人の感情が色でわかるようになったら、妹が一番俺を慕っていた
猫持ち上げると意外と胴伸びる
第1話 非モテの僕に春が来た?
それはいきなりだった 「てめぇ死ねやー!」 ヤンキーが僕の胸ぐらを掴んで顔をボコボコに殴っている。目の前が出血したわけでもないのに真っ赤に染まっていた。 中肉中背、ごく普通の高2男子だった僕、新田康政はコンビニ入り口の外に居た猫を蹴ろうとしたヤンキーを止めようとしただけだ。ただ、猫さんはその騒動に乗じて逃げたようなので安心してボコられることにした。いや···ホントは痛いんスけどね··· 「おい!キモ兄貴!起きろ!」 いつの間にか気を失ってたのか誰かにさらに蹴られた衝撃で目を覚ました。目の前には妹、里香が僕の腹に足を乗っけている。 「あれ?ヤンキーさん達は?猫さんは?」 朧気ながらかなりめちゃくちゃに殴られた記憶があった。実際に鼻血は出てるし、全身に痛みはある。 「私が警察呼んで!って叫んだら逃げていった。猫はコンビニ店員さんの話だと女の子が抱っこして連れて行ったみたい。てかさ!夜にコンビニ行ったまま遅くなって見に来ればこの有り様!何してんの!?」 里香がまくしたててキレている。なんか目の前がさっきみたいに真っ赤に染まった。僕は疲れてるのか?とりあえず立ち上がって体のパンパンと叩くと 「助けてくれてありがとな。帰ろっか?」 と言うと、殴られたダメージなのか、目の前が今度は一瞬ピンク色に染まった 「キモっ!一人で帰れし!」 とさっさと早歩きで帰ってしまった。一人で帰るか··
翌日、手や顔の絆創膏が気になって、なるべく隠しながら教室に入ると
「おい!ヤス!お前喧嘩でもしたのか?」
「ホントだ!それとも車にはねられた?」
中学からの親友毒島と仲口が話しかけてきた。毒島はバスケ部で身長も高く中学の時からモテる奴、仲口は毒島にこそ及ばないがモテ男かつテストでは常に上位に入っているようは奴だ。
「ああ!近所のコンビニでヤンキーに絡まれた女の子を助けようと果敢に戦ったキズだよ」
嘘をつくことにした
「ないない!」
「ありえないね」
1秒で見破られたよ?
「まあヤンキーにやられたのは事実だよ!女の子じゃなくて猫助けようとしただけ」
本当の事を言うことにした。それでもカッコイイやん?
「へえ!お前やるじゃん!」
「お前昔から動物には優しいよなー」
目の前が青色に染まった。何これ?昨日から何か赤だのピンクだの青だの目の前に色が出るのだが?大きな病院で見てもらった方がいいのか?そう思っていると大谷が教室に入ってきた。こいつとは普段仲が良かったのだが、昨日目玉焼きにはソースか醤油か?ショートケーキの苺は最初に食べるか後で食べるかで喧嘩していた。今になって思うよ?ええやんどっちでも大谷はこちらを見るとこちらに
「ウッス」
と行ってすぐに自分の席に行ってしまった。一瞬目の前が黄色に染まった。何なん?
「まあ些細な事だろうけど、早く仲直りしておけよー」
そう言いながら教室に担任が入ってきたので毒島と仲口も自分の席に戻った。1限目は担任の担当である数学だったのでそのまま授業が始まった。数学には興味無かったのでノートの端にパラパラ漫画を書いていると、足元に前の席から消しゴムが転がってきた。それを素早く拾って前の席の眼鏡女子谷川さんに渡すと
「あっ、ありがとう」
と無表情で受け取った。目の前が一瞬青く染まった。なるほどなるほど!これは···病院案件だと思っていたけど違うな。なんか新しい力に目覚めたっぽいぞ(←中2病) 昼休みになっていろいろ試してみることにした。まず喧嘩していた大谷の元に行って
「なあ、お前目玉焼きには醤油って言ってたよな?あれ他の人に聞いたらあり得ないって言ってたぞ?」
「はあ!?」
大谷がこちらを睨む。目の前に赤色が見えた。なるほど···続けて
「でも実際に今朝醤油で食べてみたんだよ。あれめちゃくちゃ美味いしアリだよな!」
「だろ!?やってから文句言えってんだよ!」 大谷が嬉しそうに笑った。目の前な青色が見えた。なるほど··· とりあえず大谷と和解し(ショートケーキの苺は最初に食べるってのは譲れないが···)廊下に出た。 出てすぐ、隣のクラスの入り口で
「絶対にビ○ンカ!」だの
「絶対カ○リーメイトはフルーツ味!」
だのと言い争うのが見えたが、目の前に色は現れなかった。その他に中庭で一緒に弁当を食べているカップルを見たり、ふざけて抱き合ってる女子同士を見たりしたが、一切色は見えなかった。 再び自分のクラスに戻りノートを取り出して現象をまとめてみた。まず色が見えるのは自分に対する感情のみである。さらにその色は赤色なら攻撃色、青色なら友好色、警戒や微妙な感情ならその中間の黄色なのだろう。····変な力に目覚めたな··· 「えっ!?キモ兄貴が勉強してる?怖いんですけど?」
微妙な感情から戻したのは妹、里香だった。弁当を持って僕の前に立っている。
「まあ、たまには勉強も真面目にするよ?」
嘘つくことにした
「100パーないし」
1秒で見破られたよ?
「そんなこのより弁当忘れたでしょ?はい!」
いい妹だ
「料金発生するからね。今度お小遣いで出たら払ってよ?」
前言撤回しよう
「おっ!里香ちゃん!」
「毒島先輩!バカ兄貴がいつもすみません!」
毒島や仲口は何回か家に来ているし、香里も女子バスケ部だから面識がある。
「バカは否定しないが、こいつも時々女バスの香里は大丈夫かな?って俺に聞いてくるぞ?お兄ちゃんしてるやん(笑)」
バカは否定しろよ。あと最後笑うなや
「へっ!?別にキモ兄貴に心配されなくても大丈夫だし!」
里香は僕をキッと睨むと教室を出ていった。フワッとピンク色を残して···ピンク色?これは···何の色なんだろう?
「でもああ見えて里香ちゃん、兄貴をよろしくお願いしますって毎回言ってくるいい妹さんだぜ?それに堀尾にレギュラー候補って期待されてるらしいし」
「堀尾って隣のクラスの有名人?女バスのエースやん!」
「そうそう!だから男バスの男どもは高身長ショートカット美人の堀尾派か黒髪ロングの可愛い系の香里ちゃん派に分かれてるらしいぜ?」
へえ···里香モテるんだ···確かに贔屓目に見ても里香は顔は良いし、中学時代もモテてたらしいが··男が居たという話は聞いたことないな···。
「おい!里香に手を出しそうな男が居たら教えろよ?何もしないけど」
「大丈夫だよ。アタックした奴いるらしいが、取り付く島も無かったらしいぜ?だからさ、明日バレンタインだろ?もし、香里ちゃんが誰かにチョコ渡すのであれば俺に教えてくれよ!どんな人か気になるしな」
そっか···明日バレンタインだったね···僕には毎年「一つも貰えない兄貴キモっ」
って眉間にシワ寄せながら僕にくれる妹がいるから大丈夫だよ?···いや、大丈夫じゃないのか··· とりあえず明日の事は忘れる事にした。 そして放課後、何気なく帰り道を歩きながら他にどんな色が見えるか観察してみた。しかし、言い争う人やラブラブしてるカップルを見ても色は見えなかった。唯一バスに乗っていた時に勢いよく肘をぶつけてしまったサラリーマンに
「すみません」
と謝ったら
「いえ」
と返された時に赤色が見えただけだ。起こってはるやん·· つまり、今後はこの力で喧嘩を回避したり、自分に友好的な人を見つけて仲良くなったりすることができるのか!人付き合いの苦手な僕にはとても助かる力かもしれない!だって青色人(←今勝手に命名)と仲良くして、赤色人とは距離を置けばいいのだ!だか、一つだけわからない感情の色がある···ピンク色だ。主に里香からしか今のところ発されてないが···多分だけど、家族だからじゃないのかな?長い付き合いから出てくる感情的な?まぁ実害があるわけじゃないからどうでもいいか? こうして僕のカラーファインドアウト(→色彩と見抜くをスマホで英訳したやつ)の能力がいま目覚めたのだった(←中2病)
翌日、なんかクラスの中がめちゃくちゃソワソワしていた。バレンタインだしね。貰えない男子も、もしかしたら!と思ってるだろうし、渡す女子も緊張してるだろう。
···僕かい?僕はそーいう考えはもうやめた。毎年「貰えるかも?」なんて期待をし続けて毎回空振りだ。僕はもう悟りを開いたのだよ。
「いやぁ、すでに下駄箱に入ってたよ!」
「僕は下駄箱の所で下級生のコに貰ったよ!」
毒島と仲口がニコニコしながら教室に入ってきた。
うん、悟りを開いた僕でも彼らとは友達辞めようと思うよ?
昼休みになっても毒島と仲口の元には女の子が訪ねてきた。毒島、一つ飛んで仲口と話しかけてチョコを渡して帰って行く。途中からその気まずい目線をカットするために座禅を組んで目を閉じた。
「···どうした?ヤス?座禅なんか組んで?」
「悟りでも開いてるのか?」
「うん、こんなイベントにソワソワしてる人達が愚かだな?と思ってね」
「貰えなかったんだね?」
「今のところ何にもないんだね?」
すぐに見破られたよ?
「まあまあ···帰るまで何があるかわからないだろ?」
うん、毎年そう思ってたよ?僕は可能な限り目を閉じておくことにした。
「毒島君!ちょっといい?」
また一人女が来たよ。誰だか薄目を開けて確認してみた(←ちょっと白目になっている)。
「おお!堀尾!どうしたん?」
おやおや、女バスのエースにしてモテモテ女子の堀尾さんではないですか?毒島とだったら完璧な組み合わせだね♪
「下級生の子達に頼まれたの。渡しに行きにくいからって。あと仲口君のもあるよ?」
「ああ!ありがとう!」
僕は薄目を開けてしまった以上急に戻すのも恥ずかしいので薄目のままやり過ごすことにした。
「あと···一つだけ新田君のも···」
「····はい!?」
僕は薄目を止めた。
「ええ!!」
「ヤスにも春が!」
毒島と仲口も目を見開いている
「あっ、でもそのコ恥ずかしがりやだから家に帰ってから開けてって!」
「あっ、うん···ありがとう」
堀尾さんから受け取った瞬間、フワッとピンク色が目の前を舞った。しかし堀尾さんはすでに教室にいなかった···今のは?
まあでも正直色とかどうでも良かった。貰えたことがすべてだ。すぐにでも帰って中身を確認したい!でも座禅を組んでいる手前、それをカバンにそっとしまうと再び薄目で瞑想して過ごすことにした。
そして学校が終わると浮かれているのを見破られないようにすり足で静かに教室を出ていくことにした。
「あいつ浮かれてるな」
「うん、俺らから見えなくなった瞬間スキップするね」
すぐに見破られたよ?
「明日誰だったのか教えろよー!?」
毒島の声を背中に受けながら教室を後にした。
それからは浮かれすぎてどうやって帰ったかは覚えていない。家に着いた瞬間、なぜか身に覚えのない大きめの石を右手に持っていたのは謎だったが、すぐさま部屋に飛び込むと貰ったチョコを開けた。メッセージカードが一番上にあったので取り出し声に出して読んだ。
〜新田康政君へ〜
いきなりで驚いているかもしれません
この間の事、覚えてるでしょうか?ケガをさせてしまってごめんなさい
私は怖くて体が動きませんでした。それでも立ち向かった新田君は凄いと思いました。
私なりの感謝の気持ちを伝えようと思ってこの手紙を書いています。
そしてあの猫さんは無事です。今はうちで「マロン」という名前で飼っています。なので一度うちにマロンに会いに来て下さいね♪
チョコは一応手作りです。お口に合うといいですが···
堀尾知恵
なるほどなるほど···僕宛だったね···ん!?堀尾!?あの堀尾さん!?だから渡された時に
「帰ってから開けて」
って言ってのか!でも何で?ケガ····コンビニで絡まれた時は··ただヤンキーにやられただけだったよ?何かの罰ゲーム!?でもご丁寧にカードの裏側にトークアプリrineのIDまで書いてある。送ってみようかな?···とりあえず落ち着くためにコンビニ行って栄養ドリンク飲んでこよう。僕はコンビニへ飛び出した。
(里香視点)
「よし、用意できた!お兄ちゃんいるかな?」
お兄ちゃんに渡すチョコは用意して部屋をノックする。毎年緊張するイベントだが、一つも貰えないお兄ちゃんに堂々と渡せる数少ない機会なのだ。とはいってもお兄ちゃんがモテてないわけではないのだ。実際私のところには他のコから
「里香ちゃんのお兄さん彼女いるの?」
とか
「お兄さんとお友達になりたいのだけど?」
とか!その度に
「お兄ちゃんにはずっと前から心に決めた人がいるから、ごめんね
とアドレスの書かれたカードなどもすべてお兄ちゃんに届かないようガードしてきた。特にここ数日間はバレンタイン特別強化週間としてしっかり防いできたのだ。
「キモ兄貴!いる?」
ノックしたけど返事は無い。きっと凹んで寝込んでるんだわ。ニヤけながらドアをそっと開けて中に入った。
「あれ?」
本当にいなかった。さっきまで居たはずだけど···部屋の中を見回すとベッドの上に見慣れない箱と包み紙があるのが見えた。
「まさか!チョコ!?」
湧き出る怒りを抑えつつ添えられてたカードを読む。なんか感謝されているっぽい···名前は···
「堀尾先輩!?」
まさかだった。人気があるのは把握してた。でもそんな人がお兄ちゃんに行くことは無いと思ってノーマークだった。まさか女バスの人気ニ年生キャプテン堀尾先輩がお兄ちゃんに!?
その時家の玄関が開く音がした。慌てて部屋を出るとお兄ちゃんの元へ向かった。自分でもわかった。怒りのオーラが出ているのを···
(再び康政視点)
「ただいまー」
家に戻り部屋に向かおうとすると、自分の部屋の前に真っ赤な色が渦巻いているのが見えた。····なんか怖い···
静かに近づくと小さな紙袋を持った里香が立っていた。···俺、何かしたかな?
「兄貴···」
「ひゃい!?」
恐怖の余り初めて出す高い声で返事をした。あと、キモが抜けてますよ?とは言えなかった···渦巻いていた赤色がピンク色に変わったのだ。
「これ、チョコ。ちゃんと作ったやつだから」
「うん、ありがとう」
そっと渡すと里香は自分の部屋に戻っていった。
部屋に戻って開けるとメッセージなどは無かったけど、不器用ながらも一生懸命作ったであろうチョコが入っていた。
(里香視点)
「やらかしたーー!無言で渡したら何か変な感じになるじゃん!」
部屋のベッドに突っ伏して足をバタバタさせた。顔は真っ赤だ。
でもあのコンビニで起きた騒動の現場に堀尾先輩が居たとは!お兄ちゃん堀尾先輩と仲良くしちゃうのかな?
よし、明日から堀尾先輩を徹底マークしてお兄ちゃんから剥がそう!そう決意して自作のお兄ちゃんブロマイドを枕の下に入れて香里は眠りについた。
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