魔術を使用すればいいだけの話。けど、逆に魔法を使って悪事を働く奴らも出てくる。だから国名が変わったり、国がなくなったりするんだ。

 第三次世界大戦のときなんて最悪だったろ? 綾垣以外のアジア全土とオセアニアを自国の領地にしたロシア旧制帝国やEU加盟国と非EU加盟国が合体した欧州連合王国。北米大陸を制したアメリカ合衆国、南米大陸とアフリカ全土をもぎ取ったアルゼンチン共和国、そして我々綾垣新制帝國。

 ………、その顔を見ると第三次より綾垣の話からしたほうがよさそうだな。

 綾垣新制帝國とは、従来の帝国制を無くした新しい形の帝國だな。名前の由来は初代君主であり綾垣と旧日本史上最大のと呼ばれた綾垣慶丞けいすけ氏の名字をとったものだ。

 君主と言うのが居るのは旧制帝国と似たようなものだ。大きな違いは、綾垣がでかい軍隊を持っていないこと。軍はあるがすべて小さい。50人程度の師団が70個近くあるだけだ。ロシア旧制帝国と比べるとその差は歴然。なのになぜ綾垣やこの戦争を乗り越えられたのか……。

 話を戻そう。軍は基本各国にあるものだ。ロシア旧制帝国ならば旧制帝国軍。欧州連合王国なら連合王国軍。しかし綾垣には新制帝國陸軍や海軍、空軍など存在しない。ただの勤労人サラリーマンに武器を渡したところで何もできないと判断したのだろう。でもそれは大正解。軍を作ったところで、もともと軍がない国だったんだから批判は絶対に来る。だから魔法が使える人、通称魔術師だけでよくない? と思ったのが綾垣政府だ。そして綾垣帝國政府の発布した新憲法が、旧日本国憲法と法律を全廃したあとにすべて作り直して、



           のできる日本を作ったんだ。



 やってることが盛大だろう。そしてこの後、綾垣はもう一つ【魔法】というものに隠されたものを見つける。それが【ゴッド加護ブレッシング】ってやつだ。

 世界に三大宗教っていうのがあるだろ? キリスト教、イスラム教、仏教。それぞれあがたてまつられる神はキリストと、アラー。仏教は仏だな。

 基督信者クリスチャンは日曜日に教会で礼拝れいはいする。

 回教イスラム徒は一日に五回の礼拝れいはい

 仏教徒ブディストは寺で礼拝らいはい。それか座禅か、経を唱える。

 各宗教ごとに礼拝作法がありどれも全然違う。

 礼拝っていうのは、まあ拝んで神の言葉をもらう感じだな。その言葉をもらって信仰者は活発に活動するようになる。それに目を付けた綾垣は、


      【】を使えば魔法はもっと強大になるのではないのか、とな。


 事実、この後のにやった世界三大宗教信仰者と国内の研究所との合同実験でこの仮説は本当だったことが証明された。

 で、綾垣は、魔法+【ゴッド加護ブレッシング】の魔法術式を本格的に取り入れて魔法をさらに強化しようとしたが、すべての国民を強制的に各宗教に入らせるのも少し強引で駄目だと考えていたところ、綾垣氏が「綾垣独自の【神】を使おう」と言ったことから、古事記に載っている【日本神話】を使うことにしたそうだな。

 日本神話と言えば伊弉諾イザナギ伊弉冉イザナミ天照大神アマテラスオオミカミ素戔嗚尊スサノオノミコト、あとは月読見尊ツクヨミノミコト辺りが有名だな。この神話に出てくる神を魔法の強化素材にしたわけ。実験も成功し、国際魔術研究所の承認も得てこの技法が国際的に使えるようになったときに、綾垣氏はまた思いついちゃった事がある。


「【神】が多い国を味方につければ戦争で勝てるのでは?」ってね。

 ここから第三次世界大戦の話になるんだが、一回休憩するか。ってことで一回区切るぞ。


「なんか情報いっぱい入ってきた…」


「今話したところ全部一学期の範囲だぞ」


「無理無理! 覚えられるわけないじゃん!」


「後で紙に書いて渡すから。とりあえずあともう少しやるぞ」


「う~……。国際魔術研究所の綾垣支部研究所長の先生が学校に来るって期待してたのに……。何で近代歴史の神村先生がいるんだよ~」


「それもっと早く気付かなかったのか?」


「だって着た途端に補習始まるんだもん!」


「五歳児みたいに駄々をこねるな。お前これでも政府公認魔術組織のトップだろ? 何で勉強できないんだよ……」


「言葉が入ってこないんです……」


 泣きながらつぶやく。どうせ俺はそんな人間ですよ……。実技で学年トップでも筆記は学年最下位。はぁぁぁ~……。


「そんなこと思ってるからだよ。魔術戦みたいに胸を張れお前は。」


「人の心の中読まないでください……」


「そうだったな。ほら、補習再開するぞ? ペンを持て。そしてこっち向け」


「補習終わったらパフェ奢ってください」


「可愛いな。しかしパフェ、か。俺も食いたくなってきた。しっかり出来たらいいぞ」


「先生早くやりましょう‼」


「(ちょろいな)」


「先生なんか言いました? 早く補習再開してって―」


『校舎内にいる攻撃魔術師へ伝令。現在校舎内に武装魔導中隊の侵入有。攻撃魔術師は至急エリア03からエリア08までの守備を固め、追撃に備えよ。繰り返す。校舎内にいる攻撃魔術師に伝令。現在校舎内に武装魔導中隊の侵入有。攻撃魔術師は――』


「おら柊木。補習は一旦中止だ。武装魔導中隊の制圧に向かうぞ」


「えっ? 今ですか?」


「しょうがないだろう。今日出勤している魔術講師は俺だけで、校舎内にいる生徒は多分お前だけだ。これは俺たち二人に制圧しろと言っているようなもんだ」


「はぁ…。解りました」


「よしじゃあ行くぞ」


 神村がそう言った瞬間、柊木の目は先程の黒から【戦闘色】の赤に変わっていた。


「一分以内に終わらせてやる」

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