第15話 sideクレア9

その日は、とても楽しい1日だった。

事前予告を一切せずにレオルド様を連れ回し、2人きりの時間を大いに楽しんだ。

もちろん、ただ楽しんだだけじゃない。さりげなく手を握ったり、さりげなく間接キスをしちゃったりと、半分暴走状態になりながらお出かけ、いやデートを楽しんだ。


そして、運命の瞬間、私は恥ずかしさのあまり彼の顔を正面から見えなくなるほど緊張していた。


「レオルド様、是非とも伝えたい事があります。」


ここまでは、スラスラと言えた。今回のデートを行う前に、何度も練習した台詞だったからだ。

だが、次の台詞が出てこない。


「あの・・・・・・その・・・・・・」


頭では今突撃すべきだとわかっていたが、次の言葉が出てこない。私はパニック状態になって、何をすれば良いのかわからなくなった。時間が経てば経つほど、何も考えられなくなる。

誰か助けてっと叫びたくなった。だがもちろん、私の周りに助けてくれそうな人はいない。

いや、1人だけいた。

私が困った時は、いつも助けてくれる、私の王子様が。


「もういい喋んな、クレア」


「え?」


彼はそう言うと、私の口を左手で押さえて何も言えない状態にさせられた上で、身体を引っ張られた。

彼との距離が一気に近づいた。

目と鼻の先に彼の顔がある。


「俺と、結婚してくれ、クレア」


「けっ?け、け、け、け、結婚っ?!私と?レオルド様が?」


私は、驚きのあまりぶっ倒れそうになったが、今ここで倒れたらまずいと思って、全力で耐えた。

その間も、彼の目はしっかりと見つめていた自分を褒めたい。


「あぁぁ、おそらくクレアが想像しているやつだ。」


「う、嘘っ・・・・・・」


あり得ない。

こんな事あり得ない。

私はメイドで、孤児で、好きになる要素なんて1つも無くて・・・・・・

臆病でスキンシップもできない。


「嘘でも冗談でもない、本心だ。」


レオルド様は、真剣な表情でそう言った。出会ってから10年近く経過している私にならわかる。これは、本当の事を言っている時の目だ。本能はそう伝えているのに、私の心の中は不安でいっぱいであった。


そして今になって、私はつい先ほど唇を奪われた事を認識した。


「えっ?ちょっと待って?え?」


私が困り、オロオロしていると、突然、彼に名前を呼ばれた。


「クレア」


「ひゃ、ひゃいっ!」


私は焦りながら返事をする。少し噛んでしまったが、伝わったはずだ。


「俺じゃ嫌だった?」

「嫌じゃありません!!」


ここで、嫌なんて言えるわけない。気付いた時には、即答していた。


「じゃあ結婚しよっか、クレア」


「はいっ」


今度はしっかりと、私は頷いた。もしかしたらこれは夢かもしれない、なんて不安はもう無い。

 レオルド様は立ち上がると、私を抱き上げてその場でくるくると回転した。

そしてそのまま私は彼に、倒れ込むように抱きついた。


明日が快晴である事を伝える真っ赤な夕日は、私の頬を赤く染めた。



✳︎



「あ、えっと〜この度、クレアと結婚する事にしました。」

「・・・・・・」


イチャイチャの甘々ムードであった私達であったが、そう長くは続かなかった。

あの後、もう遅いからという理由で、私達はスズラン地区にある高級レストランの一室で2人きりのディナーを楽しんだ。


結婚が成立した直後という事もあり、私は終始緊張しっぱなしであまり上手く喋れなかった。

でもそれは、レオルド様、いやレオルドも同じだった。どうやら先ほどのセリフは相当恥ずかしかったようで、今までで見た事ないほど照れていた。自分ではわからないが、きっと自分も同じような状況だろう。

悪い気はしないが、久しぶりの高級レストランでの食事だったのに、全然味を楽しめなかった。


そして、ディナーを終えた私たちがバビロン宮殿に帰ると、玄関に報告しなきゃいけない人達+エリナ様が集結していた。

どうやら、私たちの様子から結果がどうであったか察したらしい。私は恥ずかしくなってレオルドの後ろに隠れる。

3歳年下の夫の背中は、大きかった。


「おめでとうございます、クレア。やっと、私たちと同じ立場になれましたね。」

「おめでとうございます、クレアさん。うまくいったようでよかったです。」

「良かったわね、クレア。私も娘がこんなに増えて嬉しいわ。」

「まぁ、レオルドなら断るわけないと思ったけど、まさか自分から行くとはね~相手がクレアじゃなかったら引き金を引いていたわ。」


「怖い事言うなよ、イレーナ。お前が言うと、冗談に聞こえないわ。」


「あら?セーフティーを解除して引き金に指をかけていたのはほんとよ。」


みんなは、ヘレナ様、ユリア様、エリナ様、イレーナ様の順で祝福してくれた。

1人、何故か物騒な話をしているが気にしない事にしよう。


そしてここで、私はあることに気がついた。


「ってちょっとまって、みんな見てたの?!」


でなきゃ、レオルドからプロポーズしてくれたことは知らないはずだ。

すると、予想通りの聞きたくなかった回答が返ってきた。


「はい、しっかりと見ていましたよ。」

「みんなで双眼鏡を使って見ていました。イレーナだけは、何故か『M-3』のスコープを使っていましたけど・・・・・・」

「最初から最後まで、じっくりと見ていたわ。」



「いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」


最悪だ。恥ずかしすぎる。

でも、それを帳消しにできるほど嬉しい出来事があったから、良しとしよう。


すると、顔を真っ赤にしながらこの場を立ち去ろうとした私たちに向けて、エリナ様が最後の最後に爆弾を落とした。


「そういえば、あなた達の結婚式は今日からちょうど3週間後のレオルドの誕生日にやることにしたから、楽しみにしててね。」


「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえっ!!!」」」


解散し、自分の部屋に着いても、一向に気が休まなかった。




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どうでもいい話


飛騨牛美味しかった・・・・・・

また食べたいけどお金が・・・・・・

よし、小説書こっ


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