第12話 足音

「あ〜面白かった〜」


「負けたけど、良い試合だったわ。」


実際のサッカー世界大会の練習として行われた今回の試合は、まさかのPK戦に縺れ込む混戦となり、シュヴェリーン代表が勝利した。

練習試合だというのに、スタジアムは大興奮に包まれており、試合終了から1時間ほど経った今も、各チームのサポーター達はその場で応援歌を歌ったりビールを飲んだりと楽しんでいた。


「確かに今日の試合は凄かったわね、まさか2-2で延長戦になって、3-3でPK戦になるなんて・・・・・・まったく、これだからサッカーは面白いのよ。」


「途中からイレーナ、ベンチに乱入していたしな。」


「練習試合とはいえ、負けたく無かったのよ。それに、あなたもシュヴェリーン代表にアドバイスを出しに行っていたでしょ?」


「そりゃ、負けそうだったからな。」


後半までは、ワインを飲みながら2人で談笑しながら観客席で応援していたのだが、延長戦に突入した時は俺たちも熱が入ってしまい、ベンチから応援していた。


「すっかりハマっちゃったみたいだな、イレーナ」


「元はと言えば、あなたがハマらせたのよ。」


家へと帰宅した俺とイレーナは、家で俺たちの帰りを待っていたヘレナと一緒にディナーを楽しんでいた。

ちなみに今日のディナーは、ヘレナが作ってくれた奴だ。

軍事産業面ではイレーナ、政治経済面ではユリア、諜報内政面ではクレアがそれぞれ活躍している事を受け、何か自分もみんなの手伝いをしたいという思いから、彼女は料理を学んだ。

まだ完璧というわけではないが、愛情がこもっており、とても美味しい。


「お義母様の分も用意しておいたのですが、試合の盛り上がり具合を考えると今日は帰りが遅くなりそうですね。」


「あぁ、今日は良い試合だったからな、今頃勝利の美酒に酔いしれていると思うよ。」


「間違いないわね。当主代理だった頃よりもずっと自由にしている気がするわ。特に最近は、ずっとサッカーに夢中だしね。」


俺の意見に、イレーナは白米を食べながら頷いた。俺と寝食を共にする機会が多かったヘレナやイレーナは、今ではすっかり白米好きになっており、我が家の料理は日本食が多い。

これは、俺としてもありがたい。


ちなみに今日は、ユリアとクレアがリトア王国へ行っているため不在で、お父様も王都サーマルの方へと言っているので、この場には俺、ヘレナ、イレーナそしてアイの4人しかいない。


【これはあくまで予想ですが、エリナ様には領民の目を戦争から逸らしたいという考えがあるのかもしれません。エリナ様自身が先頭に立ち、世論をコントロールしているのかもしれません。】


「それは無いだろ。」

「私も無いと思うわ。」


実体化したアイの意見を、俺とイレーナはすぐに否定した。

それを聞いて、ヘレナは庇うように言った。


「エリナ様ならあり得るかも知れませんよ、2人とも。もう少し信じてあげた方が・・・・・・」


「まぁ、あり得なくは無いだろうけどね。優先度は低いんじゃ無い?」


「同意見ね。まぁ、有り難くはあるけど・・・・・・」


【本来であれば、マスターが全て行うべき作業の一部をエリナ様が手伝ってくださっている事をお忘れなく。】


「うっ・・・・・・。」


アイからの指摘が、俺に刺さった。

確かに、今お母様がいなくなったらハーンブルク領の領地経営が回らなくなるレベルで困る。

俺がシュヴェリーンを離れる時は、大抵お母様が前に立って、みんなを引っ張ってくれている。


「確かに、エリナ様の助けが無くなったらと考えると恐ろしいわね。」

「私も力になれたらいいのですが、エリナ様ほどの働きはできないです・・・・・・」


【ご安心下さいお二方、そうなった時はマスターが今でもの2倍頑張ると思います。】


「が、頑張って下さい、レオルド様」

「それは助かるわね。」


「おいおい。」


その後も、他愛のない話がしばらく続いた。


そして、この場にいた4人全員が夕食を食べ終わり、一旦落ち着くと、アイは俺たち3人に向けて、聞きたく無かった報告をした。


【冗談はこれぐらいにして、今日入って来た情報をお伝えします。現在パラス王国に潜入調査中の部隊より、パラス王国軍がガラシオル帝国との国境付近に部隊を配置したという情報が入って参りました。】


「ついにか・・・・・・」

「そうですか・・・・・・」

「来たわね・・・・・・」


アイの言葉で、酔いが一気に覚めた。

アイは話を続ける。


【具体的な戦闘開始の情報は届いていないものの、両軍が部隊の配置を完了したとあれば、開戦はいつ起こってもおかしくないと思います。それこそ、明日にでも・・・・・・】


軍隊というのは、食料の消耗が激しい。配置するだけで、大量の食料を消費するし、兵士とて職業なので費用も発生する。

そのため、当然の事ながら意味もなく軍隊を配置する理由はない。


【あくまで予測値ではありますが、パラス王国は70万の大軍をA集団、B集団、C集団の3つの部隊にわけながら進軍の準備をしております。対するガラシオル帝国は、各方面に約10万人ずつと戦略予備5万の40万人で迎え撃つようです。】


「ざっと2倍か、これは厳しい戦いになるだろうな・・・・・・」


「そうね・・・・・・」



平和なハーンブルク領とは反対に、海を挟んだ向こうでは、今にも戦争が起こってしまいそうな状況であった。


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どうでもいい話


次の更新はクリスマスにしようと思うんだけど、コメディー要素を多めにするか、イチャイチャ要素を多めにするか迷う。

コメディーならssとして書くかな〜

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