ss 引退

今日は少し忙しくて投稿が間に合わなかったので、以前ボツにした奴を投稿します。


時系列的には、サーマルディア王国vsギャルドラン王国が始まる少し前ぐらいです。



ボツ理由?最後まで読めばわかります。


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「本当に、出るんですか、監督」


「あぁ、これが多分、最後だからな。あと15分楽しんでくるよ。審判に申告してきてくれ。」


「了解しました。」


俺が、隣に立つヘッドコーチに要件を伝えると、彼女は小走りで審判の所へと伝達に行った。

今日は、俺が監督として参加できる最後の日だった。理由はもちろん、国際情勢の不安定化が原因だ。緊張が高まり、いつ戦争が勃発してもわからないというこの状況で、サッカーの監督などしている場合じゃ無いと判断した。

もちろん、イレーナにもこの事は伝えており、2人揃って今日引退という事になった。

というわけで、最後ぐらい試合に参加しようと考えた俺は、ラスト15分だけ監督である俺とイレーナも試合に参加する事にした。


前世のサッカー界でこの行為が許されるかどうかは知らないが、ハーンブルク領内におけるサッカーのルールを定めたのは俺だ、何も問題はない。


「んじゃ、いきますか。」


「ラスト15分、お願いします、監督っ!」


「あぁ・・・・・・逆転してくるよ。」


ウォーミングアップを終えた俺は、現在RSWのフォワードを務める選手の1人とハイタッチをしながらピッチに入った。


同じタイミングで、FCTのユニフォームを着たイレーナも中に入るのが見えた。どうやらあいつもやる気に満ち溢れているようだ。


ピッチの中央付近までくるとRSWのキャプテンマークをしたうちのミッドフィルダー、アンが俺を迎えた。


「監督・・・・・・」


「そういうのは後だ、逆転してからにするぞっ!」


「はいっ!」


現在、俺たちRSWは1-2で負けている。逆転するには、最低でも2点は取らないとダメだ。


俺とイレーナが準備を終えると、スタジアムの歓声は一気に大きくなった。


スローインから、ゲームが再開する。

RSWは、いつも通りのパス回しからの連続した攻撃で何度も相手ゴールへと攻めかかり、対するFCTは、鉄壁の防御からのフォワードによるカウンターを狙った。


ゲームが再開してすぐに、試合が動いた。


俺は、敵ディフェンダーを軽々と抜いて、中央へと切り込む。俺のプレーを今まで一度も見たことがないFCTの選手だからこそ、相手の意表を突く事に成功した。


「いけっ!」


ペナルティーエリアのギリギリまで迫ると、俺は左足を使ってブレーキをかけながらシュートフォームへと入った。

結構まだ距離はあるが、決められない位置じゃ無い。もちろん、それを止めようと、FCTの選手が身体を入れようと試みる。


だが、よく俺のプレーを普段からよく見ているRSWの選手達には、俺の意図が上手く伝わった。


「シュートはブラフよっ!騙されないでっ!」


「遅いっ。」


イレーナが大声で叫んだが、その時にはすでにボールを蹴るモーションに入っていた。

インサイドフロントで蹴られたボールは、真っ直ぐに左へと逸れていく。


「何っ!」


意表を突かれた敵選手は、完全に反応できない形となった。

そして、転がったボールの先には、ノールックで走り込んできてくれた彼女がいる。


「ナイスですっ!監督っ!」


そう言いながら、得意の左足でそのままゴールへと叩き込む。

何とか反応することができたFCTの守護神は、必死に手を伸ばす。

だが、この絶対的なチャンスで、未だに決定率トップの座を誰にも譲った事がない彼女が、止められるようなボールを放つわけがない。


「「「うぉぉおぉおーーっ!!!!」」」


けたたましい爆音が、会場に鳴り響く。超満員の観客の声が、一気に重なった。

RSWの選手達は、一斉に俺たちの元へと駆け寄った。


「ナイスパスですっ!監督っ!」


「そっちこそ、惚れ惚れするシュートだったよ。」


パチンと、2人の手が重なる。そしてそのまま、選手達にもみくちゃにされた。

中央にあるスコアボートの数字が、2-2へと変わる。


「凄まじいパスだったわ。やっぱり、サッカーの父と呼ばれるだけあるわね。でも、絶対に負けないわ。」


輪から何とか抜け出すと、イレーナが俺を待っていた。


「こっちこそ、絶対に負けないよ。」



俺たちはそれぞれ、外の位置へと戻った。

時計をみると、現在は後半36分、つまりあと10分弱と言うことだ。

このままだと引き分けで終わってしまうが、もちろんそのような結果にはしたくない。


その気持ちは相手チームとも同じだったようで、FCTは得意の守りではなく攻撃的なサッカーを行ってきた。


激しい攻撃が続き、逆に今度はこっちがカウンターを狙う展開になる。

だが、どちらも決定打に欠けていた。

特に、イレーナの適切な指示が強い。

やはり、ピッチの中から全体に指示を飛ばす事ができる司令塔がいると、選手の流れが違う。


5分、10分と時間が過ぎていき、アディショナルタイムへと突入した。アディショナルタイムは、基本的に発生しないようにしているが、今日は俺とイレーナの引退試合という事もあり、5分のアディショナルタイムが設定された。

キックオフから90分が経過しようとしているが、全員が本気でボールを追っていた。


そんな中、俺はある重大な決断をしようとしていた。



アイ、力を借りていいか?


【今日は流石に、私の出番は無いと思っていたのですが、いいのですか?】


これが最後だしな、最後ならできるだけ派手に決めて終わりたい。

例のアレやるぞ。


【わかりました。】


このゲームを勝利で終わる事に決めた俺は、一気に前線を駆け上がった。


「アンっ!こっちだっ!」


「は、はいっ!監督っ!」


ちょうどボールをキープしていたアンから、パスを受け取る。


俺が走り込んでいた先への完璧なパスだった。


「来いっ!アイっ!」


【了解です。】


俺がボールを持って駆け上がると、会場全体の注目が集まった。


「アームドっ!」


そして、ペナルティーエリアの少し後ろらへんから、アイのサポートを入れる。

高い位置まで上げた右足を振り下ろして、その反動でボールを頭の上まで上げる。


「シュートコマンド、07っ!」


身体の主導権をアイに渡すと、俺の身体は一回転しながら飛び上がる。

そして、オーバーヘッドの体制になりながら、両足を使って叩きつけるようなシュートを繰り出す。


【ダブルショット】


放たれたシュートは、真っ直ぐ敵のゴールへと飛んでいった。

FCTの選手は、誰1人として動けなかった。


ボールは凄まじい勢いで、ゴールへと突っ込んだ。

わずかな静寂の後に今日1番の大歓声が、スタジアムを支配した。


「「「うぉぉぉぉぉぉぉっ!」」」



「何よアレ、あんなの反則よ・・・・・・」



イレーナの呟きが聞こえると、それまで固まったままだった選手達が一斉に集まってきた。


「「「監督っーーーっ!」」」

「ナイスシュートですっ!」

「やっぱり監督強すぎますっ!」

「今までありがとうございましたっ!」



「ありがとうな、お前ら。」


直後、時計を見ていた審判が、試合終了の笛を鳴らした。



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どうでもいい話


第2章からもう一度書き直すなら、こういう路線もあったかもしれない。

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