変革編
第1話 暇潰
大陸の地理的な中心ゼオン獣王国、ここは大陸を支配する上で最も重要な場所となっていた。
国の東側と西側には海があり、北側には西方統一同盟の国々があり南側には東方亜人協商の国々が存在する。そしてここは、大陸の北側と南側を陸路で結ぶ事ができる唯一の国家でもある。西方統一同盟に加入した時点からここは人間と亜人の橋渡しの場所となる事が想定されており、ハーンブルク領による大改造が行われていた。特に、西海岸にはハーンブルク軍の艦隊も停泊する事ができるぐらい巨大な軍港と貿易港が整備されており、以前とは比べ物にならないくらい立派な港町が誕生していた。
その港町の一角、様々な西方統一同盟の行政機関が建ち並ぶ地区にあるハーンブルク家の屋敷の庭にて俺は、戦いに明け暮れていた・・・・・・
「はっはっは〜どうしたレオルドっ!お前の力はそんなモノじゃ無いだろ!」
「この脳筋やろうが!」
「はっはっは〜!感謝する〜」
「褒めてねーよ!」
凄まじい速度で、獣王の持つ大剣が俺の頭上をかすめた。やっぱり、アイ無しじゃあどう足掻いても俺には勝ち目が無い。
そもそも相手は獣人だ、身体のスペックが違いすぎる。
【肉体のせいにするのは感心しませんよ、マスター】
いやいや、肉体改造はそっちの担当だろ?
【マスターはあのような、筋肉ムキムキの筋肉ダルマになりたかったのですか?】
・・・・・・遠慮させていただきます。
【ではやはり、圧倒的なパワーに対抗するために己の技を磨かなかったマスターに責任があるかと。この世界のあらゆる理不尽は全て当人の能力不足ですので。】
くっそ〜
「あんた怪我をして病み上がりなんじゃなかったのかよっ!」
「あの程度の怪我なら、1ヶ月あれば完治しまするぞ?」
「化け物じゃねーか!」
「心の中にホンモノの怪物を飼っている其方に言われたく無いな。」
「声が大きいわ!」
「おっと。」
ゼオン獣王国の西海岸に巨大な港街を作る交換条件として、俺との模擬戦をしたいとお願いされた。自分よりも明確に強いと感じたのは、幼少期を除けば俺が初めてらしく、久しぶりの敗北に血が騒いだらしい。
それと、アイの事がバレた。まぁ流石に、動きが変わり過ぎていたので疑われるかな〜とは思ったが、開口一番にアイの存在を尋ねられた。どうしてわかったのか尋ねたところ、敗北の瞬間にアイの存在を捉えたと答えた。
うん、戦闘狂かな?
【間違いなく戦闘狂だと思われます。おそらく剣筋や雰囲気から私という型を掴んだのだと思いますが、それは常人にできる芸当ではありません。マスターのようなイレギュラーを除けば、彼は武において世界最強の称号を掴んでいるかもしれません。】
やっぱ化け物じゃねーか。
【少なくとも彼は、マスターには言われたくないと思いますよ。】
まぁ、確かにな・・・・・・
「レオルドっ!そろそろ身体が暖まって来た頃だ、例のアレを頼む。」
「アレって、アイの事か?」
「あぁ、早く闘いたくてうずうずしている。」
己の大剣を正面に構えた彼は、そう俺に告げた。どうやら準備が完了したらしい。
というか、さっきまでの俺との模擬戦はウォーミングアップだったのかよ。
「後悔しても知らないからな。」
「あぁっ!」
獣王は、目をキラキラと輝かせながら頷いた。どうやら、相当この時を待ち侘びていたらしい。断る理由も無かったので、俺は普通に戦ってあげることにした。
アイ、準備はできてるか?
【はい、既に準備を整えてあります。】
そうか、なら最短で捻り潰せ。
【yes,master】
くっくっく〜
俺をウォーミングアップの練習台にした事を、後悔するがいい!
【・・・・・・】
「うぉっ!」
俺がアイに身体を明け渡した直後、俺の身体は凄まじい速度で、1歩目を踏み出した。下に潜り込むように滑り込むと、右下から左上へと滑るように強烈な一撃を放った。
咄嗟の所で反応した獣王は、大剣を使って攻撃を方向を上手く逸らす。ギリギリの所で、何とか一撃目を防いだ彼であるが、残念ながら間髪を開けずに放たれた二撃目には間に合わなかった。
俺の身体は、剣先を獣王の首へと突き付ける。
「・・・・・・まいった。」
「2発じゃねーかよ。」
「やはり恐ろしいな、其方の能力は・・・・・・」
予備動作無しの状態から放たれる、勝つ事だけを考えた理不尽な一撃に、獣王は対応する事ができなかった。
もちろん、獣王が弱いわけではない、アイが強すぎるのだ。
先ほどの模擬戦の時から、アイはデータの収集を行っていた。そのデータから、細かな癖や性格を予測しながら常に最善の攻撃を浴びせ続ける。
これが、弱いわけがない。
勝利の余韻に浸っていると、俺の元に待ち侘びていた報告が入った。
「ファルティオン王国の使節団が、ついに国境を越えました。」
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どうでもいい話
何回かだけど、このタイトル使った事ある気がする。
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