第2話 当主

天下の鬼才と謳われるレオルド・フォン・ハーンブルクがハーンブルク家の当主となり、婚約者達と結婚をしてから1年が経過した。


その間、何か特別な出来事があったというわけではないものの、ハーンブルク家及びハーンブルク領は大きく進歩していた。

まず、以前から計画されていたハーンブルク領首都シュヴェリーンと、ジア連邦共和国首都リアドリア、貿易港があるサラを繋ぐ新たな鉄道が全面開通した。4本の線路全てが運用され、人の移動がかなり活発になった事によって、ジア連邦共和国における民主化されている州の人口が軒並み増加した。


同時に、ハーンブルク領一の工業地帯であるミドール工業地帯へ物資を運ぶためにミドールとリアドリアを結ぶ新たな鉄道の建設も始まった。流石にまだ完成はしていないが、将来的にはジア連邦共和国で採れた鉱山資源をミドールに運び、ミドールで造られた製品をジア連邦共和国へと運ぶ事を期待されている。


また、人口の方もまた増えた。単純に、出生率が上がったという事もあるが、医療技術の発達により、乳児死亡率が極端に下がったり、平均寿命が伸びたりした。実現は多分難しいが、世界の国別統計なんかをとったら、軒並み一位を獲得できるだろう。

さらに、ハーンブルク領の医科専門学校で学んだ医者を、西方統一条約に加盟している国に派遣する活動を行っていた。医療技術に関しては、たいていのものはオープンにするようにしている。

というのも、感染症がハーンブルク領に入ってくるのを食い止めるためには、各地にたくさんの医者を設置して、事前に食い止めるしか方法はない。

代わりに、ハーンブルク領で作られた薬や医療器具を大量に買ってもらう事にしている。これで、ハーンブルク領にもお金が入ってくるという計算だ。


今でも沈む事なく、ハーンブルク領は大陸西側における絶対的な力を保有し、隣国との差を縮めるどころか広げていた。

将来的に、歴史シュミレーションゲームなんかができたとしてら、誰もが真っ先にハーンブルク領を選択するレベルだった。


そんな中、今日も俺は山のように積み上がった片付けなければならない書類たちと向き合っていた。


「あ〜今日も忙しいな〜」


【マスター、そんな事をぼやいている割には、先ほどから手が止まっていますよ。】


最近では、俺の魔力量が増えた事により1日中実体化ができるようになったアイも、その美しい容姿を見せながら作業に熱中していた。一日中実体化している事が増えたため、アイも家族の一員として数えられる事も増えて来た。

ちなみに、俺の妹という扱いらしい。髪の毛の色や目の色、顔つきなんかが全く違うので、正直兄妹には見えないが、そっちの方が色々と楽だからそうなっている。


「ほら、まだ新婚生活1年目じゃん、だというのにどうして仕事が減らないんだ。」


【エリナ様が言うには、これでも減らしているらしいですよ。マスターがヘレナ様達と遊ぶ時間を取れるギリギリの時間に調節してくれているそうです。】


「まじか、初耳だったわ。」


【ハーンブルク家当主としての自覚を持たせるために重い案件を増やしておく、ともおっしゃっていましたが・・・・・・】


「あんまり意味ないじゃねーか。」


優しいのか優しくないのかちょっとわからないが、お母様なりの気遣いなのだろう。

確かに、俺は一応名目上はハーンブルク家当主となったわけだが、正直やっている事は変わっていないように思える。

相変わらず、書類の山と日々格闘している感じだ。


【気持ちはわかりますが、今のハーンブルク領はマスター中心に回っております。それは同時に、マスターがいなければ回らないという意味でもあるのです。】


アイの意見は正しい。様々な人材を集めたり、色々な組織を作ったりして、できるだけ俺の仕事が減るように努めているが、やはりハーンブルク家当主という名前がいかに重いかがよくわかる。


ハーンブルク領内の政務はもちろんの事、外交やジア連邦共和国の政治、西方統一条約の事もある。


「何度も言うけど忙しいんだよ、本当に。」


【だとしても、お嫁さん達をほったらかしにしてもいけませんよ。】


それもあったか。

確かに、昔みたいに一日中家の中でゴロゴロ〜みたいな生活はできなくなった。

ほぼ毎日仕事しっぱなしで、娯楽といえばサッカーを観に行く時ぐらいだ。

あとは、何処かに視察に行くって時に一緒に行くぐらいになっていた。


【まさしく、夫婦間に問題を抱えるタイプの仕事人間ですね。】


うん、その通りだと思う。もしかしたら、俺の前世はサラリーマンだったのかもしれない。

ほら、前世の癖が抜けない・・・・・・みたいな?


【それは無いと思います。】


俺の心の中での呟きを、アイは間髪入れずに否定した。いつの間にか、俺たちは心の中での会話に以降していた。

そして、俺が何か言う前に理由を述べた。


【マスターの性格を鑑みるに、サラリーマンは向いておりません。やはり、自由気ままにできる仕事では?そもそも無職かもしれませんし。】


うーむ、中々に酷いな。

まぁ確かに、何かに縛られながら生きるのはダメかも。


【今現在、ハーンブルク家当主という、大陸西側で一、二を争う重要な役職についていますけどね。】


確かにね・・・・・・でも今の俺には守るべき家族がいるし、支えてくれる仲間もいる。

みんなの為にも、俺はこんなところで止まるわけにはいかない。

さて、今日も頑張るか〜


【はい、無駄口を叩く暇があったら仕事をいち早く終わらなせるのがよろしいかと。】


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どうでもいい話


300万PV達成しました〜

ありがとうございますっ!



野球みたいに、中3日投稿になりそうです。

次の更新は、4日後の29日12時です。

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